進化はあった。しかしどうやって進化が出来たかが皆目わからない

 目の前で進化するところを目撃したことは残念ながらないのだが、でも進化はあっただろう。

 例えばうちの猫の顔立ちを眺める。顔の造作の配列は牛とも山羊とも鳥とも蛇とも魚とも人間とも大まかに言えば全く同じではないか。目の下に鼻、鼻の下に口、口で食べて腹で消化し肛門から排泄。ここまで配列、機能が同じなら先祖はいっしょとしか思えない。いくら姿形が違おうと、生息環境が異なろうと。

 つまり、ひとつの原種が海へ山へと思い思いの処へ出向き、それぞれの生息環境に適した姿形、身体の機能を持つに到ったに違いない。進化論に何の異議を唱えるものではない。

 ただ、では一体それぞれがどうやってそういう環境に適した身体を獲得したのかが不思議でならないのだ。

 いままでのところ寡聞にしてその答えを聞かない。というか進化という現象が確かにあった。その証拠に、こうである、ああであると述べるばかりなのだ。

 私のずっと抱いている切なる疑問、なるほど実にうまく環境に合う身体に進化したもんではあるけれども、ではいったいどうやったら、鼻を伸ばしたり、首を伸ばしたりできるのかの問いには答えてくれない。答えてくれないどころか、そういう疑問をもって考察した論にいままでのところ出くわさない。

 望めば何故、望んだ通りの身体にできるのか。つまり進化できるのか。DNAはその答えではない。ただ遺伝を行なう為の要素に過ぎない。私の疑問はそういう遺伝子にしたい、と望めば、なんでそういう遺伝子になるのかと問うているのだ。

 私にはまったく、どんな仮説も立てられない。

 もうひとつ思うことがある。

 感染症などの病原菌に対し抗生物質やら有効な新薬を作っても、やがて程なくその薬を凌駕する耐性を持つ菌に変身するというのだ。しかたなく学者等はその変身した菌に効く薬に作り直す。そのいたちごっこを続けているそうなのだ。

 この菌の振舞いも、はたして進化の一種と見做すことができるのだろうか。いや進化か、そうでないかは別にしても新薬に対抗しようとし、試行錯誤という過程、作業を経るものかどうかは知らないが、やがて身体のどこかをあるいは何かを、なんらかの方法で変化させ新薬に負けない体質を獲得する。

 これはやっぱり進化の一種見做してもいい気がしてきた。

 しかし思考力を持つにしたって、やはりこうありたいと望めば、なぜそういう体質を獲得できるのか。

 翻って進化の目的について今一度考えてみるところから始めなければ始まらないのだろう。

 どう考えてもそれは環境に適応しよう、あるいは降りかかる諸々の難儀をなんとかクリアしよう、あるいはライバルの強敵、宿敵をやっつける方法を身につけよう。もっと効率よく獲物、食べ物を獲得するにはどうしたものか。

 人間なら手が使えるので弓矢を作って動物を、網を編んで魚を獲ることができるが、たいていの生き物には無理なことである。

 そんな目的を果たすには身体の改造しかあり得ない。進化の目的はこれで説明できたと思える。

 しかしである。こうありたいと望むこととそれを実行することはまるで別のことである。望む当人の意のままに、当人の身体をどうやったら改造できるというのか。

 それが不思議、合点がいかないとくりかえし訴えているのである。私のただの直感だが本人にそんなことが出来る気がしない。

 また、私の直感に私とすれば誰しもの同感を得られるものと疑わないのだが。

 では本人でなければ誰なのかということになるが自然が自然体で見守ってさえいれば誰が意図するでもなく、つまりそうなるというあたりに収めて何となく得心してしまいそうであるが、そうではなく私は誰かが司っているのではないかと想像している。誰かと表現すると神とか超人とかの個人をイメージするのが当然だが、なら何と表現していいものやら。

 というか実は具体的にはイメージできてはいない。

 またその誰かは何も進化だけを専門に司っているわけではない。おそらくこの世の、この宇宙の全てを、森羅万象を何の変哲もなく、いとも容易く淡々と司っているに違いない。

 イメージを描くのは無理があるが、無理をして敢えてイメージすれば大きな大きな頭脳を持った、しかも念じれば、あるいは念じなくとも、ことを行える、姿形のない、人間には決して感知不可能な存在とでも表現しようか。          ということはやはりイメージになってないか。

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