第17話 勇者の悩み

 初めての依頼を達成した後、そのまま宿へと帰っていった。


「きついな…」

 備え付けの机に突っ伏して顔を腕に埋めた。

 魔物モンスターとはいえ人型の生物の命を奪った行為に、心が罪悪感を感じている。

 その時は魔物モンスターに意識を集中させていたため気にならなかったが、後になってじわじわ効いてきた。

 今でもゴブリンを殴った時の、骨の折れる感触が指先に染みついている、これは慣れるのに少し時間がかかるだろう。


 少し気分が悪い。


「今は気持ちが沈んでいる場合ではないのに…」

 さらに沈む事態が今、目の前で起きている。

 机に乗っている貨幣の枚数を数えて度に気分が重くなる、お金が残り少ないのだ。

 始めに持っていた金貨10枚は、装備やらアイテムやら宿代やらで金貨1枚と銀貨40枚まで減っている、日本円に直すと14万円ぐらいだろうか? 魔剣に大枚をはたいたことが大きな原因だった。

 中学生の感覚からしたらまだ残っているかもしれないが、1日の宿代を考えると一泊で銀貨10枚各食事に3枚、最低でも銀貨19枚は必要だ、ここの宿にはあと6日分払ってあるが、逆に言えばあと6日後までに何とかしなければならない。

 今回の依頼で獲得した報酬は銀貨5枚、この宿の1食分と少しである、Eランクに上がったので次からの依頼は大分ましな報酬で受けられると思うが、それを加味しても足りないことが予想される。


「だとしたら、強くなってさらに高ランクの依頼を受けるしかないのだが」

 冒険者パーティを鑑定して分かったが、自分のステータスは同Lvレベルの異世界人に比べて結構高い方だ、これを使えばある程度まで強くなれる。

 だが短期間でいきなりそれだけの実力をつければ間違いなくギルドで注目される、それだけは避けたい。

 それについては出来るだけ策を練っていくとして、まずは今、自分に何ができるかだ。


「ステータス確認していなかった」

 ゴブリンとの戦闘中、体がどんどん軽くなっていく感覚があった、あれはレベルアップの瞬間なのだろう。

 群れを掃討したのでかなり上がっていると思う、そう考えると少しだけステータスを見ることが楽しくなってきた。

「いつも、この興奮だけは消せないな」

 どれだけ上がっているだろうか、出来ればうれしい結果が来てほしい、そんな宝箱を開ける気持ちを込めてステータスを開いた。。


■■■

【Name】 影山 亨かげやま とおる

【Race】 人間

【Sex】 男

【Lv】7 (▲6)

【Hp】 160 (▲60)

【Mp】 160 (▲60)

【Sp】 220

【ATK】 160 (▲60)

【DEF】 160 (▲60)

【AGI】 240 (▲90)

【MATK】 144 (▲54)

【MDEF】 144 (▲54)


■■【職業ジョブ】■■

忍者アサシン


■■【装備】■■

【無銘の魔剣】

【無銘の魔剣】


■■【スキル】■■

<特殊エクストラスキル>

【分身】Lv,1

<職業ジョブスキル>

【偽装】Lv,2

【鑑定】Lv,1

【看破】Lv,1

【隠密】Lv,1


■■【称号】■■

【異世界人】【冒険者】


■■■


「おぉ…想像以上だ」

 心のどこかでてっきり3か4ぐらいだろうと傍観していたが、いきなり6も上がっていた。

 Spスキルポイントがかなり入ったことに心が躍る、ゴブリンは大体20匹ぐらいいたので一匹につきSpスキルポイントは10入ったことになる。

 結構おいしいな、しばらくあんな激戦は御免こうむるが。

 前は【偽装】につぎ込んでしまったので窮屈な思いをしたが、今は召喚されたときの2倍のポイントがある、かなり余裕をもって決められそうだ。


 手始めにやることは特殊エクストラスキルである【分身】のLvを上げることだ、早速 Spスキルポイント100使ってLv,2にする。

 これで王城にいる分身体以外にも、もう一体分身体を出せることになる。


「…待てよ?自分と分身体で2倍働けば金銭問題は解決しないか?」

 一瞬考えるがすぐに首を振って取り消す、今一人でも周りのことに手一杯だというのにこれ以上人数が増えたところで手間がかかるだけだ。

 あと、名前を考えるのが本当にきつい。


「今は取得するスキルだ」

 残りのSpスキルポイントは120、まだまだ振ることはできるが考えもなしに行動できる量ではない、一層慎重に熟考を重ねるべきだろう。


「取得スキル一覧から新しく取っておく方がいいか」

 今一度とれるスキルを確認する。


■■取得スキル一覧■■


【二重息吹】Lv,1

特殊な呼吸法で疲れにくくするスキル。

魔法などで使用するMpが減る。

Sp-10


【毒針】Lv,1

毒のある針を敵に発射する、一定確率で状態異常;毒になる。

Sp-20


【忍び足】Lv,1

足音を立てずに歩けるスキル。

【隠密】を強化する。

Sp-10


【短剣術】Lv,1

短剣を扱うことができる。

Sp-30


【自己鍛錬】Lv,1

忍者アサシンが己を磨き上げるスキル。

一定の鍛錬を積むたびにSpが入る。

Sp-50

■■■


 次に取るべきは戦闘系のスキルだろう、今回のように相手がスキルを持っていなかったため大人数相手に無双することができたが、そんな幸運がいつまで続くかわからない。

 迷わず【短剣術】を取得する。


■■■

スキル【短剣術】Lv,1を取得したことにより条件が満たされたため。

新しく【影縫い】Lv,1を取得できるようになりました。

■■■


 【短剣術】をLv,2にするにはSpスキルポイントが120必要らしい。

 残りSpスキルポイントは90、考えた結果 Spスキルポイント10の【忍び足】と【影縫い】を取り、残りは取っておくことに決まった。


 これで明日の戦いが今日より楽になるかは分からないが、少なくともできる行動の選択肢は増やすことができた。


「さて」

 自分自身の整備が終われば次は、周りの整備だ。

 床にバスタオルサイズの毛布を敷いた後、その上に座って短剣の刃を研いだ。

 さすがに20体余のゴブリンの脂を吸い、無数の剣戟を受け止めたその身は無事ではなく小さな刃こぼれが無数にできていた。

 それらを鍛冶屋のおやじに教えてもらった通りに、備え付けの砥石にかけて一つ一つ消していく。

 この子が先の戦いで自分の命を守ってくれたのだ、そう思えば腰に収まる小さな刃物がとても頼もしく思えてきた。





■■■

【Name】 影山 亨かげやま とおる

【Race】 人間

【Sex】 男

【Lv】7

【Hp】 160

【Mp】 160

【Sp】 70

【ATK】 160

【DEF】 160

【AGI】 240

【MATK】 144

【MDEF】 144


■■【職業ジョブ】■■

忍者アサシン


■■【装備】■■

【無銘の魔剣】

【無銘の魔剣】


■■【スキル】■■

<特殊エクストラスキル>

【分身】Lv,2 (Up)

<職業ジョブスキル>

【偽装】Lv,2

【鑑定】Lv,1

【看破】Lv,1

【隠密】Lv,1

 【忍び足】Lv,1 (New)


【短剣術】Lv,1 (New)

 【影縫い】Lv,1 (New)


■■【称号】■■

【異世界人】【冒険者】


■■■

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