2.



                  *


 

 言鳥ことり

 暮樫くれがし言鳥。

 それが、僕の妹の名だ。


 僕の妹は霊を見ることが出来る。

 そしてそれは霊のみならず怪異全般に及ぶのだという。


 ちなみに僕自身は怪異を見ることも聞くことも、それに触ることもできない。

 あらゆる怪異は僕にとって存在しないものである。



                  *



 妹の話をひとつ、出来るだけ真面目に、また存分にしてみたい。

 はたして僕の十七年足らずの人生のうち、最も高い比率を占める関心事が妹についてのことであった。自らの半生を省みた時、妹こそが特に多くのイマジネーションを僕へ与え続けてくれる至高の泉源であったのである。


 しかしながら、僕の目的は妹について語ることそれ自体にあるのではない。むしろそれによって彼女の人生観、分けても怪異に関する見え方、考え方を窺い知ることにある。僕が妹の魅力をこうして語っていくことで、それは僕ひとりの関心のみならず、次第に僕の近親者へ、延いては世の中のより多くの人へ向けて妹の素晴らしさを布教することにつながるかもしれない。もしそういうことになるとするなら、それは兄として願ってもないことだ――冗談でなく、割と真剣にそう思っている。



                  *


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