刺激的な主人公
直人side
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「主人公は肉食系の女、男好き。いや違うな。歳は二十七〜二十八。勿論独身、男性経験なし。地味で不器用、存在感なし。その女性が男により女として開花していく」
早朝、俺は机の上でスラスラと万年筆を走らせる。
「相手の男は三十歳独身。顔よし、性格よし、体よし、職業人気作家。まずい、これでは俺そのものだ。ちょっとアレンジしよう。顔はイマイチ、性格は捻くれ、女性からも嫌われている。唯一自慢出来ることは、夜はテクニシャン。女は一度寝るとその男から離れられなくなる。職業は会社員。うむ、いいだろう」
俺とは真逆だ。舞台はオフィス。
セシリア社の一樹が興味を持つような、インパクトのある主人公がいい。
プロットはもともと苦手だ。プロットを作成しても、どうせ書いているうちにストーリーは主人公によってどんどん変わっていく。作家はその主人公を紙の上で上手く操るだけ。
歴史小説ならば、俺の頭の中で主人公が勝手に刀を振り下ろし殺戮を繰り返す。
だがこれは恋愛小説だ。女を斬り殺すわけにはいかないし、魅力的な主人公に設定してもピクリとも反応しない。
まるで静止画のように、俺の頭の中で動き出さないのだ。
「一章、出会い。二章、ふれあい。三章、肉体関係。困ったな、三章で終わってしまう。確か連載は十二回。創作意欲が一向にわかない。だから恋愛小説はつまらないのだ」
万年筆を机の上に放り投げ、退屈しのぎにパソコンを開く。
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