Summer Invitation~想い出への招待状

@tabizo

Summer Invitation~想い出への招待状

 今年もまた夏がやってきた。夏はいくつも出会いと冒険(スリル)を運んできて、ほろ苦い夢と甘酸っぱい思い出を残して去っていく。

そう、あれはほんの一瞬の夢にも似た懐かしい想い出―。


ぼくは夢を見ていた。初夏の日差しと吸い込まれるような青い空(ブルースカイ)。

地平線の果てまでも続いてるかのように広がる草原(ドリームワールド)。

限りなく青い空のブルーに、一面に広がる草原のグリーンが映える。

その中にポツンと存在する大樹。木陰で揺れる白いブランコ。

木漏れ日の中で、一人の少年と少女が遊んでいる。

白い雲が草原に大きな影を落としながら、ゆっくりと流れていく。

 少女が少年に向かって微笑んだ。

 その瞬間、時間が眩しく輝いた―。


昼休みの学校。生徒のざわめきと夏の陽気であふれる教室で目を覚ました。

ふと気がつくと隣の席の君が、ぼくの方を覗き込むように見ている。

目と目が合い、君は明るく微笑む。ぼくは慌てて視線を窓の外に移した。

真夏の太陽と入道雲。校庭のわきに涼しげに立つ木。セミの声。

「どうしたの?」

窓際に立った君は、眩しい光の中で、もう一度微笑みかけながら言った。

ほんの一瞬、ぼくのまわりの時間が止まった―。

ぼくは眩しげに目をそらすと、再び君の顔を見た。


 拝啓、暑い日が続いていますが、いかがお過ごしですか。

ぼくの心のアルバムの中の、すっかり色褪せてしまった思い出の中で、

あの時の君の笑顔だけが今も眩しく輝いてます―。

 もう一度君に会いたい。もし良かったら明日の午後三時、海の見える

 白い喫茶店に来て下さい。できればあの時の君のままで来て下さい。

 そして二人だけのサマーパーティーをやりませんか。

                       byセピア色の夏より


「何書いてるの? あ、懐かしい・・・。これって私にくれたラブレターね。

小説の題材にでもするつもり? やめといた方がいいよ、あなたは発想は

面白いけど、文才はないから。」

いつの間にか覗き込んでいた妻がそう言うと悪戯っぽく笑って、隣の台所へ

消えていった。

しばらくして冷蔵庫をしめる音がして、冷えたコーラが運ばれてきた。


湾岸道路わきのハンバーガーショップ。海辺のビーチパラソル。色鮮やかな駐車場。

芝生の庭と白いカフェテラス。木陰のポスト。はじける水しぶき。ダッシュボードの上のサングラス。爽やかなオレンジ色。

これらのものが不自然に見えてきた時、今年の夏も終わりが近づいている―。


END

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