episode37 親友が遺した想い 横笛
◇横笛ざっくりあらすじ
夕霧は亡き親友との約束を果たそうとします。未亡人の女二宮を見舞っていますが、いつしか夕霧は恋心をいだくようになります。源氏へのとりなしも話すタイミングを伺い柏木の想いを源氏に伝えます。
柏木は夕霧の夢枕に立ち、遺品の横笛を子孫に譲りたいと想いを伝えます。
【超訳】横笛
源氏 49歳 紫の上 31歳
女三宮 23歳 薫 1歳
夕霧 28歳
明石女御 21歳 匂宮 3歳
―― 薫の成長 ――
柏木が亡くなって1年が過ぎたんだけれど、月日が経っても彼を惜しむ人ばかりなの。源氏も優秀で将来が楽しみだと可愛がっていたから、あの許せない過ちがあったとはいえ柏木のことを思い出してるの。薫のこともあるからって、柏木の供養を源氏もしてあげるの。事情(柏木の密通)を知らない柏木のお父さんの前太政大臣は「源氏がそこまで?」と恐縮に感じるのね。
柏木が亡くなったので女二宮が未亡人になってしまい、朱雀院は娘たちの相次ぐ不幸(女三宮の出家、女二宮が未亡人)を嘆くのね。手紙のやりとりはしているみたい。
朱雀院の籠っている山で採れたタケノコが女三宮に届けられるの。よちよち歩きの薫がそのタケノコをかじって遊ぶの。比べる者がないくらいに可愛らしい薫に源氏は目を細めるの。どことなく柏木に似ているんだけど、柏木以上に気高くて美しい顔立ちなので、この先困ったことにならないといいね、なんて心配までしているの。
日に日に可愛らしく成長する薫を見ていると、源氏はあのことを忘れてしまいそうになるの。この子とめぐり逢う宿命のためにあの事件は起きたのかもしれないと自分の運命を恨みもしたみたい。
―― 女二宮と夕霧 ――
夕霧は「源氏の恨みを解いてほしい」という柏木からの遺言を果たそうと源氏に話をしてみようと思うんだけど、恐らく女三宮がらみじゃないかって感づいているから中々言い出せないのよ。それでも約束は守らなきゃとはずっと思っているのね。
秋になったの。これも柏木の遺言で女二宮を見舞ってやってほしいって言われていたから、夕霧は変わらずに未亡人の女二宮のところを訪ねているんだけど、その日は女二宮は琴を弾いていたみたいなの。女二宮のお母さんの一条御息所が応対してくれて、柏木の想い出話をするの。
「ウチは小さい子供がたくさんいて所帯じみているけれど、こちらは静かで風流でステキだなぁ」
夕霧はそんな風に思いながら庭を眺めるの。近くに柏木の琴が置いてあったので夕霧が少し弾くの。それから柏木は和琴が上手だったからきっと奥さまの女二宮にも伝わっているだろうから(和琴を)弾いてくださいってお願いしてみるのよね。
くっきりクリアな月に雁の鳴く声。雰囲気たっぷりの夜に女二宮は十三弦の琴を弾くの。深みのある音色に夕霧は盛りあがちゃって琵琶で
~ ことに
(言葉にできないくらい想っているってよくわかるよ)
夫を亡くした自分にこんな曲なんてと女二宮は戸惑うんだけど、最後の方だけ少し琴を弾いたのよ。
~ 深き夜の 哀ればかりは 聞きわけど ことよりほかに えやは言ひける ~
(秋の雰囲気に誘われただけのことよ)
女二宮はすぐに演奏をやめちゃうから夕霧はもっと聴いていたいって残念に思うけど、あまり長居すると柏木が嫉妬するだろうからって夕霧が夜のうちに帰ろうとするの。またすぐ来るから、琴の調子が変わらないうちにね、なんて話すの。直接的な恋の告白ではないんだけど、好きだって気持ちは匂わせるのよ。
帰り際に一条御息所は夕霧に柏木の遺品の横笛を渡すの。柏木が生きているときにいつも使っていた横笛で、いつかは大事にしてくれる人に譲りたいって話していたことを夕霧は思い出したの。
―― 夕霧の夢と柏木の願い ――
家に帰ると、
「こんな遅くまで夜遊びするなんて!」
怒っている雲居の雁も寝たフリをしているの。
こんな綺麗な月夜なのにもったいないよ、と夕霧が格子を開けさせて月を眺めて物思いにふけるの。
「どうしてあんなにステキな宮さまを
夕霧は不思議でしょうがないみたい。自分と雲居の雁なんて恋の駆け引きとは無縁で結婚してもう10年以上過ぎてるの。立場的に雲居の雁が強いのもまあ仕方ないかって思っているの。
そのままうたた寝をしてしまったらしい夕霧の夢に柏木が出てくるの。
~ 笛竹に 吹きよる風の ごとならば 末の世長き
「その笛は子孫に伝えたいんだ……」
子孫って誰のこと? と聞こうとしたところで子供が泣きだして夕霧は目が覚めてしまうの。こどもは母乳を吐いてしまってずっと泣いているの。
「どうしたの?」
夕霧が心配して雲居の雁に尋ねるの。
「あなたが夜遊びして遅くに帰ってくるから物の怪まで連れて帰ってきたんでしょっ!」
雲居の雁は怒っているの。その夜ずっとこどもはむずがっていたの。
―― 源氏と夕霧の探り合い ――
翌日夕霧が六条院に行くと、明石女御が帰省していたの。女御の三男の
すると源氏と薫もそこにいて、夕霧は初めて薫の顔を見たの。笑顔が柏木に似ている気がするの。きっと源氏だって気づいているだろう。匂宮たちも気品があるけれど、薫はもっと美しいの。息子の死に落ち込んでいる前太政大臣に孫がいると知らせてあげたいけれど、それはできないしなぁ、など夕霧の心境もフクザツなの。薫は性格も優しい子で夕霧になついてくるから、夕霧も可愛らしく思うのよ。
夕霧は源氏に昨日の女二宮との想夫恋の話をするの。そこで女二宮が琴を弾いたのは軽々しいふるまいなんじゃないの? 未亡人相手に間違いを起こすんじゃないよ、なんて源氏が説教をするから、だったら自分はどうなんだよと夕霧は思って柏木が夢に出てきた話をするのよ。
するとその笛は薫が受け継ぐべきで、夕霧は何か感づいているなと源氏は察するの。
「その笛は亡くなった桃園式部卿宮が柏木に下賜したものだから縁続きのウチで預かっておくよ」
なんてこじつけまがいのことを言って源氏は柏木の横笛を預かるの。それに夕霧が自分に横笛を持ってきたということは、何か感づいているのかと考えるのね。
夕霧は今がチャンスだと源氏に追い打ちをかけるの。
「柏木が父さんに悪いことしたって、申し訳ないって言ってたけど心当たりある?」
やっぱり夕霧は知ってるんだなって源氏は確信するの。でも詳しく話すことでもないので、
「どうだっけかな。思い出せないな」
身に覚えがないなぁと源氏はその話をはぐらかしちゃったの。
◇夕霧は柏木の遺言を守るために女二宮のお見舞いを続けていますが、どうやら恋心を抱き始めたみたいですね。
そしてもうひとつの柏木の遺言の「源氏へのとりなし」
柏木が謝りたいことがあると言っていたことを夕霧は源氏に伝えましたが、はぐらかされてしまいました。
柏木が夕霧に託した横笛はいつか薫に伝えられることでしょう。
~ 笛竹に 吹きよる風の ごとならば 末の世長き
柏木が夕霧の夢の中で詠った歌
第三十七帖 横笛
☆☆☆
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