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「作品のプロットに関しては、来週早々提出していただけますか?出来ればプロローグと一章の原稿もお願いします」


「来週?連載は来月からだろう」


「そうですが、pamyuは週刊誌なので、のんびりしている暇はありません。校正や校閲の時間もいただかないと、書き下ろしをノーチェックで掲載するわけにはいきません。もし未発表の完結作品があれば、そちらでも構いませんが、連載は十二回の予定なので、各章四百字詰めの原稿用紙二十五枚となります。全体の文量は三百枚です。書き下ろしであれば期日は必ず守って下さい。宜しくお願いします」


 未発表の完結作品なら山ほどある。ただし恋愛小説ではない。戦国時代の武将達の生きざまを、ミステリアスなタッチでリアルに描いている作品ばかりだ。


 この俺に、来週までに恋愛小説のプロットと一章をよこせと?書けるはずがないだろう。それが書けるくらいなら、俺はとっくの昔に恋愛小説作家として脚光を浴びている。


「それでは、只野先生、読者が胸キュンするような作品を楽しみにしています。本日は貴重なお時間をありがとうございました。原稿はパソコンで送っていただいても、ファックスで送っていただいてもどちらでも構いません。こちらがアドレスになります」


 パソコンやファックス?

 送り先を誤ったらどうするんだ。そんなもの使用したこともない。


「俺は原稿用紙にしか書かない」


「わかりました。ご連絡下されば、私がご自宅まで取りに伺います。それで宜しいですか?」


「問題ない」


 いや、問題だらけだ。

 そもそも胸キュンとはなんだ。さっぱりわからない。



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