Ending

Game Over/ Birth

 音が、聞こえた気がした。

 

 鈴の鳴るような、音色。

 

 それが「声」であると、一拍置いて気づく。

 重たい瞼をこじ開けると、痛みを感じるほどに眩しい光が目を焼いて、思わず手で目を覆おうとしたけれど、手が全く動かなかった。その代わり、そっと、僕のものではない手が僕の目を軽く覆ってくれる。

 その、柔らかな暗がりの向こう側から、声が聞こえる。

「はじめまして、ユークリッド」

 はじめまして、だなんて。その言葉のくすぐったさに、思わず笑ってしまいたくなったし、きっと、笑っていたのだと思う。僕の手をしっかりと握る、あなたの温もりを感じながら。

 二人分の笑い声が、ちいさく響いて。それから、僕も、口を開く。

 喉はからからで、唇は震えてしまって、上手くしゃべれるかもわからなかったけれど――。

 

「はじめまして。やっと会えましたね、」

 

 

[Goodbye, Mr. Wuthering Heights: Happily ever after.]

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

XXXの仮想化輪廻 青波零也 @aonami

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ