第32話 元老院
この国を支えている貴族には細かい序列があり、男爵、子爵、伯爵、公爵の順に偉く、さらに同名の爵位の中でも4等から1等までの計16段階に分かれている。
そのため呼び方は『1等男爵』、『2等伯爵』のように、それらを名前の後ろにつけることが貴族の正式な呼び方となっていた。
王国内にて王城よりやや北へ進んだところに王城の大きさにも負けない建物がある。
ここを拠点としているのは最高貴族意思決定評議会、通称『元老院』と呼ばれる場所である。
元老院の貴族たちは『特等貴族』と呼ばれ、これらの貴族とは関係がない。
彼らの仕事は貴族間におけるトラブルや、貴族の領内で起きた問題に対して元老同士で話し合い、しかるべき対応をとるというものだった。
そのため元老院の決定に対しては1等公爵ですら逆らうことができない。
この発言に口を挟めるのは国王だけとなっているため、絶えず国王と元老院の間には深い溝があるらしい。
しかし、長年の歴史の中で賄賂などによる不正な審議が続き、現在の元老院は腐敗している。
そして夜遅く、元老院の建物の一室の中で十数人の元老たちが集まっていた。
「さて、今回も誰一人欠けることなく始められそうじゃ」
言い出したのはこの中で最も年長である元老、白いひげを撫でながらしわがれた声で話し続ける。
「どうやら計画はうまくいっているようじゃの、勇者たちが『奴』に疑惑の念を持ち始めとる」
「王城内に何人かの草を忍び込ませておいて正解でしたな、こうもいち早く危機を見つけることができるとは」
「奴はまだ気づいておらんだろうよ、騙したつもりが我らに騙されていようことなど」
「騙されているとも知らずに、自分の策がうまくいっていると誤解している滑稽な者を見るほど楽しいことはないからのぅ」
「奴が何か対策案を講じているということはないのか?」
元老が尋ねると奥から1人のメイドが出てくる、勇者である『奴』のお付きのメイドだ。
「ティファよ」
「はい、王城内にて彼を監視しておりましたが変わった行動はありません、彼も私のことを信頼しきっているようで警戒の念は感じ取れませんでした」
話す彼女の表情は昼間の無邪気な笑顔と違って、薄ら笑いという言葉が似あう程の不気味なものだった。
「それは何より、で、こうなれば奴も身動きが取れなくなるのも時間の問題でしょうな」
「然り、其方がわれらに報告してくれたことも大きい、まさか自身の職業を偽っているとはのう」
「はい、部屋を出て行った後、聞き耳を立てていましたら友との会話の中に不穏な言葉が聞こえたため、すぐさま申し上げようと思いました」
「その調子でますます我らに貢献することを願うぞ」
「仰せのままに。」
彼女は一つお辞儀をして奥へと下がっていく。
「まったく愚かな者がいたものだ」
「左様、この国、ましてや我ら元老院に反抗しようとするからこうなるのだ」
「それにこの後の展開を知る身としては、これほど面白い茶番というものもない」
「クシュナー卿の案はとても面白い、まさか勇者を勇者で討伐しようとは」
名を呼ばれた元老は周りの賛辞に手の平でまぁまぁと抑え、顎髭をさすりながら愉悦の笑みで高説し始める。
「いかに奴が愚かであろうとこの国に召喚された勇者であることは変わりない。
それをわれら元老院が処刑すれば愚かな民衆は勇者を殺したと我らを責め立てるでしょう。
ならば奴を悪党に仕立て上げ、正義の勇者たるコトミネ殿に裁かれればいいという訳です。
罪状は従者に対する暴行、あのメイドには他の勇者たちに自身への暴行を泣きながら訴えるよう命令してある、自身の従者を痛めつける『奴』からその従者を助けようとする勇者コトミネ、
さぞかし素晴らしい喜劇になりましょうぞ」
「して、奴の始末を実行する日付はいつに」
「勇者召喚を国民に公式に伝える日にしてはいかがでしょう?
何千人という国民の前で奴を裁き、勇者コトミネ殿の力を大きくみせしめるのです」
「そうしましょう、確か2週間後でしたかな、今から待ち遠しい」
「慌てふためいている『奴』をこの瞳で拝めないことが唯一の不満ですかな」
「しかしあのうるさい国王からとやかく言われませんかな」
「何を言います、この国にたてつく虫をわれらが潰そうというのですぞ。
むしろ感謝してほしいところですな」
元老たちは計画の細かい段取りを決めていく。
彼らはこの国の権力の頂点の一つ、一方『奴』は勇者とはいえただの一介の人間、周りの環境が正反対といってもいい。
だからその計画はおそらくうまくいくのだろう、
本人に聞かれない限りは、
そう、
自分こと、この影山亨に。
◆◆◆
「なるほど、ね…」
天井裏に潜ませてある分身体から彼らの話を聞いて納得する、こちらがスキルの振り分けや
しかし、この現実は心の中でストンと納まる、思えばいくらかおかしいことがいくつもあった。
一例としてはステータスを公開するときのあの水晶だ。
王女の説明ではあの水晶には【鑑定】Lv,2クラスの力があると説明していた、その時の自分の【偽装】の
しかし今考えると明らかにおかしい、仮にも勇者である自分たちに【鑑定】Lv,2程度の魔法具を使うだろうか?
もっと
決定的なのは、苛められていた中村のことだ。
あの時ステータスに乗っていた
しかしそれなら【鑑定】Lv,2クラスの力がある水晶なら中村の
しかし中村は未だに
つまりあの水晶は【鑑定】Lv,1クラスの力、またはただステータスを表示させるだけの道具だったことになる。
「しかし柿本との会話がティファに筒抜けだったとはな」
あの時しっかりと部屋から出たと思っていたのだが、どうやら自分の勘違いだったようだ、考えてもみればこの国の未来の英雄たる勇者たちに仕えさせる従者が普通なわけがない。
…ただこれで自分の進む道も決まった。
始めはクラスの中で目立たずに生活するつもりだったが、こうなってしまっては自分一人では収拾がつかない、クラスメイトに頼ろうにもすでに手遅れだろう。
元老院の話によれば2週間後に民衆たちの前で勇者言峰に裁かれるらしい、この世界に召喚されてちょうど1か月後だ。
こうなれば自分の手でそれに対する策を練らなければならない。
そのためにも必要なのは力だろう、勇者言峰や元老院、ひいてはこの王国に立ち向かえるだけの力が。
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スキル【鑑定】Lv,10と【看破】Lv,10を取得したことにより条件が満たされたため。
【鑑定】Lv,10と【看破】Lv,10が<
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■■■
スキル【偽装】Lv,10を取得したことにより条件が満たされたため。
【偽装】Lv,10が<
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スキル【短剣術】Lv,10を取得したことにより条件が満たされたため。
【短剣術】Lv,10が<
■■■
■■■
スキル【抗体】Lv,10を取得したことにより条件が満たされたため。
【抗体】Lv,10が<
■■■
20万もの
派生したスキルも加えてかなり戦闘の幅が広がったと思う。
「さ、行くか」
今の顔を人に見られたくなかった。
■■■
【Name】
【Race】 人間
【Sex】 男
【Lv】186
【Hp】 1950
【Mp】 1950
【Sp】 2673
【ATK】 1950
【DEF】 1950
【AGI】 2925
【MATK】 1775
【MDEF】 1775
■■【
【
■■【装備】■■
【無銘の魔剣】
【無銘の魔剣】
【鉄の鎧】
【厚手のマント】
■■【スキル】■■
<
【分身】Lv,10
【
【完全耐性】Lv,5 (New)
【変装】Lv,10 (New)
【双剣術】Lv,7 (New)
【影縫い】Lv,10
【多段突き】Lv,10
【投擲】Lv,5
【三日月燕】Lv,5
【首切り】Lv,5
【
<
【隠密】Lv,10
【忍び足】Lv,10
【自爆】Lv,5
【暗視】Lv,5 (New)
【五感強化】Lv,5 (New)
【自己鍛錬】Lv,5
■■【称号】■■
【異世界人】【冒険者】
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