第77話 振り切れる。

 私はそこで一瞬、怖いぐらいに冷静になって、立ち上がる。


「……けんな」


 どうしてよ。

 ねえなんでよ。


 どうしてこんなに、傷つけられなきゃならないんだよ。

 私も、カメさんも。


 弱いから?


 弱いから強いやつに傷つけられるのは、これは、仕方のないことなの。


 ちがう…………そんなことない。


 もしそうだと主張されたって、そんなの間違っている。


 こんなの、理不尽にもほどがある。


 誰だって、誰かに好き勝手に傷つけられていいはずがない。


「……ふざけんなよ…………」


 私は弱くない。


 わけのわからない理由で傷つけられていいやつでもない。


 弱くない。弱くない。弱くない。

 弱くない。


 私は弱くない!

 私は――!!


「ざッッけんじゃねえええええええええええええッ――――――!!」


 冷静さが跳ね返って吹っ飛んだ時。

 私は、もう思いきり。恥も常識もなにもかもかなぐり捨てて。


 鵺ヶ原さんの股間を蹴り抜いた。


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