episode14 命をかけて…… 澪標
◇
【超訳】
源氏 28歳~29歳 紫の上 20歳~21歳
明石の君 19歳~20歳 六条御息所 35歳~36歳
女院(藤壺の宮) 33歳~34歳 冷泉帝 10歳~11歳
秋好 19歳~20歳
――
都に戻った源氏は夢に出てきてくれたお父さんの桐壺院の法事を盛大に行ったの。戻ってきて復職した源氏のことが
朱雀帝は「兄弟協力しあって」という桐壺院の遺言を守ることができるようになって一安心。政治のことも源氏に相談して、周囲の人もこの状況を喜ぶの。朱雀帝は目の具合もよくなってきたみたいなんだけど、そろそろ帝を引退しようかなと考え始めるの。奥さんの朧月夜とのあいだに結局子供ができなかったことだけは残念みたい。
2月に入って東宮が元服(成人式)するの。源氏とそっくりなその姿を見ると藤壺の宮はまた落ち込んじゃうの。
そして朱雀帝が位を下りて東宮が帝に即位して冷泉帝と呼ばれるようになるの。朱雀帝のお妃の
源氏は内大臣に、葵の上と頭中将のお父さんの左大臣は
源氏と葵の上の子の夕霧は祖父母の家で大事に育てられていたの。とても美しい子で御所や東宮御所にも出入りを許されていたの。太政大臣家は源氏が須磨へと追いやられていたあいだは不遇だったけれど、また再び光が差してきたことを喜びながらも娘の葵の上がいないことを悲しんだの。源氏も昔と変わらず太政大臣と奥様の大宮さまを大事にしたの。太政大臣家にまた幸せが訪れたのね。
それから源氏は自分が須磨に行っていた間にひっそりと暮らしていた花散里たちを住まわせようと自宅の二条院の東の屋敷の
―― 明石の君の出産 ――
そういえば明石の君はどうしてるかなと心配した源氏は明石に使いを出したの。そうしたら女の子が産まれたという報告があったの。この子が明石の姫君ね。源氏は前に占いをしてもらったんだけど、「子供は3人。帝と妃、それから太政大臣が産まれる。妃は身分の高くない女から産まれる」って言われていたの。実際に冷泉帝が帝になっているから、この女の子が将来皇后になるかもしれないと思って、京から
明石なんて田舎に来て心細かった乳母も見たこともない美しい赤ちゃんに夢中になってお世話したんですって。源氏と明石の君も手紙のやりとりはするんだけど、まだ京には呼べなくて、でも源氏は明石の君と姫君に早く会いたいと願っていたの。
~ いつしかも 袖うちかけん をとめ子が 世をへて撫でん 岩のおひさき ~
(早く(俺の)手元で育てたいよ。天女が撫でるように姫の未来を祝福するよ)
源氏はこの歌を乳母に持っていってもらったの。
~ 一人して 撫づるは袖の ほどなきに 覆ふばかりの
(わたしひとりでは心細いの。あなたに支えてもらいたいの)
明石の君がこんな返歌を源氏に贈ったから源氏は明石の君と姫君に早く会いたくてたまらなくなったみたいね。
子供が生まれたので源氏は紫の上に全部正直に話すの。
「世の中ってうまくいかないよな。(赤ちゃんが)できてほしいと思うキミにはできなくて、そうじゃない子(明石の君)にできちゃうんだよ。でもさ、女の子なんだけどね。まあシカトもアリなんだけど、親としてはそうもいかないからさ。そのうち京に呼び寄せるけど怒んないでね」
紫の上のことが恋しくてたまらなかった明石にいたころを源氏は思い出すの。お互いやりとりした手紙で逢えない辛さばかりを綴っていたことを思うと、明石の君との恋はそこまでの深い想いじゃないかもな、なんて思うらしいのよ。
紫の上は自分に子供がいないので嫉妬するの。わたしはどうしようもなく寂しかったのにあなたはそのときに子供まで作ってって。源氏は
「ま、田舎だからそれなりにキレ―に見えたけどフツーな感じだよ? 娘のことはね、ちょっと考えてることがあるんだけどね」
そんな風に話すの。
~ 思ふどち
(愛し合って同じ想いだと思っていたのに。同じ方向を向いていないならわたしは先に死んじゃいたいわよ)
紫の上はこんな歌を詠むの。そうしたら源氏が反論するの。
~ たれにより 世をうみやまに 行きめぐり 絶えぬ涙に 浮き沈む身ぞ ~
(誰のために涙を流してツライ想いをして田舎でさまよってきたと思ってんの?)
でもこんな風にヤキモチを焼いて拗ねる紫の上をやっぱり可愛いなぁって思ったんですって。紫の上は明石の君からの
生後50日のお祝いも源氏がいろいろなものを贈って明石で盛大に行われたの。もちろん源氏はそこには行けなかったんだけど、源氏の心遣いに明石入道はとっても感激したんですって。
「からだから魂が抜けてしまうんじゃないかって思うほどキミたちが恋しいよ。俺をこの苦しみから救って欲しいから
こんな手紙が添えてあったみたいよ。
―― 花散里と朧月夜 ――
京に戻ってからはいろいろとバタバタしていてたんだけど、源氏は数年ぶりに花散里のところに行くの。あいかわらず穏やかで優しい花散里の君との再会で源氏の心は癒されるの。
源氏が須磨に旅発つときに「月の光(あなたの面影)を袖に写して見つめているわ」と花散里が歌に詠み、「月(自分)は隠れるだけでまた巡ってくる(帰ってくる)からそれまで空は眺めないで」と源氏は詠ったのね。そんなことをふたりで想い出しながら、月の光(源氏)が入ってきたわ、と和歌に詠んだみたいね。
朧月夜尚侍のことも源氏はまだ想っていたんだけど、尚侍の方がもう源氏の誘惑にのってこなかったの。源氏も重要な役職にもついていたので、前みたいな過ちは犯さなかったみたいね。
―― 明石の君とのニアピン ――
源氏は秋になって大阪の住吉大社にお参りに行くの。そうしたら偶然にも明石の君もお参りに来ていたんだけど、あまりの源氏の豪華な行列に圧倒されちゃうの。その行列には源氏の息子の夕霧(葵の上の産んだ子ね)もいるんだけど、同じ源氏の子どもなのに堂々と行列の中心にいる夕霧と自分の娘との境遇の差を感じてしまって明石の君は落ち込んじゃうの。
家来の惟光が明石の君に気づいて源氏に知らせると、源氏はさっそく明石の君に歌を贈ったの。
~ みをつくし 恋ふるしるしに ここまでも めぐり逢ひける
(
明石の君も返事を出すの。
~ 数ならで なにはのことも かひなきに 何みをつくし 思ひ初めけん ~
(あなたには大勢奥様や恋人がいらっしゃるのにどうしてこんなに好きになってしまったのかしら)
次の日に明石の君はお参りをして明石に帰るの。源氏からはそろそろ京に迎えたいって手紙が届くの。明石の君は自分のことを想ってくれているのは嬉しいんだけど、京には奥様も恋人もたくさんいるのにそこでも変わらずにわたしは愛してもらえるのかしらってとっても不安がってたみたいね。
―― 六条御息所の死 ――
帝が変わったので、伊勢の斎宮の役職も交代となって六条御息所と娘の斎宮(
いろいろあったけれど、急な出家に驚いた源氏は色恋うんぬんじゃなくて彼女のもとを訪ねることにするの。
すっかり弱ってしまった御息所と再会すると、どれほどこの人を愛していたんだろうと源氏は涙を流すの。そんな源氏に御息所は自分の娘、秋好のことをよろしくとお願いするんだけど、「絶対手は出さないでね」と念を押すの。源氏はちらっと見えた秋好の姿にときめきそうになるんだけど、そこは御息所との約束を守るの。
それから1週間後に六条御息所は亡くなられたの。お葬式も源氏が指示をして立派に執り行ったの。
遺された秋好なんだけど、朱雀院からお妃に来ないかという話が前にもあったんですって。でも朱雀院には朧月夜がいるし、他にもお妃もいるところに今からお嫁入りするよりは、教育係的なお姉さんとしてまだ幼い冷泉帝にお嫁入りしてはどうかと冷泉帝のお母さんの女院(藤壺の宮)に源氏は相談したの。女院は源氏の意見に賛成するんだけど、自分のお兄さんで紫の上のお父さんでもある
権中納言(頭中将)の娘も冷泉帝に入内(お嫁入り)して新弘徽殿女御となったの。まだ冷泉帝は子供なんだけどその
◇京に戻ってからの源氏の様子ね。以前より上の役職について政治的地位も確立して、明石の姫君が産まれ、東宮さまが冷泉帝となり、また新たな物語が始まる予感を感じさせる巻ですね。
~ みをつくし 恋ふるしるしに ここまでも めぐり逢ひける
~ 数ならで なにはのことも かひなきに 何みをつくし 思ひ初めけん ~
明石の君が源氏大臣に贈った歌
第十四帖 澪標
☆☆☆
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