episode4 年上の彼女と癒しの彼女 夕顔
◇夕顔ざっくりあらすじ
空蝉との恋がうまくいかない源氏は六条御息所という新しい恋人と付き合うようになります。またそれと並行して夕顔という女性とも出逢い恋に落ちました。
【超訳】夕顔
源氏17歳 夕顔19歳
―― 夕顔との出会い ――
源氏は新しい恋人、
源氏の家来の
乳母の家の隣の庭に見慣れない花が咲いているの。その花の名前をそこの家の人に尋ねると、その家の女主人が花と一緒に扇子を渡してきたの。その扇子には歌が書いてあったの。女の人から和歌をよこすなんて、一気に源氏は興味を持っちゃうの。
~ 心あてに それかとぞ見る 白露の 光そへたる 夕顔の花 ~
(あなたのいるところだけに光が反射して眩しいのだけれど、もしかしてそこにいらっしゃるのは光源氏の君なの?)
そこに咲いている花は夕顔という名前なのよ、と答えながら自分の方から和歌を源氏に贈ったこの女性が夕顔の君。その頃女性の方から和歌を贈るなんてチョー大胆なことだったと思うのね。こんな大胆なアプローチに源氏の君が盛り上がらないわけがない、かな?
「惟光、あの家には誰が住んでいるか知ってる?」
惟光はまた源氏のオンナ好きが始まったって思うの。
「知りませんよ。僕は母の看病に来ているだけですから」
冷たくあしらおうとする惟光なの。
「だってさ、こんな
従者に呆れられようと源氏はあの女子のことが気になってしょうがないの。で、源氏の返歌がコレ。
~ 寄りてこそ それかとも見め 黄昏れに ほのぼの見つる 花の夕顔 ~
(だったらもっと近くで見て確かめてみる? 俺のコト)
家の様子から源氏よりずっと下の身分だろうけれど、思わぬところでカンジのいいコを見つけたのかもって源氏は盛り上がるのよね。
――
季節は秋。新しい恋人の六条御息所のもとへ通っていた源氏なんだけど、一気に盛り上がった恋ごころはすでに冷め始めているみたい。六条御息所という方は亡くなられた東宮(皇太子)さまのお妃(今は未亡人ね)で高貴な身分の方なの。宮中でも素敵な女性としての評判は有名で源氏より8歳年上だったの。教養も豊かで、やりとりする手紙や和歌も知的で年上のオトナの女性とのオトナなつきあいに源氏も一時は盛り上がったのね。けれど、逆にいうと、常に子ども扱いされないように、贈る和歌や手紙も恥ずかしくないようにといつも気が張っている恋愛だったようなのよ。六条御息所にしても、自分よりも年下の宮中でも有名な貴公子にいい年した未亡人がもてあそばれているなんてウワサが広まったら生きてはいけないわ、って悩んでいたみたい。
ハイセンスな六条御息所のお屋敷から朝帰りする源氏の様子はとっても美しいんですって。
―― 夕顔とのデート ――
一方でこの前の夕顔とも付き合い始めたの。五条の夕顔のつましい家でデートしてたのね。夕顔はおっとりとして、純真無垢なイメージで、高貴な感じはないけれど、どこなく品がある不思議な魅力のある女性だったみたいよ。朝帰ったあとも会えない昼間も逢いたくて苦しくなるほど源氏は恋に落ちたみたいよ。わざと身分の低い
夕顔は自分が何者であるか話さなかったみたい。源氏も自分が源氏宰相中将だとは名乗ってはいなかったのね。お互い身分も関係なくそれぞれの存在を愛し合っていたというところかな。
でもね、源氏は前に
源氏が住んでいる貴族の豪邸とは違って、夕顔の家は庶民の家だから近所の物音とかが騒がしく聞こえるの。高貴な身分の源氏にとっては初めての体験で物珍しいのよね。でも夕顔のことが大好きだからそんな環境も悪く思わなかったみたいなの。
「ね、たまにはさ、ずっとふたりきりで過ごそうよ。ちょっとでかけない?」
ある明け方に源氏は夕顔を外へと連れ出そうとするの。そう、この頃の女性のお出かけなんて滅多にしないこと。夕顔の家のものにも誰にも知らせず、
―― 夕顔の死 ――
こっそり隠れ家に夕顔を連れてきて、ふたりは一日中一緒に過ごしたの。ただあまり手入れの行き届いていない家だから、夕顔は薄気味悪いって怖がっているの。夜になって少し眠った源氏だったけど、ある美女が自分のところへ訪ねてこないと恨み言をいう夢を見て目を覚ますの。
灯りも消えていてあたりは闇。夕顔も侍女の右近も怯えているの。夕顔を右近に託して源氏は人を呼びに行くんだけれど、戻ってくると夕顔はすでに息をしていないの。そこへさっき夢で見た美女が幻となって現れて、一瞬で消えてしまったの。
「目を覚まして。俺を悲しませないで」
源氏は夕顔を抱きしめてそう言うけれど、夕顔の身体は冷たくなっていくの。
どうしてこんな寂しいところに連れてきてしまったんだろうって源氏は後悔するのよ。
夜が明けて、家来の惟光と相談して、このことがウワサにならないように内密に済ませることにするのね。夕顔の亡骸は惟光の知り合いの家に移して、源氏は二条院へと一旦戻ったの。
それでもやっぱりもう一度逢いたいと源氏は夕顔の亡骸と対面して涙するの。
「もう一度声を聞かせて。キミを愛しているんだ。俺を置いていかないで」
ようやく出会えた心のよりどころにできる彼女だったのに、とね。周りも気にせず源氏は泣いたの。主人を亡くした右近は源氏が二条院に連れて帰り、源氏に仕えるようになるの。
―― 夕顔の過去 ――
夕顔を亡くしたショックで源氏はしばらく寝込んだんだけど、回復すると、右近から夕顔の過去の話を聞くのね。やっぱりこの夕顔こそが、いつかの夜勤で
夕顔の五条の家では、夕顔と右近が戻ってこないので心配するのだけれど、行方がわからないの。惟光に夕顔たちのことを尋ねるんだけれど、惟光も知らないって答えるの。主人の源氏が連れ出した先で夕顔が亡くなったなんて不名誉なことを話すわけにはいかなかったのね。
右近も自分が夕顔を死なせたみたいに思われるのを恐れて連絡をとらなかったみたい。
―― その後の源氏と空蝉 ――
そのころ空蝉の夫が単身赴任から戻ってきていたんだけど、今度は空蝉も連れて行くことになったらしいの。源氏はもう一度逢いたいと小君に相談するけれど、やっぱり実現しないの。それでもふたりは手紙のやりとりだけは続けていたらしいわ。空蝉の夫の娘(空蝉の継娘)の
~ 逢ふまでの 形見ばかりと 見しほどに ひたすら袖の 朽ちにけるかな ~
(また逢える日まで大事にとっておこうと思ったけれど、涙でもう朽ち果てちゃったよ)
あの夜持って帰った空蝉の小袿を源氏は返すの。
~ 蝉の羽も たち変へてける 夏ごろも かへすを見ても 音は泣かれけり ~
(衣替えが終わったあとに返してもらっても泣けてくるだけだわ)
源氏は未練が残る歌を贈り、空蝉も返歌をしたけれど、ふたりが逢うことはなかったの。
◇空蝉サンとの恋がうまくいかないものだから、宮中でも美人で教養高く高嶺の花といわれている六条御息所にアプローチして見事に成功させる源氏の君。年上で美人の彼女とちょっと背伸びしたオトナな恋を満喫するけれど、やっぱり正直疲れるところもあったのかな。
そんなときに出逢ったのが夕顔の君。こちらは六条御息所とは好対照で一緒にいて安らげるいわゆる癒しの彼女。ようやく心落ち着く存在の女性に出逢えたと思っていたところへの彼女との死別。
源氏のいろいろな女性への気の多さをやれやれ、とも思うのだけれど、それぞれの女性には精神誠意心を尽くして付き合っているのかな、とも思ったりも。六条御息所にしても最初の頃はね。
~ 心あてに それかとぞ見る 白露の 光そへたる 夕顔の花 ~
夕顔が源氏宰相中将に贈った歌
第四帖 夕顔
☆2019.1.18追記
2019.1.15朝日新聞デジタルに【夕顔】の絵巻物が発見されたとの記事が載りました。詳しくはこちらをごらんくださいね。
https://digital.asahi.com/articles/ASM1H03D0M1GULZU017.html
☆☆☆
【別冊】源氏物語のご案内
朝日新聞デジタルニュースのことをエッセイで書いてみました。よかったら覗いてみてくださいね。(2019年1月追記)
topics49 源氏ニュースはフランスから☆彡
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054888208516
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