第22話 洞窟の町

 階層ボスを倒すと部屋の奥に扉が出現する。


 ボスを倒さないと先に進めないシステムのようだ。

 ふと後ろを振り返るとスライムがホブゴブリンたちの死体を食べていた、スライムがその透明な体で包むと同時に死体が泡を立てながら消えていく。

 そういえばまたレベルが上がって、イエロースライムからレッドスライムへと進化していた。


「あの小さな体のどこに吸収しているんだろう?」

 改めてスライムの体に興味が湧いた。


■■■

【Name】 (名前なし)

【Race】 レッドスライム (魔物)

【Sex】 なし

【Lv】17 (▲12)

【Hp】 130 (▲100)

【Mp】 130 (▲100)

【Sp】 5800

【ATK】 130 (▲100)

【DEF】 130 (▲100)

【AGI】 130 (▲100)

【MATK】 120 (▲95)

【MDEF】 120 (▲95)


■■【職業ジョブ】■■

【使い魔】


■■【スキル】■■

【捕食】Lv,1

【硬化】Lv,1 (New)


■■【称号】■■


■■■






「これは…すごいな」

 ボス部屋を抜けた先は、大きな空洞といろいろな建物が並ぶ地下都市みたいな場所だった。

 ここはダンジョンの中に存在するセーブポイント、休憩場のようなものだ。 


 休憩場といっても規模は周辺の都市ほどある、住んでいる住民はすべて初めの階層を乗り超えた冒険者達だ。

 冒険者専用の町といても過言ではなく、地上よりもダンジョン関係の店が充実している。

 分身は消して、スライムもマントの中に隠しておくことにした、魔物モンスターを仲間にすることは比較的珍しいことではないが、スライムは冷やかしの的になりそうなので目立たないようにしておく。


 まず向かったのは換金屋、魔物モンスターの魔石やら薬草、鉱石に至るまで様々なものを買い取ってくれる店だ。

 換金屋はいくつかあり、それぞれがしのぎを削っているので買い取り価格は一定の値を保っているとか。

 自分はホブゴブリンのパーティーを何度か全滅させているので多く魔石を持っているが、一気に売ると目立つため各店に小分けにして売る。


 結果金貨2枚ほどの報酬を得た、予想以上だがゴブリンジェネラルの魔石が銀貨70枚で売れたのが大きい。


「さて、今日はどこに泊まろうか」

 懐がいくらか暖かくなったところで宿を探す。

 さすが冒険者専用の町というべきか、宿もまた多く片端から選んでいては日が暮れてしまいそうだ。

 万全を期すために少し高い宿に泊まることにした、街の中心に近く、1日食事付きで銀貨30枚、食事は朝と晩に出されるらしい。


 宿を取った後、自分はある場所へと向かった。

「ここがセーブポイントか」

 今、自分がいるの場所は街の中心にある祭壇のような所。

 頂上には魔法陣のようなものが光輝いており、その中に冒険者が入ると次々と光の粉になって消えていく。

 まるでゲームのような幻想的な光景をしばしば堪能したあと、覚悟を決めて魔方陣に足を踏み入れる。


 一瞬の浮遊感の後、自分はダンジョン入り口に立っていた、一日ぶりの景色だ、日が暮れて辺りは暗くなってきている。

 時間なんてほぼ感じなかった、文字通り瞬間移動したのだろう。

 

「取り敢えず用事を済まさないとな」

 自分は急ぎ足で目的の場所へと急いだ。



◆◆◆



「空いているか?爺さん」

 どこか昔を思わせる鈴の音を聞きながらドアを開ける、ここは魔剣を買った鍛冶屋だ。

「おう、生きとったか」

 カウンターで何かをいじっていた爺さんが返事を返す。


「どうした?この前のレイピアがほしくなったか?」

 あんなキラキラした武器はいらない。

「いや、武器の打ち直しを頼みたい。

それとナイフをいくらか買いたい」

「ん、どれ貸してみぃ」

 爺さんは自分から短剣を2つ受けとると顔をしかめた。

「酷い使い方をしたのう、ここなんか軸から曲がっておる」

 爺さんの言うとおり短剣の各箇所に細かい傷が多々ある、手入れはしていたのだかあの戦闘で無傷とはいかなかった。

「まさか相手の剣戟を正面からうけたのかぇ」

「時々、ね」

「バカモン。

短剣は攻撃を受け流すためのものじゃ、相手の攻撃を受け止めるなら使い捨てナイフでもええじゃろ」

「そうなのか?参考にさせてもらうよ。

どのくらいかかる?」


「金貨一枚、それ以上は負けんぞ?」

 胸を撫で下ろす、なんとか払えそうだ。

「金額の話もあるが、時間の話」

「それなら心配せんでもえぇ、明日の朝には元通りにしとくよ」

 なかなか良い腕の鍛冶屋のようだ、この辺りにも無数の鍛冶屋があったが何故かこの鍛冶屋を選んでしまった。

 あまり人の出入りがなかったのだが、その落ち着いた雰囲気に惹かれたのだろうか?

「それじゃ明日の朝取りに来るよ」

 何本かのナイフを取りながら返事をする。

 ナイフの代金と打ち直しの料金をカウンターの上において、改めて店内の武器を見ておく。

 もしかしたら凄い掘り出し物があるかもしれない。


「あんまり他の武器に目移りすると『この子達』が拗ねてしまうぞ?」

 後ろから爺さんが、剣を見ている自分を見て話しかけてくる。

「そんなホイホイ替えないよ、見ているだけさ」

 なにしろ自分の成長に合わせて姿を変える魔剣だ、自分の中のロマンを追い求める心を舐めないでほしい。


「それでは朝に」

「ちょっと待て」

 外に出ていこうとすると爺さんに呼び止められる。

「これを持ってけ。」

 そう言って渡されたのは鉄製の短剣、預けた魔剣と同じ型をしているがこちらのほうがやや長い。

「冒険者が武器を持ってないなんてカッコつかんだろ、餞別だ」

 もらえるものはありがたく頂こう。

「でも爺さんの商売は大丈夫なのか?」

 さっきも打ち直しの値段負けようとしなかったし。

「心配いらんよ、どこかの坊主が魔剣を金貨6枚で買っていったからの」

「さあ誰のだろうかな?

短剣ありがと、それじゃ」

 腰に差して鍛冶屋を出ると腹の虫が鳴った、そういえばダンジョンに潜ってから食事をとっていなかった。


「宿に戻って夜食を食べるか…」

 そんなことを呟くと腹のあたりがプルプル動く、スライムから抗議の声が上がった。

「さっきあんなにゴブリン達を食べたのに」

 そういうとまた体を震わせて抗議する。

「わかったわかった、スープのジャガイモ分けてあげるから。」

 そういうとおとなしくなった、現金な奴だ。


 夕飯の献立は豪華なもので、グラタンと野菜を盛り合わせたサラダだった。

 チーズの旨みを堪能している自分の傍で、スライムはレタスのような野菜をパリパリといい音を立てながら食べてる。

「スライムに味覚なんてあるのだろうか?」

 この先進化して喋れるようになったとしたら、真っ先に聞いてみよう。

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