topics8 美女と野獣じゃなくて……
第15帖
愛憎渦巻く平安恋愛絵巻の源氏物語。その中にあって数少ないほっこりエピソードの回です。
6帖で登場した末摘花ちゃんのその後のおはなし。
美女と野獣ならぬ、
宮家の姫でものすごくおしとやかで美女だと評判の令嬢がいると噂が流れます。どうやら誰もオトシたことがないらしい。
そうなると燃え上がるんですわ。ヤツら。モテ男を自認するヤツらが。
「俺ならオトセるぜ」
そう、光源氏と頭中将。
ふたりで争うように彼女に迫り、彼女と付き合うことができたのは源氏の君でした。
何度か夜デートをしたあとに迎えた朝……。
衝撃が待っていました。
美人さんではなかったのね。美女という噂はウソだった。
源氏くん顔面蒼白。え、エライことをしてしまった。
かといって、手は出してしまったし、きっとこの先他の彼氏なんてできないだろ、見た目も残念だし、和歌も下手だし、オンナっぽくないし、もうなにもかもめちゃくちゃだけど、ああもういいよ、わかったよ、責任とりゃいいんだろ? と源氏くんは半ばヤケクソで付き合いを続けることになります。
ここでなんてったってMVPは
彼女は源氏の乳母の子で源氏とは幼馴染らしく、末摘花の将来を心配して源氏とくっつけようと作戦をたてたのです。
源氏が興味を持つように姫のウワサを流し、会いたがっているのを適度に焦らし、お屋敷に源氏が来ても直接は会わさずにまずは姫のお琴だけ聞かせてみたり(でも腕前があんまりだったからさりげなく聞こえづらくしてみたり)、そんなこんなで源氏の末摘花への恋心をフルチャージさせて見事末摘花とくっつけることに成功させたのです。
源氏の経済援助も受けられるようになって末摘花のお屋敷は一時は華やぎます。大輔の命婦の作戦大成功。
けれどもその後、源氏は朧月夜の一件で須磨で謹慎生活を送ります。
末摘花のお屋敷は荒れて廃れていく一方。女房たちが
「もう源氏の君もいらっしゃらないから引っ越しましょ」
と説得するんだけど、
「わたしのダーリンの悪口を言わないで。きっとまた帰ってくるんだから」
といじらしく源氏を想います。
そう、世間知らずで恋なんてしたこともなかっただけに源氏に対してものすごく純粋。もちろん源氏には奥さんや恋人がいることも知っているけれど、「わたしのダーリン」。わたしのところにだって来てくれるんだもん。いつまでも待っているんだもん。結局はこの純粋さにあの源氏も落ちるのです。ま、あの人誰にでもすぐ落ちますけれどね。このあと末摘ちゃんは二条の東の院に呼んでもらいます。色恋のお付き合いはさておき、末摘ちゃんや彼女の女房さんたちなどを経済的に援助してあげます。一応は責任をとっている源氏と一人前の奥サマのつもりの末摘ちゃんとのあいだには今後も勘違いや行き違いが生じますが、微笑ましいエピソードではあります。
~ わが身こそ うらみられけれ
(あなたのそばにいられないなんてわたくし自身が恨めしいわ)
これは光源氏の養女の
~ 唐衣 またからころも からころも かへすがへすも からころもなる ~
(ああもう唐衣とさえ詠めばいいと思ってるだろ。どこまでいってもからころも)
和歌の苦手な末摘ちゃんはよく和歌で用いられる「唐衣」を使いました。(あまり意味はない)そのクセを知っている源氏がそれを皮肉ったのです。
こんな風にキャラクターによってそれぞれの個性にあった和歌を詠ませ、その人となりを表したのですね。
決してメインキャストではないけれど、末摘花ちゃんの存在はこの物語においてほっこりさせてもらえる存在ですよね。
この時代、十分有り得るエピソードだと思うのです。誰もが美男美女じゃないですしね。
でも紫式部センセイったら彼女の容姿の描写で「(あまりにヒドすぎて)言葉が見つかりません」ってあーた、そんな表現の仕方……。末摘ちゃんがかわいそうだわ。
思うに美人さんの描写があまりない気がするんです。この物語。容姿がよろしくない描写はあるのに……。
センセイ、私情挟んでます?
美人さんはおキライ?
センセイが絶世の美女?
☆【超訳】源氏物語のご案内
関連するエピソードはこちら。よかったらご覧になってくださいね。
episode15 シンデレラストーリー? 蓬生
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054882666542
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