彼女はキャビネットから書類を取り出した。


「セシリア社には複数のグループ企業があります。出版関連では月刊誌、週刊誌、男性誌、女性誌と多種多様。セシリアSF文庫、セシリアコミック、セシリアプリティ文庫、セシリアセクシー文庫等からは、数々のベストセラー作品を世に送り出しました。こちらがセシリアグループのパンフレットです」


「なるほど」


 一樹の父親がこのグループ企業の代表取締役社長とは驚きだ。


「こちらが契約書となります。これから印税等に関して説明させていただきますね」


 彼女は書類をテーブルに置き、淡々と契約書を読み始めた。俺はそんなことよりも、恋愛小説のプロットをどう書けばいいのか、頭を悩ませている。


「只野先生、何かご質問はありますか?」


 質問か、それならば山ほどある。


「君は恋人はいるのか?」


「は?」


 軽蔑の眼差し。別に編集者をナンパしたいわけではない。プロットの参考までに聞いただけだ。


「只野先生、担当と作家の恋愛は禁止されておりますので、そのようなお話は……」


「俺はそんな目的で聞いたのではない。恋人がいるのかと問うたまでだ」


「一応……恋人はいますけど。それが何か?」


「ならば問題ない」

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