第12話 初キス

 そんなで 夏休みが終わり、2学期。

クラスの Sって子が、夏休みの間 彼氏が出来て

どうやら 初体験をしたとか、それを 自慢げに話してるらしい

って事で、私のグループの子達は

「気に入らない」と言い出して、ドンドンと 倦厭する様になっていた。


 今も 昔も変わらず、いじめ というのは

何がきっかけで 起こるかわからない。そして それが

流行りとなってしまうのも 怖い事だけど

当時 やや流行りな傾向もあった、これは 現実あった事だから

正直に書きます。


 クラスの子達の 視線をよそに、彼氏が 教室までやってきて

イチャついていたり、帰りのバスの中でも ベタベタしてるとの事。

 いよいよ Sの事が、目障りになってきた 私達は「ヤキをいれてやろう」

って事になった。他人事の様に 書いているけど、言いだしっぺは 私だ。


 Sの彼氏の事を 親友のsちゃんも好きだったからだ。

それを 知ってて、Sは そんな様子を 見せつける様にしてるのが

腹立たしかった。

 ただの 妬みだけど。クラスの 殆どの子が、うんざりしてた。


 『今日の放課後 Sにヤキ入れようと思う、参加の人は 残って』と

授業中に 手紙を回して、その放課後。クラスの 大半の子が残って

皆で 椅子で輪を作って、その中に Sを呼び入れ、手こそ 出さないけど

文句の押収。寄ってたかって Sを責め続けた。


 もちろん Sは泣いて、sちゃんに 詫びを入れさせて

挙げ句に 彼氏と別れろとまで、命令したりした。

 散々 Sを、いじめて 泣かせた後、解散して。帰り道 sちゃんを 

グループの子で 慰めて、私は やや興奮気味で、帰宅した。


 帰って しばらくして、母が「電話や、男の人」と、私を 呼んだ。

『きたか…』っと 私は思った。

今日の事は、私が 言い出した事だから、きっと Sの彼氏が、怒って

文句言ってくるんじゃないかと思っていたから。


 気を鎮めて 受話器を取り『もしもし?』と

「わかるか?」

『えぇ わかります』

「ホントに わかるんか?」

『〇〇先輩でしょ』

「はっ?」

『〇〇先輩でしょ、用件は 何ですか?』

と、白々しく 尋ねた。


 すると 全く呆れた声で

「Tやけど?」 と。

『えっ?』 『Tって、Tさん??』

「そうやけど」


 えーーーーー!!

電話の相手は あのバイト先の、Tさん だった。


 何という事…

慌てて『実は 〇〇先輩から、電話がある様に 聞いていて』とか

適当な 嘘を言って、ごまかした。


『どうして 電話番号わかったんですか?』

「住所書いてあったやろ 電話帳で」

あぁ~ そういう事か。



 もう すっかり諦めていたし。

てっきり 手紙が届くもんだと思っていたから

電話だなんて 驚いてしまって、その後は 何を話したんだか

よく覚えてないけど

「今度 学校迎えにいくわ」という事になって、天にも舞上がる 気持ち。

ふわふわした気分で、電話を切り、ひとしきり 嬉しさを噛みしめた。


 全く Sの事など、忘れてしまって。いい気持ちで 眠りに就いた。


 その後 Sの彼氏から、何か言われる事もなかったし。

Sは 大人しくなったから、もう問題視される事も 

無くなった様に思う。

 Tさんの事で 頭が一杯になって、S関連の事は よく覚えてない。



ーーーーー



 Tさんは 5つ年上の21歳。バイト先で 知り合った

ジャッキー・チェン似で、リーゼントを崩した髪が 

かっこいい、ヤンキーっぽい人。


 電話で 約束した日、学校帰り 新車の白いセドリック

通称Y30で 迎えに来てくれていました。中は ドキンで

靴を脱いで 乗らないとイケナイw やはりヤンキーなのは 

合ってたみたい。

 すごい!夢の様だぁ~♪ 浮かれてしまって。


 夕食を 食べに連れて行ってくれて、軽くドライブして

家に送ってくれた。

 それから ほとんど毎日の様に、電話をして 長々と

取りとめもない話をした。

 次に 迎えに来てもらえた日は、グループの皆も 

見たいと言って、学校前のバス停へ。

 白い車体の窓から 顔を出して、「おぅ」と 呼ばれて

皆が 見ている前で、車に乗り込む 優越感、最高だった。

その日も 夕食を食べて、ドライブして送ってもらってと、ほぼ 同じコース。

それで 十分、私は 満足だし、嬉しくて うれしくて、堪らなかった。


 次の時も 前回同様、皆に 見送られて、車に乗り、夕食と ドライブ。

だけど 家の近くに来て、前とは 違って、少し離れた 田んぼの脇で

車を停めた。

 「あぁ~あ」っと 声を上げて、シートを倒して 寝転ばったんです。

少し お話してくれるんだ。と思って、Tさんの方へ 体を向けて

何か 話したんだと思う。

 会話が 途切れた時、Tさんが ガバっと起き上がり

私の首の後ろに 手を回してきて、キスされた。

驚く余裕もなく、そのまま ガタン!と 助手席のシートが 

倒され、Tさんが のしかかってきた。それと 同時に

Tさんの右手は 私の胸をまさぐり、激しいディープキス。

もう制服の裾から、手を入れようとしてる。


 キスも 初めてで びっくりなのに

えーーー?!いきなり こんな?

どう対応したら 良いのか、頭の中は パニック!

 そんな事は お構いなしで、Tさんは 制服脇のファスナーを

開けようとしてる。セーラーカラーの胸当てを 外して

そこに 顔を埋め始めていて…


 え?えっ?えー?!

私 されちゃう?されちゃうの?


 訳がわからないまま 唇が空いて、出た言葉は

『もう いい!』『もう いいですから』と しきりに言ってた。


 ふと 我に返ったかで、Tさんが 手を止めて「何が いいの?」

と尋ねてきた。

 自分でも訳がわからないまま、つぶやいていた言葉だったし

やっと 言えるのが「いいの!」しか言えず、半泣き状態。


 そうしたら 何だか、興ざめしたんでしょうね。

オズオズと 身体を戻して、すごく冷たい感じで 

シートを戻して、エンジンを掛け、黙って 車を出した。

 私は 乱れた制服を直して、家のすぐ傍で 停めてくれたので

『ごめんなさい…』

と言って、車を降りた。


 急な事だったから 家に帰ってからも、動揺したまま 

興奮して、眠れなかった。


 それから Tさんは、パーソナル無線の機械を 

手に入れたと言って、それに 夢中になったらしく…

それが 口実だったのか、電話をしても

出てくれなくなり、大分 頑張ったけど、音沙汰なく 終わった。


 






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