episode15 シンデレラストーリー? 蓬生
◇
第六帖
【超訳】
源氏 28~29歳 紫の上 20歳~21歳
―― 末摘花の没落 ――
源氏が都を追われて須磨で謹慎しているときは源氏の援助で暮らしていた人たちの生活は困窮してしまったの。なかでも宮家のお姫さまなんだけどご両親はもういらっしゃらなくて後ろ盾のない末摘花の暮らしはとっても貧乏なものだったの。
もともと貧乏だったんだけど、源氏が通うようになって経済的援助をしてもらって一時だけ華やかな生活をしちゃったからもとの貧乏暮らしがいやになってしまう女房達も多くて、お屋敷を辞めていく人もいたんですって。
庭も荒れて牛飼いがそこで牛の放牧までするので、女房たちはお屋敷の家財道具や庭の木などを売って現金化しましょうってアドバイスするんだけど、末摘花はお父さんの想い出の品を売るなんてとんでもないわと言うし、また源氏の君が通ってきてくださるから絶対にここを引っ越さないわって頑なだったの。泥棒ですら「ここから盗るものはない」って素通りするくらいすさんだお屋敷で
末摘花の乳母の娘の侍従(末摘花のお世話係)はずっとこの屋敷で働いていたの。そこへ
いっそのこと末摘花も自分の召使にしてやろうかと思って夫の赴任地の筑紫(福岡県)に一緒に行かないかって誘うんだけど、内気な末摘花はそんな遠くには怖くて行けませんと断るんだけど、またそれが叔母さんにはムカついたみたいね。
「お高く気取っているけれど、あなたはもう源氏大将には捨てられたのよっ!」
そんな風にヒドイことを言ったみたいね。
―― 光る君の帰還 ――
ようやく源氏は京に戻ってくるんだけど、新しい仕事のことや紫の上を大事にしているから末摘花のことなんか忘れちゃってたのね。末摘花はきっとわたしのところにも通ってきてくれるわ、って待っているんだけど待てども暮らせども源氏はやってこない。
「今はね紫の上さまだけを大切になさって他の人と浮気なんてなさってないのよ。みじめな暮らしをしているあなたのところへなんてもういらっしゃらないのよっ!」
叔母さんは意地悪く末摘花のことを罵るの。
それから叔母さんは末摘花の侍従を無理やり自分の親戚と結婚させて侍従も連れて筑紫へと旅立ったの。末摘花は自分が貧しく暮らしているウワサが源氏の君の耳に入ったらきっと訪ねてくてくれるわって源氏のことを信じているの。
源氏がお父さんの法事をしたときに末摘花のお兄さんで僧侶の禅師の君も招かれたんだけど、このお兄さん、お坊さんで色恋のことには疎くて、妹の末摘花のことを源氏に話した様子でもなかったみたい。
話し相手だった侍従も筑紫に行ってしまい、源氏は通ってきてくれず、寂しく貧しくひっそりと末摘花は暮らしているのね。
―― 光る君との再会 ――
久しぶりに源氏は花散里のところへ行こうと出かけるんだけど、その途中でものすごい荒れ果てたお屋敷があるの。そこが末摘花のお屋敷だと気づいたんだけどあまりにも荒れているから末摘花は今はどこに行ったのか家来の惟光に聞きに行かせたの。
惟光が屋敷の人に
「主人の源氏が末摘花さまを訪ねてきましたが、姫さまはお心変わりされてどこかへ引っ越されましたか?」
と尋ねると屋敷の女房は
「心変わりするような姫さまならこんな荒れ果てた屋敷に住んでおりませんわ」
と答えるの。
惟光から事情を聞いた源氏は一途な末摘花に感激して訪ねてみるの。
~ 尋ねても われこそ
(誰も訪ねないけれど俺が今から行くからね。蓬が深く茂って道もないようなところで変わらない心で待っていてくれたキミのところに)
そうして源氏は末摘花と再会したの。庭の松の木に藤の花が絡まっているの。
~ 藤波の 打ち過ぎがたく 見えつるは まつこそ宿の しるしなりけれ ~
(松に絡まった藤の花を見過ごせなかったのは、キミがここで待っていてくれるサインだったんだね)
~ 年を経て 待つしるしなき わが宿は 花のたよりに 過ぎぬばかりか ~
(ずっとずっと待っていたのに、あなたはちらっと花を見るだけに立ち寄ったの?)
あいかわらずの恥ずかしがり屋さんで世渡りは上手じゃないけれど、源氏の贈る和歌に返歌するくらいはできるようになったみたい。不器用だけれど一途に待っていてくれたキミのことを忘れちゃっててごめん、今までほったらかしにしていてごめん、と源氏は思ったみたい。
改装中の二条院の東の院に彼女を引き取ろうと思ったんだけど、まずはその前に末摘花のお屋敷の手入れをして身の周りの品を贈ったの。華やかな暮らしが始まっていなくなっていた女房たちも戻ってきて少しずつ賑やかになってきたんですって。
それから2年ほどして末摘花は二条院の東の院に引っ越したの。源氏はしょっちゅう通ってきてくれるってわけじゃないけれど、源氏と同じ敷地内のお屋敷だから末摘花もとっても幸せそうなの。
そのころ筑紫から戻ってきていた末摘花の叔母さんは末摘花の
◇あの微笑ましい末摘花の姫君のお話です。第六帖【末摘花】の続きね。見た目も美しくなく、性格も引っ込み思案ですべてに不器用な姫君だけれど、源氏を想う気持ちだけは一途よね。さすがの源氏もそれには参ったのかな。二条院に呼んでもらいこれからは幸せに暮らします。源氏物語で唯一の「シンデレラストーリー」? かな??
~ 尋ねても われこそ
源氏内大臣が末摘花に贈った歌
第十五帖
☆☆☆
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