犬と猫の世間

 飼われている犬でも一日一回は首輪で繋がれたままではあるが近所を散策する。それを愉しみにしている。もし、首輪を外してやれば気ままに遠出をするにちがいない。その気になれば、であるが。

 ねこは端から放し飼い状態である。どこへも出かけない。家の回りの、ほんの近場をパトロールすることがあるだけである。


 犬と猫の生活の行動範囲の差は運動能力の差であるが、知的能力に、これまた桁外れの差がある。犬はその高い知性に、さらに加えて兼ね備えた従順で、ねばり強いという性質を発揮しながら行動で表現することが出来、以って人間の生活のあれこれの場面を情愛あふれる気配りをしめしつつ手助けすることができる。あるいは与えられた高度な任務を遂行する。

すなわち人間の価値観で表現すれば、社会に貢献できる、貴重な存在との評価もできるだろう。

翻って、ねこときたらその愛くるしい仕草で人間を癒やすのみ。ほかにはとりたてて取り柄はない。

 

さて、たしかに人間のごく常識的な感覚をもって較べれば猫より犬のほうが世間は広いし、見識は高いように映る。だが、そうはいっても、あくまでも人間から観てのはなしである。それ以外の何ものでもない。

 

では、それをためしに人と人にあてはめてみる。

世界を股にかけて、動き回りよく見聞きした人間と、生まれた村から一歩も出たことのない人。あるいは世のため人のために大いに尽くした人間と何の役にも立った風のない人。

 その違いはなんなのか。優劣をいうとしたらいったい『誰』が『だれ』に、『それ』をいうのか。

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