第一章:革命の始まり

一話目

中学3年の秋。私、藤堂蓮はある事を始めた。その名は“革命”。

革命とは、簡単に言えば反発するという事だ。また、一つの事を覆すという意味もあるらしい。(私の学校の国語教師が言っていた)

革命を始めようと思ったのは、単に好奇心からだった。その内容は至って簡単。世界を否定する事。

某テレビ番組である評論家が言った。生き物を大事にしましょう、動物を殺す事は絶対にしてはいけません、と。私はそれを見て、「クソくらえだな」と言った。

その評論家は、無意識の内に矛盾を言っていたのだ。動物愛護の言葉は、確かに聞こえがいい。でもその評論家は、絶対に生き物を殺した事がないと言いきれる訳がない。

人間が、というか生き物が生きていく為には栄養が必要だ。植物みたいに日光浴で生きられるなら話は別だが、人間はそんな事出来ない。他の「生き物」を自分の栄養にする為に「食べる」んだ。じゃないと生きられない。

まぁ人間が生き物を食べる時は、だいたいが「食材」になった生き物な訳だが、その「食材」はつい最近まで生きていた一つの生命体だったんだ。その生命体を人間は殺して自分の栄養にする。

もちろん、私だって人間だ。食事は取る。まだ死にたくないから。けれど某評論家の言った事が矛盾しているのはまぎれもない事実だ。

それだけじゃない。この世界には世界を縛る「歴史」がある。人間が作り出した、愚かで馬鹿馬鹿しい物語。

あぁ勘違いしないでくれ。私は別に「歴史」が嫌いな訳じゃない。私が嫌いなのは後世の人間が「歴史」を見て作り出した「善悪の違い」の方にある。

そもそも善悪って何だ?と私は思う。人は無意識にこれは正しい、これは正しくない、と勝手に正解を決めつけている。私はこれが嫌いだ。

例えば、世間は警察が善だと思う人がいる。けれどその警察が本当に善かどうかなんて、世界中全員がわかる訳じゃない。もしかすると、裏でお金を貰って、犯人を見逃している奴がいるかもしれない。逆もまた然り、だ。

どうして人間は、こうも簡単に正解を決めるんだろうか?私はその疑問を、ある方法で世界にぶちまけてみた。方法は色々あったが、まず始めにした事は、警察に手紙を送った。所謂“予告状”というやつだ。手紙にはこう書いた。



『この手紙が届いてから一週間以内に、某銀行を放火します。日本中にある銀行のどれを放火しようか、今から楽しみです』



警察はこの手紙を見ても、何の動きも見せなかった。ただのイタズラだと思ったのだろう。だが、私は実際に、ある銀行を放火した。

その銀行は群馬県の銀行だった。わざわざ東京から、群馬までやって来て、夜に放火してやったのだ。私は放火してすぐに新幹線で東京に戻ったし、学生であるというレッテルから放火犯とは思われる事無く、自然に容疑者から外れた。

そして私は、同じ警察署に手紙を送った。



『この手紙が真実という事、信じてもらえましたか?群馬県は素敵な場所でしたよ。次は何をしようか迷っています』



この手紙が届いて、警察もようやく本気になったのだろう。この事は連日ニュースで報道され、学校でもすぐに噂になった。

そして私はまた行動に移った。次はインターネットを使った。

某人気モデルのブログに、こう書き込んだのだ。



『このメッセージが届いてから三週間以内に、貴方がしばらく仕事が出来ない状態にします。他の仕事を考えた方がいいのでは?』



このメッセージを読んだ某人気モデルは、すぐに警察に連絡した。警察は毎日彼女の警備につき、レギュラー番組が行われている全てのテレビ局にも警備をつけた。だが、無意味だった。

私はテレビ局や某人気モデルではなく、彼女の婚約者に近づいた。私はその婚約者をナイフで5回刺した。

命に別状がないように急所を外したが、かなりの重症に追い込んだ。私はその時マスクにサングラスをしていて、誰にも顔は見られなかった。服は監視カメラのない公園の公衆トイレで着替え、犯行時に使用した服は公衆トイレごと燃やした。凶器のナイフは川に捨てたが、手袋をしていたので指紋は残らなかった。某人気モデルの彼女は、婚約者が重体となった事実を知り、精神的な事で仕事を休んだ。私の言った通り、彼女はしばらく仕事が出来ない状態になった。

私はその状態を確認してから、彼女のブログにこう書き込んだ。



『他の仕事を探して方がいいですね。こんな簡単に仕事を休むなんて、社会人としてなってませんよ』



ちなみにこの書き込みは、埼玉県のとある中学校に夜中に入り込んで、そこのパソコンを使って書き込んだ。その中学校は私とは何の関係もないので、私はまた自然に容疑者から外れた。

この事件をきっかけに、マスコミは私の事を叩き始めた。人殺し、と。悪魔、と。でも私は、マスコミにそんな事を言われるつもりはなかった。

彼女の婚約者を刺したのは事実だが、殺すつもりではなかったし、実際に殺していない。人殺しとは、人を殺した人間が呼ばれる名称だ。

私は再び行動に移った。今度は某マスコミに手紙を送った。



『この手紙が届いてから二週間以内に、貴方達の大事な存在に悲劇が起こります。お見舞いの品を考えていた方がいいですよ』



某マスコミはこの手紙の事を、警察に話さなかった。自分達だけのネタにしようと思っていたのだろう。

だが、それは悲劇を招いた。某マスコミの会長の娘の結婚式を、私はめちゃめちゃにした。その会長の娘はストーカー被害にあっていて、私はそのストーカーに手紙で情報を送った。ストーカーはめちゃめちゃに怒り、結婚式場を暴れ回った後、会長の娘の顔に火をつけた。会長の娘はそのまま病院に運ばれたが、顔に一生残ると思われる大きな火傷が残ってしまった。

私はストーカーとも会長の娘とも何の面識もなかったし、手紙には指紋などは何一つ残さなかったので、また自然に容疑者から外れた。

私はそれをテレビで確認してから、また某マスコミに手紙を送った。



『娘さん、かわいそうですね。一生記憶に残る日に、一生顔に残る火傷を負ってしまったんですから』



会長はこれを見て大激怒し、自分のテレビ局で私こと犯人にこう言った。

「お前は最低だ。まさに悪魔の名がふさわしい。一刻も早くお前が捕まり、死刑になる事を願っている」

こんな事を言われるのは予想内だった。だから私は、ある事を全国のマスコミに手紙にして発表した。最初に語った事を手紙にしたものだった。

すると、少しだけいい方向に予想外な事が起こった。私の同世代の人間達が、私を支持する声を上げ始めたのだ。


「言っている事は正しい」

「今のこの世界は腐っている」

「彼は世界を変えてくれる」


そう言った内容だった。無論こういう人間達に、某マスコミの会長はボコボコにバッシングされていた。全国の半数が、私を支持する声を上げる。それは、私が行動しやすくなったというメリットがあった。

彼らは私を“レターミューズ”と呼ぶ様になった。意味は「手紙の女神」だった。


ここまでが、私の初めての改革内容。

だが、私はこんな所で収まるつもりはなかった。

次の狙いは海外だった。

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地球上最も愚かな少女の革命物語 櫻尊 @gajiru

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