episode35-2 春の演奏会とある願い 若菜下
◇若菜下(2)ざっくりあらすじ
朱雀院が女三宮に会いたがっているので、50歳のお祝いをしてあげようと源氏は思いつきます。それに合わせて六条院でも女性だけでの合奏を楽しみます。その後紫の上は出家を願い出ますが源氏は許してくれません。そして紫の上が倒れてしまいます。
【超訳】若菜下(二)
源氏 47歳 紫の上 39歳
女三宮 21歳
明石の御方 38歳 明石女御 19歳
夕霧 26歳 柏木 30歳
―― 六条院での女性コンサート ――
朱雀院は死ぬ前にもう一度女三宮に会いたいって思っているの。それを聞いた源氏は朱雀院が50歳になるので、お祝いパーティー(御賀)をしてあげようと思いつくの。
「琴の名手の源氏に嫁いだんだから、女三宮の琴もずいぶんうまくなったんだろうなぁ。聞いてみたいなぁ」
朱雀院がそんなことを話してパーティーを楽しみにしているって聞いて源氏は焦って女三宮に琴の特訓をすることになるの。それで女三宮に付きっきりになってしまい、紫の上と過ごす時間はますます減っていっちゃうの。
そんなお琴のレッスンの演奏が聴きたくて明石女御が六条院に帰省してくるの。ちょうど妊娠もしていたの。紫の上や明石女御が幼いころ源氏は仕事が忙しくて琴は教えなかったから、今回のお琴は貴重なレッスンだったみたいね。
朱雀院の前での本番の前に1月に六条院でリハーサル(
女楽当日。紫の上が和琴、明石女御が
梅の花が満開で女房、童女たちの衣装も華やかで会場は素晴らしい様子なの。女房や童女達はお仕えする女君ごとにお揃いの色目の衣装なのよ。
玉鬘の子どもが笙、夕霧の長男が横笛で参加するみたい。源氏は楽器の
いよいよ女楽本番ね。特に明石の御方の琵琶は名人級なのね。夕霧は紫の上の和琴の音色に聴きいるの。懐かしく、柔らかく魅力的な演奏なんだけれど、ときどきハッとするようなアレンジもあって素晴らしいってもう大絶賛なの。源氏も紫の上の演奏には感心して、やっぱりこの人以上の
明石女御の筝の琴も可憐で優美な音を奏でているの。
女三宮の琴は他の人よりはまだ未熟だけれど、あぶなげなく弾いていて「ずいぶん特訓したんだな」って夕霧も感じているみたい。
途中からは夕霧や源氏も唄で参加して優雅な音楽三昧の夜ね。
月の出が遅い夜だったみたいで庭の
女三宮を見ると気品高く柳のようだと源氏は植物に喩えるの。
明石女御は美しく咲きこぼれる藤の花のよう。
そして紫の上の美しさであたりが光り輝いていて、この人は桜に喩えてもまだ足りないくらいの素晴らしさだって思うんですって。
明石の御方は聡明で品がよく、琵琶を抱えている姿が美しくて橘の木のようだって喩えたの。
夕霧もいつかの台風のときに見かけた紫の上がきっとさらに美しくなっていらっしゃるんだろうなぁと想像してドキドキ胸が高まるの。
「色恋がらみじゃなくて、いつか家族の一員としてお慕いしているとお伝えしたいなぁ」
そんな風には想うんだけど、だからといって人から非難されるようなこと(紫の上に恋をする)をしようとは思わなかったのよ。
源氏に演奏の感想を求められた夕霧は「和琴(紫の上)が特に素晴らしい」って褒めちぎるの。源氏は明石の御方の琵琶以外は自分が教えたからねと自慢げだったから、女房たちはなんでもご自分のお手柄なのねって肘をつつきあって笑っていたみたいよ。
その後も源氏が琴のことについて語ったり、受け持ちの楽器を交代したりして女楽の夜を皆が満喫したの。
夕霧は帰り道でも紫の上の琴の演奏を思い返しては感激していたみたいね。自分の奥さんの雲居の雁はあんまり琴が得意ではないみたい。喜怒哀楽がはっきりしている天真爛漫な奥さんだったから、タイプの違う紫の上には強い憧れの気持ちがあったみたいね。
―― 紫の上の願い 源氏の想い ――
次の日に源氏は紫の上と昨夜の話をするの。夕霧がキミの演奏を褒めてくれたのが誇らしかったよって。紫の上が幼い頃は忙しくて教えてあげられなかったのにキミはやっぱりすばらしいとつくづく源氏は感心するの。そんな風に風流なことにも才能があって、その上最近は孫たちの面倒も見ていて奥さんとしてカンペキだって思うんだけど、完全な人ほど短命だなんて不吉なことを思ってしまうの。たくさんの女性と付き合ってきたけれどこれほどすべてを兼ね備えている人は他にいないって紫の上のことを想うの。
紫の上は今年は37歳で厄年でもあるし、源氏に出家したいって打ち明けるんだけど、許してもらえないの。
「キミみたいに素晴らしい
「キミと仲良く暮らすこと以上のシアワセなんて俺にはないんだよ」
「俺がどれだけキミのことを愛しているかを見届けてよ」
紫の上はまたそんなこと言って出家させてくれないのねと涙ぐむの。
それから紫の上が一番素晴らしいんだと強調するために他の女子を引き合いに出すの。葵の上(夕霧のお母さん)も欠点のない奥さんだったけれど賢すぎてちょっと面倒だった。六条御息所(セレブ未亡人)も才色兼備だったけど息苦しかったとかね。
明石の御方のことも表面上は従順だけどどこか身構えてしまうなんて源氏は言うの。以前は嫉妬していた彼女とも和解して、仲良くしてくれるキミの真似をできる人なんて他にはいないよ、立派すぎるよって源氏は紫の上のことを称えるの。
―― 紫の上倒れる ――
その夜、源氏が女三宮のところに泊まっているときに、ひとりで寝ていた紫の上は急に胸が苦しくなるの。源氏もつきっきりで看病して、僧も呼んでいくつも祈祷をさせるんだけどちっとも良くならないの。源氏はもう他のことに気が回らない状態なので2月に予定していた朱雀院の50歳のお祝いも延期するの。
そして2月も過ぎたんだけど、紫の上の病状はよくならないの。だったら環境を変えてみようということで、紫の上を二条院に移すのよ。
夕霧ももちろん紫の上のことを心配していて、自身でも紫の上の病気が治るように祈祷をさせているの。
「前からお願いしている出家をどうして許してくれないの?」
紫の上は源氏にこう言うの。
「生きていて離れ離れになるなんて死んで別れることより俺にはツライことなんだ」
「キミが出家したら俺は生きていけない」
「キミが寂しく思うだろうからって俺は出家を思いとどまってるのに、キミは俺を見捨てるの?」
こんなことばかり源氏が言って出家をさせてあげないのがいけないのか、紫の上の病状はどんどん悪くなっていくの。
当然源氏は女三宮のところには通わなくなるの。楽器などもしまいこまれて六条院は灯りが消えたみたいに寂しくなってしまい、六条院の真の華は紫の上だったってみんな思い知るのよね。
明石女御も紫の上を心配して二条院に看護にいらっしゃるの。
「あなたはご懐妊中なのだから病室に来てはいけないわよ」
「女御様のお子様たちが大きくなられるのを見られないのが悲しいわ。きっとわたくしのことをお忘れになってしまうわね」
紫の上がこんなことを言うので明石女御は悲しくなっちゃうの。
源氏も加持祈祷の僧たちに紫の上が素晴らしい人であることや罪がないことを神仏に伝えてほしいと必死に訴えていて、その心痛のひどさったらないの。紫の上はたまに体調がよくてもまた具合が悪くなり衰弱していくの。
「このまま助からないのか」
ひたすら嘆く源氏。もう紫の上の看病のことしか頭にないみたいね。
◇六条院での華やかな女性コンサートの主役はやはり紫の上でしたね。源氏はもちろん、夕霧もその演奏に聞き惚れました。
そして紫の上は出家したいと源氏に打ち明けますが、紫の上と離れることなんて考えられないと源氏は認めません。そうこうしているうちに紫の上が倒れてしまい、六条院が暗雲に覆われていくようですね。
~ なつかしく愛敬づきたる御爪音に、掻き返したる音の、めづらしく今めきて ~
夕霧が紫の上の和琴を褒めたたえる
~ 深き御労のほどあらはに聞こえて、おもしろきに、大殿御心落ちゐて、いとありがたく思ひきおえたまふ ~
源氏が紫の上の和琴の演奏に感心する様子
第三十五帖 若菜下(二)
※源氏物語第三十五帖【若菜下】を3つに分けて【超訳】している2番目のエピソードです。三十四帖【若菜上】に引き続き第三十五帖【若菜下】もボリュームがあり、今後のカギとなるエピソードが多数登場するのでこのような形式にしています。
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