第144話 結成・リベリオンズ
冒険者の間では、パーティーが最も安定する構成人数は、五人から六人であると考えられていた。
倒した
平均な能力の人間がリーダーとなった際に、統率することが出来る集団の最小値、
遠征時の食料の運搬と消費の効率に至るまで、
先人たちが検討と実施を繰り返し、
リベリオンズも【
つまり、この構成メンバーで問題なく戦闘をこなし、余裕をもって探索から帰還出来るか否かに、パーティーとしての真価が問われていた。
「グオオオオォォォオオオ!」
王都から少し離れた森の奥、様々な効能の薬草が生えていることで知られるこの秘境にて、獣の猛々しい咆哮が木々を震わせる。
筋骨隆々の双頭の獅子は、ここを仕事場としている冒険者が一目散に逃げだすほどの強大な
相対するは新進気鋭のリベリオンズ。両手両足を赤き鱗で覆った中村を前衛に、クラマとローザが後衛として布陣している。
■■■
【Name】《名前なし》
【Race】
【Sex】男
【Lv】120
【Hp】1800
■■■
獣はもう一度威嚇の咆哮を放つと、大地を蹴って敵めがけて突進する。
相手の猪突を確認した中村は、避けようとせずに人ならざる両腕を大きく掲げた。
両者の距離は瞬く間に縮まり、吐いた息がかかるほどに
「があぁ!」
驚愕したもう片方の頭が掴んだ腕に嚙みつく。しかし流石は龍の鱗、表面に微小のひっかき傷は作るものの、鋭い牙が肉に到達することは無かった。
「むんっ!」
ハンドルを切るように大きな額を回転させ、脳天から地上へ叩きつける。
左手で暴れる獣の首根っこを掴み、右腕を天高く掲げた。
「『いと聖なる主よ、我に癒しの力を与えたもう、眼前に奇跡の御業を、【ヒーリング】』」
ローザの詠唱が、中村の鱗に刻まれた軽傷が消えていく。
「
クラマが
肉を叩く音の奥で、ボキリと骨の折れる音が響く。
今まで経験したことのない鈍い痛みに、獅子の
「グルァアアアア!」
「うわっ!」
巨躯に満載されている筋肉を躍動させ、拘束していた中村の手を振り払う。
もはやこの場に留まる意味はなかった、脱兎のごとく敵に背を向けて走り出す。
四つ存在する瞳の一つが、脇を通り過ぎる一つの影を捉える。
しかし、今は注意する状況ではないと二つの脳味噌が判断し、目の前の草むらへとわき目も振らずに駆け続けた。
――突然の事であった、
冒険者アイテムの一つ、魔術【フローズンバインド】を込めた『呪符』の効果であった。
「足を封じました! 今です!」
木陰から飛び出してきた少女、エストが中村達に声を掛ける。
中村は背中の翼を大きく開き、天高く飛翔した。
周囲に自生している背の高い針葉樹すら超えたところで、今度は地面に対して自由落下よりも速い速度で急降下する。
足蹴りの体勢のまま突撃するその迫力は、極小の隕石を思わせる。
つま先が
周囲の仲間が固唾を呑んで見守っていると、煙の奥から一つの足音が聞こえてくる。
「みんな、お疲れ様」
姿を表したのは、完全にこと切れた獅子を引きずる一人の少年であった。
真っ先に彼へ駆け寄ってきたのは、懐からナイフを取り出すエスト。
「これから大型の
もしよろしければ、ナカムラ君がやってみますか?」
怖さ半分興味半分で頷くリーダーに、残りの仲間が駆け寄ってくる。
こうして冒険者パーティー『リベリオンズ』は無事強敵に勝利した。少し離れた場所で
◆◆◆
「素材採取場所に突然出現した
剝ぎ取った肉と骨と牙が並ぶ冒険者ギルドの一室にて、カレラが達成確認の判を押す。
「これにてナカムラ様、エンドウ様をCランク冒険者。
ローザ様をEランク冒険者に認定させていただきます」
ローザには左端に芽が、中村と遠藤には
師と同じ階位に到達した弟子たちへ、受付嬢は言葉を続ける。
「Cランクに到達した御二方は、来週開催される『国家認定冒険者証』の試験を受ける資格を得ました。
受験のご希望をなさいますか?」
少年二人は顔を見合わせ、
「はい!」
「当然」
カレラに対して勿論というように大きく頷いた。
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