大学時代、殆んど友人のいなかった俺。受賞の翌日は大勢の学生に囲まれるかと思いきや、地方新聞だったため殆どの学生は、俺の華々しい作家デビューを知る由もない。


『只野君凄いね。小説で受賞したんだって?いつか一緒に仕事ができたらいいね』


 唯一、話し掛けてきたのは見ず知らずの学生。


『誰だお前?俺が少し有名になったからといって、馴れ馴れしい口を聞くな。お前は増えるワカメか』


 後日、俺は奴にネット上で『偏屈只野』と異名をつけられ、その書き込みはあっという間に世間に拡散した。


 俺のどこが偏屈なんだ。

 増える乾燥ワカメじゃあるまいし、有名になった途端、ムクムクと見ず知らずの『友達』や『親戚』が増殖する方がおかしいだろ。


 この一件で俺はますます大学で孤立する。それでも作家として生計を立てていけると信じていた。


 しかしその後、何編公募に応募してもかすりもしない。受賞どころか、最終審査にも残れない。数年が経過し痺れを切らした俺は直接出版社に持ち込むが、この有様だ。

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