第34話 中炎・忘れられた遠い冒険者

■■■


 この手紙を読んでいるってことは黒龍に挑んだんだな?

 そんで痛い目にあったんだろ?

 でなきゃこんな場所にはいねぇからな。


 まぁこんな場所に住んでみたいなんて、おかしなやつがいるかもしれないから予防線を張っておくぜ?



 でな、俺たちもあんたと同じように黒龍に挑んだんだ。

 これでも王国じゃぁ結構有名なパーティーでな、『ユグドラシル』って名前だったんだ。

 名前の意味はこの世界のどこかにあるとされる世界樹ユグドラシルにたどり着こうって意味でつけたんだ、俺は結構気に入っていたのにパーティーメンバーは苦笑いしてんだよ、ひどいと思わねぇか?派手すぎるだってさ。


 話が逸れたな、そんでもって俺たちも経験を積んで一人前になったんだ。

 S級冒険者になったときはそりゃぁもう嬉しかった、仲間とともに朝まで酒を飲んでそのままぶっ倒れたもんさ、あんときはギルドマスターに怒られたっけか一流の冒険者ならシャンとせいって。


 おっといけないいけない。

 そんで俺たちはちょっと天狗になっちまったんだよ、俺たちならこのダンジョンを踏破できるってな。

 もちろん入念な準備をしたぜ?準備に金貨100枚は使っちまった。

 エルリックの野郎馬車に酒なんか積み込みやがって、全員から呆れられてたぜ。


 そんでもってダンジョンの深層にチャレンジしたってわけさ。

 自分で言うのもなんだが俺たちのパーティーは確かに強かった。

 ちゃんと要所要所を見極めて、危なくなったらすぐに引き返して態勢を立て直してから進む。

 まさに最高の仲間だった。


 そんでもってここの階層のボス、黒龍様に一丁かましてやろうと意気込んでいたわけさ。

 その結果は目の前を見てくれりゃぁ一目瞭然だろう?

 黒龍は俺たちが思っていたより化け物じみていた。

 仲間が何度も何度も攻撃しているってのに片っ端からどんどん再生させやがる。

 まるで終点のない徒競走をやらされている気分だったぜ。


 こりゃやばいって俺たちが煙幕張って扉に戻ろうとした瞬間、そいつの姿が消えたんだ。

 気づいたら扉の前にやつがいたんだ、やばいって逃げようした瞬間黒龍様が炎を吐きやがった。


 そしたら俺たちの前に【重盾兵ファランクス】のゴードンが立ちやがってな、あとは任せたって言って炎の中に消えたんだよ。

 もちろん奴の攻撃は続いていてゴードンが受け止めたとはいえその余波を食らっちまってな、俺は比較的大丈夫だったんだがパーティーの奴らがひどいやけどを負ってしまってな。

 そいつら担いでやっとここの洞窟にたどり着いたわけよ。


 薬草が入った荷物も燃えちまって打つ手なしさ、エルリックの野郎ポケットから酒を出しやがってな、それ飲みながら幸せそうな顔で死んでいきやがったんだよ。

 あいつ酒を飲みながら死ねれば本望とか言っていたけど、本当にこんな最後でよかったのか?できるならギルドの酒場でどんちゃん騒ぎしながらまた途方もない夢を話し合いたかったな。

 そんで【魔術師メイジ】のメーテルも【精霊師ドルイド】のカミュも俺を励ましながら逝っちまった、死ぬのを看取ることがこんだけつらいなんて思わなかった。

 いつも俺は先走っていて周りの心配なんて考えずに我が儘ばっか言っていた。


 ゴードンは無口だったが、きちん仕事をこなすまじめな奴だった。

 エルリックは酒好きで、俺と酒を飲んでよくバカやったがやるときはやる頼れる奴だった。

 メーテルは表舞台には立たずに、いつも裏から俺たちを支えてくれた。

 カミュはおちゃらけていたが、パーティーが落ち込んだ時はいつもあいつが明るくしてくれた。


 あぁ、本題を話そうっていうのにどんどん仲間のことが浮かんできやがる。

 本当にいい仲間だった、そんな当たり前のことに死なれてから初めて気づくなんて。

 笑ってくれよ、俺は大バカ者さ。

 今だって黒龍に立ち向かって仲間の仇を取ろうともせずに、この洞窟に引きこもってこの手紙を書いている。


 なぁ、あんたもし黒龍に立ち向かうってんなら一つ聞いてくれ。

 もし装備が壊れたんなら俺たちの装備を使ってくれ、これでも金にものを言わせて一流の物を揃えたつもりさ。

 その代わりと言っちゃあなんだけどさ、俺たちのことをギルドに伝えておいてくれねぇか?

 『俺たちはここで勇敢に戦った』ってさ、

 それが俺たちがここにいた証なんだ、頼む。


 この手紙は見つからずにこのまま消えていくかもしれなかった。


 俺はお前がこの手紙を幸運にも見つけてくれたことを、心底感謝しているんだぜ。

 だから最後に言わせてくれ、






 『死にゆく俺に幸運を』



 『生きゆくお前に栄光を』


■■■



 骸骨に挟まっていた手紙を読んだ後、その鎧を借りることにした。

 手紙の日付から見て80年前の死体だということが分かった、おそらく彼らを待っていたものもとっくに天寿を全うしただろう。

 つまり彼らは知人に最後までどこにいたのかを伝えられなかったのだ、冒険者にはよくある話だろう、ただこの手紙を読んでそのまま無視するのは目覚めが悪い。


「君たちの装備は確かに使わせてもらうよ」

 手紙を書いていた骸骨の防具を拝借する、黒を基準とした防具で、ところどころに少しばかり銀の装飾がされている、今のところ一番傷がついていない。

 長い年月が経っているのに腐食しないのはそういう付呪エンチャントでもかけてあるからだろうか。

 隣の骸骨からもいくつか装備を拝借した後、改めて自分の状態を確認する。

 体の傷は今のところ問題はない、右目もちゃんと見えている、ただ傷口がいつ化膿するかわからない、早くギルドに戻って適切な治療を受けなければならないだろう。


「黒龍は必ず私が倒す」

 それは冒険者だったもの話しかけたのか、自分に言い聞かせたのかわからない。

「だから安心して眠ってくれ。」

 擬態を解いたリンを肩に乗せながら後ろを振り返らずにそうつぶやいた。







■■■

【Name】 影山 亨かげやま とおる

【Race】 人間

【Sex】 男

【Lv】195

【Hp】 2040

【Mp】 2040

【Sp】 3645

【ATK】 2040

【DEF】 2040

【AGI】 3060

【MATK】 2040

【MDEF】 2040


■■【職業ジョブ】■■

忍者アサシン


■■【装備】■■

【無銘の魔剣】

【無銘の魔剣】

【黒鎧・黒烏】

【闇のマント】


■■【スキル】■■

<特殊エクストラスキル>

【分身】Lv,10

鑑定眼力サーチアイ】Lv,10

【完全耐性】Lv,5

【変装】Lv,10

【双剣術】Lv,8

 【影縫い】Lv,10

 【多段突き】Lv,10

 【投擲】Lv,7

 【三日月燕】Lv,7

 【首切り】Lv,5

 【次元之太刀ジゲンノタチ】Lv,5



<職業ジョブスキル>

【隠密】Lv,10

 【忍び足】Lv,10

 【自爆】Lv,7

 【暗視】Lv,5

 【五感強化】Lv,5


【自己鍛錬】Lv,5


■■【称号】■■

【異世界人】【冒険者】


■■■




■■■

【Name】 リン

【Race】 ゴールデンスライム 《魔物》

【Sex】 なし

【Lv】21

【Hp】 270

【Mp】 270

【Sp】 91600

【ATK】 270

【DEF】 270

【AGI】 500

【MATK】 270

【MDEF】 270


■■【職業ジョブ】■■

【使い魔】


■■【スキル】■■

<特殊エクストラスキル>

剛化チタン】Lv,10

加速ターボ】Lv,10

<一般コモンスキル>

【捕食】Lv,10

【蜘蛛糸】Lv,10

【擬態】Lv,10

【変形】Lv,10


■■【称号】■■

【使い魔】


■■■

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る