18

「まひる、脱衣所生ゴミ臭くない?腐った匂いがする。また何かしでかした?」


「ごめん。卵なんだ。あとで洗濯するから」


「卵?今度は何したの?」


「生卵を頭から被ったの」


「え?自ら?」


「スーパーでタイムサービスの卵の値札貼り替えてて、脚立から足を踏み外したの。バランス崩して卵の陳列棚に激突、卵と一緒に床に撃沈。最悪だよ」


「相変わらずドジだね。怪我しなかったの?それで大量のゆで卵なんだ」


「店長に怒鳴られて買い取りしたの。だから、当分卵料理だからね」


「はいはい。卵好きだから、毎日でもいいよ」


 みやこは優しいな。

 やっぱり持つべきものは友達だ。


「今日さ、変な人が編集部に来たんだ。ボサボサの髪に着流しで、ホームレスかと思っちゃった。でも住所見たら、世田谷在住。しかもこのマンションから超近いの。まひるのスーパーで見たことない?」


「あっ……」


 まさにビンゴ。

 その風貌なら、あの人しかいない。


「見たことあるの?風変わりな人だよ」


「作家、只野直人」


「そーそーソレ!」


 互いが同時に、相手を指差す。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る