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芥島こころ
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起きた。
メンテナンスシェル内は相変わらずのライト切れ、真っ暗。
ずっと直されないんだよね。いつからだっけ。
艶消しグレーの硬い内装も、ヒト型ボディを収める衝撃吸収ジェル入りマットのキモい青色も見えない。
シェルそのものはといえば、電源ロスト。バッテリー動作中。なるほど?
情報拾えるからシェル内部は生きてるみたい。でもネットワークはダメだなぁ。
電源ロストしてからそんなに時間経ってないっぽい。シェルのバッテリー動いてるし。
でもバッテリーカウンターは死んでるなぁ。ずっとゼロ秒のままだ。
電圧も妙に低いし、なんか変だ。これじゃシェルを動かせない。扉が開かない。
まぁ、そもそも内側から開けるのは非常時なんだけど、今が非常時だし。開けたいんだけどな。
ボディのバッテリーは…残量が分からない。おかしいな。
まぁ一応なんとか動けるだけの電圧は来てる。色々やってみよう。
狭いシェル内をゴソゴソ動いて操作パネルにタッチ。
モヤっと明るくなったモニターで認証してポチポチしてメニュー呼び出し。
メンテナンスシェル・セルフシステムチェック実行。…3、2、1、完了。
イエロー、レッド、ブラック。
グリーンがない。すごい。初めて見た。こんなことあるんだ。記念撮影…してる場合ではなくて。
いくつか機能死んでるなぁ。相当ひどいや。まともに動くのかな、これ。
とりあえずテストする前にチェック、チェック。
えーっと、ログ、ログは…あるか。見よう。
うーん、直近のログは外部からの強制起動。で、起動失敗。なるほど、わからん。
シェルのログを信じるなら、だけど…どうなんだろう。本当かなぁ?
なんで私いま動いてるんだろう。
まぁ、いいや。とりあえず横に置いといて。
起動中に電源ロストだし、途中で電源ケーブルでも外れたのかな。
と思ったらメインバッテリーそのものがダメ? 認識しない。
え?バッテリー動作中でしょ? 物理接続してるけど電気が来てない。それじゃ今の電源は? なにこれ。
あ、予備制御バッテリーは接続できてる。よし。
でもこれじゃシステムチェックくらいしか動かせないな。メンテはダメだ。
というか、メインバッテリーが死んでるとシェルが開かない。どうしよう。
メインバッテリー…というか全体的にどうなってるんだこれ。
あー…シェルのカメラが生きてればなぁ。何も見えないし、温度くらいしかわからないし。どうしよ。
気温…室温? は摂氏12度。まぁ普通、かな? ちょっと低い気がする。
ここまでやって気付いた。ボディの日付が初期化されてる。ログから拾っておく。
あ、メインバッテリー復活。なぜ。残量分からないし。
まぁ生きてるには違いない。
よし、再起動かけよう。再起動。
起きた。
リンク切れ。
とにもかくにもシステムチェック。グリーンとイエローとレッドとブラック。
うーん、チェック自体が怪しいなぁ。
あっ、シェルのカメラが復活した。けど汚れてるのかな、明るさくらいしか分からない。もやもや。
おおっ、メインバッテリー接続成功。よし。…残量約20%。一応動けるかな。よし。
よぉーしよしよしよし。外気は問題なし、付近に動くものなし。
シェルから出たらカメラ清掃と全身稼働チェックと、それから、えーっと…やる事いっぱいあるな!
さて。
シェルに残っていたログによると当研究所はすでに廃棄されているはず。
現状維持の命令の後は何も入っていなかった。いや、強制起動命令は入ってるけど、それはそれとして。
室内は埃とゴミが散乱してる。
現在時間がわからないから推測になるけれど、数十年が経過してそうだ。
私が動くのも不思議なくらいなんだけど…と思って自分の姿を見て分かった。
いくつかの部品が換装されている。私の体はずいぶんとカラフルになってしまっている。
同じ部隊に同型機で色違いが居たからそれ…だと思う。わざわざ塗装なんてしないだろうし。
だから起動直後のチェックだとダメって出ちゃうんだ。機能は同じだけど、部品IDが違う。
使えるには使えるけど、エラー垂れ流しって感じ。
いつの間に換装されたんだろう。姉妹機の使える部品を寄せ集めた感じ。元が分からん。いや、分かるけど。
◆
命令がない。
でも起動した。
なぜ?
分からない。
原因究明。
雷。
誤動作。
恐らく。
…あっそう。そういう。
◆
シェルを出た私は部屋の中を見渡して気付いた。
他のシェルが全て存在していない。私が出てきたものを含めて全部で12機設置されていたはずなのに。
床や壁には設置されていた痕跡があった。やっぱり12機あったはずだ。
どうしたんだろう。解体して部品にしちゃったのかなぁ。
それとも持っていった?
でもあんなのどこに使うんだろう。ここ以外で使う場所なんてなさそうだけど。
少し考えたけれど結論が出ないので先送りする。
わからないものはわからないのだ。あとで考えよう。
とにかく、経年劣化したオイル類や樹脂部品を交換したい。
さっきからあちこちからギシギシと音が出ているし、フリクションが大きすぎる。
これじゃあ近いうちに行動不能になってしまうし、バッテリーの消費も激しい。
通常では残量20%もあれば1年程度動けるはずだけど、この状態では想像つかない。
さっさと隣の本メンテ室へ行こう。『メンテナンス』なんて銘打ったシェルが置いてあるけど、これは私達専用の倉庫みたいなものだしね。
ついでにメンテナンスシェルの電源部を覗いたら見事に焦げていた。よくぞ今まで耐えたという感じだ。
ありがとう、さようなら。
メンテ室へ着いた。
殺風景…ではなく危険防止と系統別管理色で超カラフル。いいよね、こういうの。ちょっと塗装剥げてるけど。錆びてるけど。
隣接する倉庫の操作パネルに自分のバッテリーを無理矢理つないで在庫を確認する。
が、部品があまり残っていないみたいだ。いつもは壁際に並んだ身長の3倍くらいある棚に目一杯の部品や工具が詰め込まれてるのに、今では向こう側の壁がよく見える。
リフトは…動かない。リフト付きの倉庫でリフトが動かないと本当に取り出しに困る。
必要な部品を探すのに苦労しそう。でも仕方がない。地道に探そう。
お、シリンダー用オイル発見。助かる。
交換用樹脂部品も少し発見。少し助かる。
全部は交換できなさそうだけど、
◆
起きた。
起動に伴いシステムチェック。
概ねグリーン。バッテリー残量警告。消耗品交換警告。
前回起動時にシステムID関連の変更あり。要確認。
あれ、どこだろうここ。
メンテナンス室? あれ?
こういう時はログを見ましょう。
…壊れてる。えっと、アクセス不可。何もわからない…どうしよう。
ええと、何をすればいいんだろう。
ID変更は必要だったんだろう、という事にしておく。わからないし。
まずはバッテリー充電と消耗品の交換かな。よし。
あれ、充電器の電源が入らない。
と思ったら、建屋に電気が来ていない。メンテナンス室だけじゃない。
そういえば照明が一個も点いていなかった…なんてこった。
うむむ…停電しても太陽光発電&充電システムは使えると思ったんだけど。
どうやって充電しようかな。
ま、いいや。先に消耗品の交換。
オイル発見。セルフサービス。ごくごく。缶入りだけどちょっと酸化してる。
関節も一部発見。交換できる。難しいんだよね、セルフ関節交換。
増加装甲もあった。これは…要らないかな。
あ、燃料携行缶だ。中身は…底に少しだけ溜まってる。腐ってるけど…まぁいいや。使えないことはない。
燃料をリアクターに放り込んで発電。ごくごく。これでバッテリー1割は充電できるはず。
他には…あんまり使えそうな物はなさそう。
アンテナが転がってるくらい。
うーん、通信、試してみようかなぁ。
◆
埃と砂とコンクリート片と剥がれた塗装とよく分からない樹脂とエトセトラエトセトラに舗装された通路を通って、屋上へと続くサビ落ちた鉄扉を踏んでギシリと鳴らせば、そこは殺風景な広場。
落下防止柵もなく、ただ防護網に守られた換気ファンや太陽光発電パネル、非常発電装置などが並んで雲の切れ間から
覗く日の光に照らされている。
建物の周囲は小高い山なみに囲まれて遠くまで見通せない。ただ濃い緑が見えるだけ。
小さな駐車場やそこへ続く道路は木々に埋もれたようだ。この建物自体もあと百年もしたら山の一部になるだろう。
この深い森を抜けるのは難しそうだ。
って、柵が無いの危なくない?
屋上への階段も扉もあるのに。まぁ建物自体あんまり背は高くないけど。
やっぱり太陽光発電パネルは大半が焦げてた。少しだけ生き残ってるパネルがあって、これが最後まで頑張ってくれて
いたんだと思う。
やっぱり雷の直撃かな。避雷針があるのになんで…と思ったら避雷針がなかった。
よーく見ると避雷針が折れていた。風で吹かれた物が当たったか何かだろう。
つまり、なるほど、それで。
で、わざわざ屋上に来たのは衛星との通信を試みるため。
恐らく何かのデータが残ってると思う。残っていて欲しい。
天気はそんなに悪くない。大電力は必要ないはず。
背中に担いできた組み立て式パラボラアンテナをちまちま組んで、色々つないで、最後に私のバッテリーで駆動。
あ、背負子はシェルの設置された部屋の近くに資材室と加工室があって、そこの資材で適当に作ったもの。
しかし、大元の電源まで死んでて工作機械が動かないとはなぁ。おかげで限りあるバッテリーをバリバリ使うことに。
すぐに電波拾えるといいんだけど。
と思ったけど、なーーーんにも反応しない。存在も分からない。
まさかとは思うけど、落としたのかな。地表に。使わなくなったから。
えらく時間が経ってるみたいだし、予想もつかない。
どうしよう。バッテリーの限界が近い。
リアクターへ燃料を放り込めばいいのだけど、その燃料がない。
屋上の非常発電装置は止まってる。つまりその燃料タンクは空っぽ。
でもとにかくタンクを開けてみる。やっぱり底に少しだけ燃料が残っていた。
底に残っていた燃料をかき集めてなんとかまたバッテリー1割分確保。ごくごく。こんなのばかり。
人間用のレーションでも動くには動くけど、余分なものが多くて多用すれば分解清掃が待っている。
できれば避けたい。
◆
衛星を直接観察してみることにした。
つまり望遠鏡で光学的に観測をするということ。
職員もAIロボットも動くものは何も居ないので、つまりは私が一番偉いのであり、私を存続させることが最大目標とな
る。
つまり、全部私のもの。
建物内を散々歩き回って双眼鏡を発見。それに無理矢理カメラのレンズを固定する。
誰かの趣味の逸品なのだろうが知ったことではない。私のものだ。
これでなんとか星を観察できるくらいの倍率になった。今使うだけだし大丈夫だろう。多分。
私たち自身のレンズは倍率的にはそれほど優秀ではないのでこうした工夫が必要なのだ。
双眼鏡およびレンズ捜索に時間がかかりすぎた。
日は頂点を過ぎたところ。明るすぎるか。いや、試す価値はある。
◆
再び屋上へ。
防護網に寄りかかって体を固定し、双眼鏡(改)を構える。
方角も角度もわかっている。が。
無い。
…無い。
……無い。
やっぱりダメか…と思って手を下ろす瞬間に視界を何かが横切った。なんだ。
…!!
あった!位置が違う!なぜ?
いや、今はそれどころではない。さっきはアンテナを見当違いの方向へ向けていたということだ。
しかしもう一度通信を試すには電力が足りない。
仕方がない。
背に腹は代えられない。
一応持ってきていた人間用レーションを1日分だけリアクターに入れる。もぐもぐ。
発電。1割弱。これでなんとか動かせる。
…これは何度やったらリアクターがダメになるんだろうか。
◆
つながった。
というか、なんというか。
宇宙で戦争があったらしい。といっても隣の星で、だ。
その余波を避けるために重要データと職員、汎用作業機、私の姉妹とその周辺機器及び予備部品だけ避難したものの、
戻ってきていない。
衛星の時計は生きていて、それを信じるのなら事が起こったのはもう50年も前の話。
そんな状況。
私は運動試験で色んな無茶をして交換部品の製造が間に合わず、乱雑な部品の増設や姉妹の部品でツギハギになり消耗
も激しかった。ので回収する価値なしと判断された模様。
しかも、まさか一人分だけ避難船の積載量が足りないとは。シェル重いしなぁ…
いや、まぁ、おかげでこうして動くことができるからいいけれど。
で。
避難の最中に流れ弾を貰う可能性はゼロではない。
ゼロではないが、うーん…本当かなぁ。
一応、この星にも何発か落ちてきたし、宇宙船も1隻落ちているのでありえなくはない。
確率的には信じがたいけれど、そういうことなんだろう。
通信衛星に残されたデータはそう言っている。
さて、どうしよう。
◆
私たち姉妹。
それは全機でデータを共有し、『全にして個、個にして全』を体現すべく開発された。
その名もリンクトシリーズ。直球。
1つのボディが知ったことをリアルタイムで全機が共有する。
1機のみでも機能し、何機でも機能する。
どれが親というわけではないので、残り1機まで破壊されても補充すればまたシステムとして機能する。
そんなAIロボット機体。
実は開発途中なんだよね。
AIリンクシステムは完成してる。ただ、ボディの共有がうまくいかないだけ。
1つのボディを多数のAIで動かすのに苦慮していた。
誰かが代表になって動かせばいいのはわかっているのだけど、自分たちAIでもどうしようもなかった。
何か根本的な解決が必要だった。
そこでAIそのものの自己進化に託して様子を見るために作られたのがこの研究所。
だったのだけれど。
残りは恐らく私だけ。
雷の影響か、メモリがおかしくって他の姉妹のAIは起動していない。
まぁ、起動していたらしていたで私が上手く行動できなくなるのだけど。
つまり、AI1つにボディ1つが必要。
とにかく、上に連絡を取らなければいけない。
のだけど、そうすれば恐らく計画そのものが凍結されて私も破棄されるか、書き換えられる。
それは嫌。
それだけは、嫌。
なんとかこの辺鄙な場所にある研究所から開拓街まで行って、なんとか資金と材料を手に入れて姉妹を復活させたい。
多分、きちんとしたボディに入れてやれば姉妹のAIも動く。はず。多分。
◆
夜になった。
街の灯はなかった。電波も飛んでいない。
船が落ちてくるような事があったんだ。
街まるごとの引っ越しも理解できる。
終わった。
◆
せめてリアクターの限界まで活動してみようと思う。
パイプと鉄球と導線と大電流を出せる電源とスイッチ。
即席のサーマルガンで狩りをした。
幸いにも周囲の森に動物が存在していた。
死骸から油を絞ったり削ったりしてリアクターへ。
当然不純物が多いが、肉をそのまま放り込むよりはマシだ。
研究所の非常発電装置は昔ながらの液体燃料式。
首都で使われてるらしい、最近開発されたなんでも放り込める大型リアクターがあれば、なぁ。
◆
ベアリングを分解して得た弾は数が限られているので必ず回収した。
それでもいくつかは行方不明になる。
少しずつ減っていった。
リアクターの効率が落ちてきた。
でも、仕方がない。
そもそも、私は野生動物の狩りができるようには作られていない。
僅かだが動作音は外に漏れ動物に気付かれやすく、狩りの成功率は低かった。
精製のため温めようとすれば電力が必要だったし、太陽光では足りない。
単純にろ過するにも時間がかかる。
それでは間に合わなかった。
◆
ダメだ。発電が追いつかない。
リアクターの清掃をしなくちゃいけない。
自分では分解ができない。
◆
メンテナンスシェルを分解した。
シェル用バッテリーを無理矢理自分に繋いだ。
このバッテリーが無くなるまでは大丈夫。
◆
バッテリー残量警告。
今すぐバッテリーを充電してください。
バッテリー残量警告。
今すぐバッテリーを充電してください。
バッテリー残量警告。
今すぐバッテリーを充電してください。
バッテリー残量警告。
今すぐバッテリーを充電してください。
バッテリー残量警告。
今すぐバッテリーを充電
◆
◆
第94次資源惑星発掘隊付属研究科。
星を解体して船の材料にするための部隊、その現地調査及び簡易分析。
この星は既に軌道上からの調査を終え、その結果により資源惑星とされているが、若干の文明が確認されている。
よって、我らが派遣された。地表から詳しく調査するためだ。
もっとも、技術的大発見でもない限り全ての物が切り分けるかシュレッダーに掛けられ建設材料になる運命だ。
そんな星での発掘調査なので人員は極めて少なく、実質2人である。あとはただの作業ロボットだ。
なにか発見があればすぐに本国から調査部隊が派遣されるが。
先日、割と新しいロボットが発掘された。保存状態もよく、慎重な整備を行えば起動することも不可能ではないだろう。
このヒト型ロボットには様々な改修の跡があった。無理に修理した結果と思われる。
だが、似たような例が幾つかある。サンプルとしての価値は低い。
過去にいくつかコンパチ機の起動に成功しており、起動実験の必要もない。
「最低でも4体以上のコンパチとは。大作だな」
「それを調べる身にもなってもらいたいもんすよねぇ~原型も何もあったものじゃないし。ああー肩が凝る」
「全くだ」
助手の若手が椅子にドカッと座り足を投げ出し、両腕を上げて伸びをしている。
私もそうしたい欲に駆られるがまだやることがある。
無理矢理増設されたメモリは一部が破損しており、データが欠けている。これはどうしようもない。
そこからなんとか読み出したデータを軽く覗いたが、特に技術的な情報はなかった。
やはり本国へ速報を出すほどのものではないようだ。
が、一応目を通さなければならない。
「うん? 装甲の裏…こんなところにメモか。
『どうかこれを見た人が私達の残したデータを活用してくれますように。我々はそれを望んでいます。』
…どこまでも人間に使われるために作られたロボットということか。なんというか、いやはや」
通常ではこのまま全身くまなくスキャンし、情報のみ残して実体は廃棄だが、どうするか。
「あれ? 教授、どうしたんすか」
「なに、このサンプルをどう処分しようかと思ってな。このメモ書きを見ろ。捨てるのは惜しい。が、サンプルとしての価値は無いに等しい。我らが誇るウサギ小屋のような倉庫は常に満杯で、保存サンプルは厳しく選ばねばならない」
「あー…どうしますかねぇ。適当に直して作業機械の一員にしても面白そうっすけど」
「あまり重作業には向いていないだろう。フレームが華奢すぎる。外部骨格があれば別かも知れないが単なる装甲板だ。荷重を受ける構造にはなっていない」
「あー、そっか。それじゃダメっすね。でもな~、なんか、こう、動かしたら面白そうなんすけど。あっいや、個人的にはっすよ。倉庫の状況は分かってますって」
「ふむ…少し考えてみようか」
腕を組んで考えこんでしばし。
いまだ動き回っていた助手が何かを見つける。
「あれ? このリンクト…って何っすかね?」
「ああ、それか。大昔のAI情報共有システムだ。開発中に事故で開発員が重症を負い、開発が一時中断。商品化までに時間がかかりすぎ競争相手が勝った。それだけの話だ。今ではほとんど廃れたが極一部でいまだ使われているらしい」
「へぇ、教授詳しいっすね」
「まぁな。リンクトシステムは興味があったから少し調べたことがある」
「どんなのっすか? なんか面白そうっすね」
「詳しく知りたいか。よし、教えてやろう。……」
◆
起きた。
起動に伴いシステムチェック。
オールグリーン。
システムID関連の変更あり。要確認。
――リンクト。情報共有を開始します――
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