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小説の主人公は、独身で男性経験なし。すなわちバージンという設定だ。
彼女の地味な風貌から独り身だと思っていたが、既婚者なのか?
彼女が弁当にスッと左手を伸ばす。薬指をじっと観察するが、指輪はない。ということは男と同棲しているのか。
俺の描いていた主人公のイメージが、ガラガラと音を立てて崩れる。
彼女が……バージンでないと困るのだ。
「あの……何か?」
そうか。恋人がいたから俺を相手にしなかったんだ。
いやまて、それならば主人公の設定を変更すればいい。主人公は同棲している男がいながら、新たな恋に溺れていく。
それでいこう。
その前に、もっと観察したい。
酒を飲むと彼女はどう変化する?彼女が乱れる様を見てみたい。
「君は酒をたしなむのか?」
「お酒ですか?多少……。お酒の売り場ならあちらになりますが…ご案内しましょうか?」
「俺と今夜飲まないか」
彼女は幕の内弁当を手にしたまま、こちらに視線を向けて驚いたようにパチパチと数回瞬きをし、無言で右手に持っていたカゴに弁当を入れた。
これは俺の誘いを拒絶したという意味か?
いや、そうではない。職場だから周囲の目を気にして、即答出来ないのだ。
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