郷愁の覚え
そちらはもう梅雨は終わったかな?僕のところはまだまだこれからだよ。
このじめじめする感じはなかなか好きにはなれないけど、夜寝るときの雨音は結構好きなんだ。だから、もうしばらくこの梅雨を楽しんでみようと思う。
こんなにすぐ手紙を送ってしまってごめん。迷惑だったかな。本当は電話でもしたいんだけど、なかなかそれも勇気がいるというか。もう少し心を落ち着けてから挑戦してみるつもり。
生徒会はどう?君にはあの雰囲気はとても合っていると思う。君なりに、楽しい学校にしてほしい。
そういえば、そろそろ期末試験の時期だね。今回も航がトップかな。航にも会いたいな。あいつは本当にかっこいいよ。僕の憧れとする人物像だ。僕もあれくらい頭が良くて人気者なら……ってたまに考えてしまう。
まず、こんな考え方をやめないと、彼のようにはなれないよね。
今日は天気が荒れていてね、海も大時化。波の音が荒い。とても浜辺には行けないけど、窓から眺めるのもいいものだよ。実際、どんよりした灰色の空と一体化してしまっていて、どこからが海なのかよくわからない状態なんだけど。
こっちに来て、陸上部に入ったんだ。唯一、航と同等に戦えるのはこの足だけだからね。今は練習で忙しくて、おそらく夏休みも部活で潰れそうだ。
お互い県大会を突破したら全国で会おうって、引っ越すときに航と約束したからさ。僕からの挑戦状、航はまだ覚えているかな。
なんだか、戻りたくなってしまったよ。ここも楽しいけど、やっぱり君達といるのはとても落ち着くんだ。
こうやって離れてみて、あらためて実感する。君達との時間の流れが好きだった。あの生徒会室にまた集まりたい。
書いていて、とてつもなく心が寂しくなってきたよ。ぽかんと穴が空いてしまったようだ。この穴は、きっとこれからも塞がることはないのだろうね。
でも、あの時間は僕にとって宝物だよ。かけがえのない時間だった。ありがとう、本当に。あの時間があったから今の僕がいる。だから頑張れる。
とにかく今は、僕に出来ることを精一杯やるつもりだよ。そうじゃないと皆に、特に航に怒られそうだしね。あいつは結構完璧主義だし。
じゃあ、今日はこれくらいにしておく。君も強い気持ちで一日一日を過ごすんだ。そうすれば、必ず光が差してくるから。僕はそう信じている。
七月十二日 逢坂樹
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