第20話「オークションにワクワク」

 いろいろとごたごたはあったが、俺達4人はバートランドの商業ギルドに着いた。


 この街の商業者ギルドは今迄に俺がこの異世界で見た中で最も大きい建物だ。

 何と5階建てである。

 フロアも広く、人も当然多い。

 ただオークション会場はより多くの人が来場するので、一万人入場可能な屋内闘技場を貸し切るらしい。

 

 さすが、冒険者の街である。

 スケールが違う。

  

 まずは早速1階の窓口で、明後日に行われるオークションへ申し込みだ。

 今回の仕事であるバートランド所持の宝剣メイキングバイ、シュルヴェステル様を落札の為に必要である。

 ちなみに俺達はゲネシスの街で商人登録を済ませているので商人鑑札を所持しており、参加登録料は掛からない。


 『バトルブローカー』名で何とか申し込みが済んでひと安心。

 参加者の証であるパドルナンバーを貰うと、フレデリカ達はオークションに対して興味津々で何でも知りたがった。

 まあ、分かる。

 最初は何も分からないからね。


 一回、ジェトレ村でオークションの参加経験があるので、今回は俺が嫁ズへの指南役だ。


「ようし、みんな良いか? 基本的な事を教えるぞ。オークションは街や村によって相違はあるけど出品するにはまず保証金が必要だ。そして落札価格の10%~30%前後を手数料としてオークション開催側が徴収する。だから出品して売り上げを見込む場合は注意しないといけない」


 ははは、これじゃあジュリアの受け売り、そのままだ。

 

 でも、懐かしい!

 あの時はイザベラと出会ってすぐの時だっけ。

 ラスボス級の迫力を出す悪魔王女のイザベラから逃げようとしたけど、つい情にほだされてレア金属オリハルコンを落札しようと躍起になったのだ。


 でもあのまま別れていたら、イザベラは俺の嫁になっていなかっただろう。

 そう考えると感慨深い。


 おっと!

 ここで昔の俺と同じように反応したのがフレデリカである。


「ええっ!  お兄ちゃわん、吃驚! オークションの手数料ってそんなに取るの? ここの商業ギルドってまるで泥棒じゃない?」


 フレデリカの言うことは確かに分かる。

 オークションって楽しそうだし、値段が天井知らずの場合もあってワクワクしていたのでそこまで手数料を取るとは何かなぁとか不本意に思ったものだ。


 フレデリカの『暴言』を聞きつけ、やはり商業ギルドの担当が反論した。


「泥棒とは失敬な! 商業ギルドのオークションの運営はあらゆる面で大変なんですよ。会場使用費、警備も含めた人件費、商品管理費等々、コストも凄くかかります。それにウチだけじゃなくて冒険者ギルドや他の団体、果ては王国が運営するいずれのオークション事務局も皆、仕組みは一緒です」


 ああ、これってジェトレ村の担当の返事と一緒の内容だ。

 もしかしたら、こんな時の為に対応マニュアルがあるのかもしれない。

 

 俺は初参加の際にこの説明で納得したのだが、フレデリカとハンナはまだ不満らしい。 

 だから俺は商業ギルド職員の説明を補足してやる。


「フレデリカ、ハンナ、オークション事務局だって商売さ」


「でも!」

「30%など手数料を取り過ぎですよ! 納得がいきませぬ、ご主人様マスター」 


「まあ良く考えてみなよ。オークションの便利な仕組みが俺達にはそのまま使えるんだぜ。顧客管理、商品管理、集客、売買、そして落札者からの代金回収、俺達への安全な支払い等、全部代行して貰うんだ。いろいろな人が動くし、これらをまさかタダでやれとは言えない。そもそも俺達で全ては仕切れないだろう?」 


「ううう」

「むう、確かに!」


「俺達商人と一緒なんだ。これらの必要経費に利益を上乗せしてオークションを実施するのさ。これはサービスじゃない、商売すなわちビジネスだよ」


「…………」

「…………」


 黙り込んだフレデリカ達へ職員が追加説明する。


「旦那様の仰る通りだよ、アールヴのお嬢さん達。それにまだウチは良心的な方さ。出品する為の保証金は金貨5枚、すなわち一律5万アウルムで落札手数料は20%だからね……それに王都なんかもっと高い、保証金は商品ごとの設定で落札手数料は30%以上だぜ」


 ああ、やはり冒険者の街バートランド。

 ジェトレ村よりは遥かに諸費用が高い。

 まあ、会場費、人件費がジェトレ村とは比べ物にならないくらい割高だろう。

 だが王都セントヘレナはもっと高いんだな。

 

「…………」

「…………」


 フレデリカとハンナは納得したのか、黙り込んでしまった。

 ふたりの様子を見ていたアマンダがギルド職員へ質問する。

 

 俺は知っていた。

 アマンダはこのオークション案件が決まってから書物を見て勉強している。

 目もキラキラしていて気合十分である。


「質問します、ギルド職員さん。出品する場合の最低落札価格って何ですか?」


「最低落札価格とは、落札可能な最低価格です」


「それは誰が決めるのですか?」


「出品者です。出品者が出品時に決めるのです。落札希望者は決められた最低落札価格以下の金額の入札では、落札不可となります。落札するには最低落札価格を超えた金額でなくてはいけません」


「最低落札価格を設定するしないのにメリット、デメリットってありますか?」


「ううん、難しいですね。これはあくまで私見ですが……出品者の方は少しでも高く売りたいじゃあないですか。極端な安値で売りたくない時は設定すべき……でしょうか」


「成る程! では設定しないデメリットは?」


「デメリットはセリ自体の活気です。あまり高く設定すると場内の参加者が限られます。盛り上げる為には最低落札価格を設定しない方が良いです。極端な話、参加者が1アウルムから参加出来ますから」


「参加者が多ければ、そのセリは盛り上がりますものね」


「そうです! それに商品の入札には需要と供給の兼ね合いも大きいです。人気がある商品なら強気な価格設定もOKですが、不人気商品の場合は誰も手を出さず、結局入札なしで差し戻しなんて結果も想定出来ます」


「成る程! 勉強になります」


 アマンダは笑顔で頷いていた。

 さすが元宿屋の女将、商売をしていただけの事はある。

 呑み込みが早い。


 しかしこうなるとフレデリカ達も対抗心を燃やす。

 傍から見ると、必死にオークションのシステムや決まりを覚えようとしているのが分かるのだ。


 まあ良い意味で刺激し合えば俺達的にはプラスになる。

 今回、俺はシュルヴェステル様の依頼を完遂するだけではなく、出品及び別商品の購入も考えている。

 すなわちこの街で売れそうな商品を在庫からいくつかピックアップし持参しているし、転売して利益が出そうなものはぜひ仕入れたい。


 事前に話はしてあるので、オークションの仕組みを知った嫁ズもだんだん盛り上がって来たようだ。


 アマンダが笑顔を向けて来る。


「旦那様、オークション楽しみですね! わくわくしますよ」


「ああ、そうだな」


 俺とアマンダのやりとりがフレデリカとハンナには刺激になるようだ。


「くうう、ようし、ハンナ気合を入れるわよ! 目的のシュルヴェステル様の依頼品は少しでも安く買って、私達が個人で持って来たものはど~んとたか~く売るわ」


「はい、フレデリカ様! 私も燃えて来ました」


 と、いうことで持参した出品物は既定の金額を払い職員へ預けて登録して貰う。

 更に、落札目標である宝剣の話をいろいろ聞いた俺達は満足して商業ギルドを後にしたのであった。


 ※作者注:文中の説明が実際のオークションと違いがある場合は申し訳ありませんがご容赦頂きます。

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真☆中二病ハーレムブローカーⅡ 趣味は異世界を救う! 東導 号 @todogo

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