第4話 へこむから。

 しかし。悲観することだけではない。

 私が僅かな間、足止めをしたお陰で、逃走しようとしていた男は駆けつけた警備員に取り押さえられ、そのまま御用となったそうだ。

 ただの窃盗でなくこの事案は私が負傷したことにより事後強盗じごごうとうに発展してしまっているので、男は窃盗罪、傷害罪で現行犯逮捕。私もこれから警察対応が必要だとか。

 まあ、捕まってよかった……。


「よかったじゃないわよ、あんた打ち所悪かったら死んでたんだからね! ちゃんと後先考えてちょうだい!!」


 母親がそう叫ぶと、父親もなんだかよく思っていないような顔をして。


「お前は本当に馬鹿だな! お姉ちゃんならそんなヘマはしないはずだ! 軽率すぎる! 反省しなさい!」


 と、いつも通りのフレーズで私を叱る。

 そりゃあ迷惑かけたし、軽率だったと思うけど、結果オーライだし。

 しかも、こんな時に、こんな場所でまで、姉と比べられたくない。


「わかったよ……思い切り反省するよ。だからもう今日は帰っていいよ、特にお父さんとはあんまり話したくないし」


 頭にガンガン響く。いらいらする。


「ミツル! なんだその言い方は!」

「お父さん、病院ですよここ~、しかもそろそろ消灯ですからね、ね」

「心配して駆けつけた親に対してその態度はなんだ! 謝りなさい!」


 父親をなだめようと先生が猫なで声で肩を叩く。

 気持ちはわからなくもないけど、こんな公共の施設で感情的になって大騒ぎするなよ。ほんと……軽蔑するなうちの父親。

 入院って言われたけど、いつまでかな。

 病院食はおいしくないって聞いたことあるけど。どうなんだろ。

 家……帰りたくないな。

 なんて、冷めた感情を抱いて、布団を被ろうとした時。



「――ミツルッ」



 物凄い勢いで今度は病室の扉が開け放たれた。

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