第4話 へこむから。
しかし。悲観することだけではない。
私が僅かな間、足止めをしたお陰で、逃走しようとしていた男は駆けつけた警備員に取り押さえられ、そのまま御用となったそうだ。
ただの窃盗でなくこの事案は私が負傷したことにより
まあ、捕まってよかった……。
「よかったじゃないわよ、あんた打ち所悪かったら死んでたんだからね! ちゃんと後先考えてちょうだい!!」
母親がそう叫ぶと、父親もなんだかよく思っていないような顔をして。
「お前は本当に馬鹿だな! お姉ちゃんならそんなヘマはしないはずだ! 軽率すぎる! 反省しなさい!」
と、いつも通りのフレーズで私を叱る。
そりゃあ迷惑かけたし、軽率だったと思うけど、結果オーライだし。
しかも、こんな時に、こんな場所でまで、姉と比べられたくない。
「わかったよ……思い切り反省するよ。だからもう今日は帰っていいよ、特にお父さんとはあんまり話したくないし」
頭にガンガン響く。いらいらする。
「ミツル! なんだその言い方は!」
「お父さん、病院ですよここ~、しかもそろそろ消灯ですからね、ね」
「心配して駆けつけた親に対してその態度はなんだ! 謝りなさい!」
父親をなだめようと先生が猫なで声で肩を叩く。
気持ちはわからなくもないけど、こんな公共の施設で感情的になって大騒ぎするなよ。ほんと……軽蔑するなうちの父親。
入院って言われたけど、いつまでかな。
病院食はおいしくないって聞いたことあるけど。どうなんだろ。
家……帰りたくないな。
なんて、冷めた感情を抱いて、布団を被ろうとした時。
「――ミツルッ」
物凄い勢いで今度は病室の扉が開け放たれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます