第67話 今の私と、前の私。

「すい、ません……ごめんな、さい、私……」


 泣きそうになって堪える。

 こうやって見切り発車するの何度目だ。


 亀井戸さんを喜ばせたいのに、結局それは――彼から見たら、自分の焦りを埋めたいだけの、気持ちのない行動だ。愛情も想いやりもない。


「ミツル、大丈夫、大丈夫だよ」


 言葉が出なくなった私に、彼は頭ごと抱きしめて背中をぽん、ぽんとゆっくり叩く。これも何度目。


「なにか、言われた……?」

「……」

「やっぱりね、だいたい想像つく。今日ちょっと変だと思ってたから」

「…………私は、変わっちゃいましたから……」

「なに言ってるの。変わってないよ」

「でも前とは違います」

「うーん……」


 声を天井に飛ばして亀井戸さん、少し黙り込む。


「……今のミツルも前のミツルも、おれの好きなミツルだよ。今までの話をしなかったのは、ミツルが焦ると思ってたから。でも、ミツルが聞きたいならおれは話すよ、ちゃんと、おれが覚えてること話す」


 そう言って彼は窓の外を見る。


「今日はちょっと、散歩でも行こうか」


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