第35話 終炎・双剣を掲げ誓いを胸に
洞穴から出ると、黒龍が部屋の中心で眠っていた。
それは戦闘のために力を蓄えているようであり、その様はまるで自身がこのダンジョンの王である、というような態度に見て取れた。
洞穴を一つ一つ探すよりはじっくりと待って、出てきたところを倒そうという作戦らしい。
これはかなり厳しい戦いになるだろう。
29階から70階までの敵は経験していないが今まで戦った敵は総じて頭はよくなかった、自分が圧倒的にステータスが低かったのにもかかわらず、互角以上の戦いを繰り広げられたのは知恵と工夫によるものが大きい。
しかしこの龍は圧倒的なステータスの差があるにもかかわらずまるで狩人のように狡猾で冷静である。
今までにない強敵といってもいい。
自分が黒龍の前に立つと同時に、黒龍も自分の気配を感じ取ったのかゆっくりと立ち上がった。
その瞬間戦いが再開される。
戦闘が始まると同時に自分は黒龍の右側へと走り出した、今右目は使えないためそこは死角となっている。
黒龍には
黒龍もそれを予知していたのかすぐさま炎のブレスを放ってくるが、照準が定まらないためどうしても少しずれた方向に着弾してしまう。
片目で見るとペンのキャップがはめにくいように、一つの目だけでは距離感がつかめなくなるのだ。
しかし照準が定まらないという事は逆に、予期せぬ方向へとブレスが放たれるという事でもある。
避けた先で直撃、なんてことがあるかもしれない、油断せずに行動しなければそれは死に直結する。
それらを躱しながら分身体を次々と出しては、【隠密】を発動させて隠れさせている。
自身は黒龍の右側へ回りながら走り、黒龍との距離を縮めていく、そしてついに黒龍の体にまで到達する、そして黒龍の体に張り付いた。
その瞬間、黒龍の行動に変化が見られる、背中の翼を広げ空中に飛び上がるとその位置から下に向かってブレスを吐こうとし始めた。
これでは黒龍の死角に入ることは出来ず、圧倒的にこちらが不利になる。
しかも先ほど乱れ打ちしていたブレスよりタメが長い、おそらくスキルを確認した時にあった
あれの威力を見たことはないが、今までのブレスとは比較にならないほどの威力であることは、その口から伝わるエネルギーから見て取れる。
恐らく隠れている分身体をすべて焼き払おうとしているのだろう。
それを待っていた。
「今だ!」
黒龍の頭付近まで登りきり、リンが自分の意志にこたえてスライムワイヤーを出し、それを黒龍の口に軽く巻き付ける。
そして黒龍が【
その瞬間、行き場をなくしたエネルギーが黒龍の口内を駆け巡り暴発する。
外から見ていたが口の隙間から眩いばかりの光が漏れた後、自分が吹き飛んでしまいそうな程の衝撃波が炸裂した。
さすがの黒龍もそこから体勢を立て直せなかったのか、ゆっくりと落ちていき地面に叩きつけられる。
叩きつけられた瞬間に黒龍から距離を取り、改めて観察する。
【
しかし自分は黒龍にダメージを与える以上の収穫をしたことを理解できた。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
声なき咆哮を上げ、自分にブレスを放ち始めた。
しかし先ほどのように的確に狙ってではない、自分めがけてやたらめったら放っている、怒りで我を失っているのだ、自分の作戦がうまくいったことを心の底から実感する。
奴、いや敬意を表して彼と呼ぼう、彼の一番厄介なところはその理知的な部分に収束する、自分が穴に逃げ込んだとき、一つ一つ探すのではなく出てくるまで待つという狡猾さ、自分が分身体を設置したとき上空から一気に焼き払おうとする判断力、これはその圧倒的ステータスとスキル以上に厄介なものである。
だからこそこの黒龍に不利な状況で勝つためには、その理性を失わせることが不可欠だったのだ。
そして第二の策を実行した。
「やれ!」
そう合図すると黒龍の上から一斉に分身体が降ってきた、彼のブレスを避けている最中、壁を伝って天井付近まで登ってもらったのだ。
当然彼もその分身体に気付き見上げる。
いつもの理性があれば、あんな分身体なんて自分の装甲を傷つけることもできないと思い、自分の作戦に気付けたかもしれない。
しかし頭に血が上っているため、自分なんかより空中にいて狙いやすい分身体の方を優先した。
大きく体を上に逸らし、上空に【
それを見計らって再び彼へと走り出した。
【
「【
【分身】Lv,7以上と【短剣術】Lv,10で取得するスキルであり、現在使うことのできるスキルの中で最大の威力を出し得る最終兵器だ。
分身体のエネルギーを短剣の刀身に纏わせて攻撃力を上げるスキルでこの威力の上がり様がすごく、体感で分身1体のときでも2倍ほどになり2体で4倍ほどになった。
前の階で地竜に対して用いた分身体は4体、倍になって増えていくと仮定するならば単純計算で16倍の威力になったことになる。
そして今回使った分身体の数は王城にいる分も含めて10体、【分身】Lv,10で出せる分身体全員である。
ちなみに王城にいる分身体については、こいつを確実に倒すことと目立つことを天秤に賭け、どうせ悪目立ちしているのならこの技に使ってもいいかと決断した。
これでこの技の威力は単純計算で1024倍、いくら黒龍の装甲が厚くてもこの威力には耐えられないだろう。
問題は黒龍にいくらダメージを与えても、倒しきらなければ【
だからこそ中途半端な体勢で攻撃をしてはならない、黒龍が上に体を逸らしてこちらからの注意を完全に逸らした今しかない。
分身が赤い光となって刀身に纏っていく、【
そして赤い光が集まり、短剣が巨大な光の剣と化した瞬間にそれを振りかぶり【
まるで硬いものをドリルで削るかのような手応えを感じながら、自分は短剣を離さずに踏ん張り続ける。
黒龍の血が自分の顔に掛かり目が見えなくなる、
しかしもう見えなくていい。
この手に持っている短剣を下に下げるだけなのだから。
「倒れろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
彼の【
今この状況をはた目から見ればきっと自分はものすごく目立っているだろう。
だったら地上でこれを使うのは禁止かな?
こんな状況でそんなことを思ってしまう自分は本当にどこか抜けているのかもしれない。
まるで一秒が数分にも思えた時間が終わりを告げる。
硬いものをかみ切ったような、いきなり硬い手ごたえがなくなり、思わず前のめりに倒れてしまう。
すぐさま目についた血を腕でぬぐい、【
そして飛び込んできたものを見て驚きのあまり声を失った。
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Name 黒龍の魔石
種類 魔石
備考 黒龍より採取できる黒龍の心臓ともいうべき部分。
伝説の魔法具などに使われる。
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「しゃあ!!」
思わず叫んでしまった。
ただここには自分一人しかいないので、誰にも邪魔をされずにこの喜びを表現することができる。
「はは、少し疲れたや」
さっきまで寝ていたはずなのに急激に眠くなってきた。
分身したことによってMpが少なくなり疲労の色が強いのと、死と隣り合わせの緊張感がなくなってほっとしたのだろう。
そのまま仰向けに寝転がり、リンを胸に乗せながら自分は意識を手放した。
<ラスボス『黒龍』を倒したことにより、このダンジョンをクリアしたことをここに証明します。>
<ダンジョンより『神の破片』を贈呈します。>
<個体名【
<『神の破片』による個体名【
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<
<
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■■■
【五感強化】Lv,5が『神の破片』の干渉により
<
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<
<
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【無銘の剣魔】は持ち主が一定の力に達したため
【黒剣・双影】へと進化します。
■■■
<続いて個体名【リン】における『神の破片』の付与を実行します。>
<『神の破片』による個体名【リン】への干渉を開始します。>
■■■
種族・ゴールデンスライムを『神の破片』の干渉により
種族・シャドースライムに進化します。
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■■■
<
<
■■■
■■■
<
<
■■■
■■■
<
<
■■■
■■■
【Name】
【Race】 人間
【Sex】 男
【Lv】224
【Hp】 2340
【Mp】 2340
【Sp】 203645
【ATK】 2340
【DEF】 2340
【AGI】 3945
【MATK】 2340
【MDEF】 2340
■■【
【
【装備】
【黒剣・双影】
【黒剣・双影】
【黒鎧・黒烏】
【闇のマント】
■■【スキル】■■
<
【影魔法】Lv,1
【参剣術】Lv,1
【多段突き】Lv,10
【投擲】Lv,7
【三日月燕】Lv,7
【首切り】Lv,5
【
<
【
【変装】Lv,10
【完全耐性】Lv,5
【五感特化】Lv,1
<
【自己鍛錬】Lv,5
■■【称号】■■
【異世界人】【冒険者】【覚醒者】【攻略者】
■■■
■■■
【Name】 リン
【Race】 シャドースライム (魔物)
【Sex】 なし
【Lv】68
【Hp】 780
【Mp】 780
【Sp】 291600
【ATK】 780
【DEF】 780
【AGI】 780
【MATK】 780
【MDEF】 780
■■【
【使い魔】
■■【スキル】■■
<
【
<
【
【
<
【捕食】Lv,10
【蜘蛛糸】Lv,10
■■【称号】■■
【使い魔】【覚醒者】【攻略者】
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