思春期②(高校生時代)

第11話 初めてのバイト

 高校は 勉強の出来ない 私に、担任の先生が 

「頼むから 数学と国語だけ、勉強してくれ」と言われて

何とか 推薦入学の形で、合格させてもらえて 入れたのが

衛生看護科です。


 姉と同じ高校、同じ科です。姉は 小さい頃、病気を患って

看護婦さんに 看てもらった経験から、看護婦さんに 憧れて

自分で 希望して、看護の道へ 進んだんです。


 母は 私に

「あんたは 頭悪いんだから、手に 職をつけなさい」

「人に迷惑ばかりかけるんやから 一倍 人の為になる事をせんとダメや」

「お姉ちゃんは 看護婦さんになるって、看護婦さんは 善い仕事や」

と言っていて、私が 衛生看護科に入れた事を、喜んでいた。


 私自身は とりあえず、高校へ進学できたから 良かったと思った。

姉は 3つ上なので、前年に 卒業していて

県外の専門学校へ 進学していました。



ーーーーー


 高1の 夏休み。

近所の 小学校からの幼馴染の、Kちゃんから 誘われて、バイトをする事に。

Kちゃんとは 高校は、別になったけど ほんのり付き合いはあった。


 バイト先は 精肉工場。

精製された食肉を パックに詰める仕事。パートのおばちゃん達に 

混ざって もくもくと 作業をします。バイトは Kちゃんと私の2人。


 夏だというのに 構内は、冷え冷え とても広くて

おおまかに 3つのレーンになっていて、手前のレーンが 

私達が作業する、パック詰めのレーン。

真ん中 と 奥のレーンでは、男性作業員が 大きな肉の塊を

切り分けたり、筋を取りしたり。そのもっと 奥には、でっかい冷凍庫。


 白衣を着用して 三角巾を被り・マスクをして、白い長靴を履き

長い防水前掛け。誰が 誰なんだか、わからない姿で 作業しています。


 男性作業員は 大抵、帽子を 被っているのですが

一人 タオルをハチマキ状にして巻いているだけの人がいます。

いつも 奥のレーンで、仕事をしているけど

こっちまで 聞こえる程、低くて よく通る声。

 何となく ジャッキー・チェンに似た感じの人で

休憩時間は 事務所の椅子を数個 集めて、その上で 寝ている。

指に 大きな、オニキスの指輪をしていて、少しリーゼントっぽい髪型で

ヤンキーな雰囲気が、とってもする人。


 そこまで 観察してしまう位、その人の事が 気になって、気になって。

その人の 名前は、Tさん。

 けど 高校生なんて、きっと 相手にしてくれないだろうなぁ っと思って

いる間に、2週間程の バイト期間が終わってしまいました。


 終わってしまうと、Tさんには 会えない訳で。

会えなくなったら 益々、想いが募ってしまって。

 月終わりに バイト代がもらえるとの事で、喜び勇んで 工場へ。

休み時間では無かったから、Tさんには 会えない。


 実は その日に向けて、フェルトで Tさんを模した、マスコットを

作っておいた。中々 デティールに凝った、自分でもよく出来たと

思える品に 作り上げれたつもり。それと 手紙を書いて持って来てた。

 それらを Tさんのロッカーの中に、入れて 帰った。


 手紙は 返事がもらえる様に、アンケート式にして 返信の封筒に

住所も 切手も貼って、入れておいた。

 それからというもの 来る日も来る日も、ポストを確認して

溜息の日々。


やっぱり ダメだったかぁ~~ と、あきらめました。



 


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