橘式ッ‼︎
「では、雄二郎の魔法(常時発動型衝撃吸収能力)が分かったところで、次の段階へ行こうと思います‼︎」
お祝い会も終わり、一日休みを挟んで、再び橘さん宅のリビングで冷蔵庫テーブルを囲む俺たち3人。
「次の段階…ですか?」
橘さんの言い出したことがイマイチ分からず首を傾げるたまちゃん。
俺も分からない。
「そう!雄二郎の魔法次第でここからの方針を決めようと思っていたんだけど、それがようやく固まりました‼︎ということ」
「「おぉ〜」」
拍手。
「魔法って言うからヒョイと杖を振って何かを出したり、物を動かしたり、ビームを出したりする系ならお手上げだったんだけど、物理的な魔法なら私の領分です‼︎」
これまでにないくらい目をキラキラさせた橘さんは、何やらゴソゴソとガラクタを漁り、中からゴテゴテと機械を取り出してきた。
「何だそれ?」
見たところVRゲームの顔につけるゴーグル的なアレと、それに繋がったハードだが、
「これから雄二郎にはこれで橘式武術を身につけてもらいます!」
「「橘式武術?」」
聞いたこともない名前に疑問符でハモる俺とたまちゃん。
「そ、これまで何度か見たけど、雄二郎結構いい動きするし、魔法のことを込みにしてセンスとポテンシャルはあると思うんだ!」
嬉しそうに語る橘さんはゴーグル的なアレをブンブン振り回しながら力説を始めた。
「これには世界中の格闘家の戦闘データが詰め込まれてる‼︎そしてこれはつけるだけでこの中の戦闘データを、視界を通して脳内に直接流し込むことができるのだ‼︎」
「…………」
嫌な予感がしてきた。
「つまりアレか、脳をいじって無理矢理格闘技を覚えさせる的な?」
「そう!名付けてわざマシン‼︎」
そう言って何枚ものディスクを取り出し始めた橘さん。
「柔道に始まりボクシング、レスリング、大相撲等、片っ端から頭に詰め込みましょう‼︎」
………文字通り詰め込むマシン。
橘式とは?
「……そんなことして頭大丈夫なのか?」
洗脳とか、魔改造的なアレをするわけだ。
ノーリスクな訳がないと思うが……
「大丈夫‼︎何人もの記憶が入り混じるわけだから、頭がちょっと変になったり、脳が焼き切れたりするかもだけど、雄二郎なら大丈夫だと思う‼︎」
だと思う‼︎って元気に言われても……
「いやだ」
「うんうん‼︎世界中の格闘技を身につけられるんだもん今からワクワクが止まらないよね?って、嫌?」
「嫌」
「なんで?」
「なんでも何も、頭おかしくなるリスクあることなんて嫌に決まってるだろ?」
「でもそれを乗り越えればあっという間に最強の格闘家になれるんだよ?」
最強の格闘家って……
「俺は魔法少女なんだが?」
「その魔法が格闘家向きなんじゃん」
「はい」
「勝ちたくないの?」
「勝ちたいです」
「ならやるしかないじゃない!」
「はい」
……こうして、
橘式武術を身につけるべく、わざマシンを頭に装着したのだった。
魔法少女の始め方 ベームズ @kanntory
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