第156話


 そして同じ方向に視線を向けている眼に浮かんだのは敵に対する

 明らかな殺意だった。

「ジャンネットだ。

 今後肩を並べて共闘するだろうからよろしく。

 アルバーンはトロールやオーガの変異種なんかを討伐経験は?」

 どこか確信したものを宿した眼差しで、尋ねる。

「あるともさ」

 リザードマン種族の冒険者アルバーンが頷き答えた。

「見た目通り頼もしいなアルバーン。

 他のモンは?」

 ジャンネットが付近にいる複数人の冒険者達を見回しながら尋ねる。

 幾人かが、獰猛な笑みを浮かべつつ無言で挙手する。


「それはなかなか夢と希望があるな!」

 アルバーンが挙手した冒険者達をちらっと見ながら 嬉しそうに言う。

「―――足音の数からして、約20匹ほどのオーガが向かってくる様だ」

 ジャンネットがそう答えながら、付近にいる冒険者達をざっと

 見渡し 無骨な兜を被る。

 その行動に反応してアルバーン以下数人が武器を構え直し臨戦態勢に入った

「それもこの『大物』出現の影響で、死兵化している・・・だな」

 アルバーンが緊張感漲るこの場の空気を振り払うように言い放った。

「なあ、お二さんよ、もうちょぃ優しい言葉で言ってくれんかい?

 小心者とセンチメンタルな連中ばっかりなんだぞ」

 臨戦態勢に入っている冒険者の1人が肩を竦めつつ答える。

 その動作はひどく大袈裟であるが、恐らく意図的にそうしているのであろう。

 ここにいる冒険者の面構えを一目で見れば、小心者とセンチメンタルという

 言葉からは程遠いという 表現なのは明らかだ。

 何だか馬鹿馬鹿しく思った数名が苦笑をしている


「ココに来た女の冒険者達は、大方が夢見る乙女のようなタイプだぞ」

 闘気を纏ったジャンネットがそう短く告げると、すぐそばに立つ2名の

 冒険者が思わず吹く

 そのうちの1人は、笑いすぎて咳き込んだ

「では、その夢見る乙女のようなタイプの女の冒険者達に手柄話を

 語ってやろうじゃないか。

 ―――来たぞ」

 アルバーンがそう言うと、脚音を鳴らしながら オーガの集団が姿を現した。

 数は20体ほどだが1体のオーガは、他の個体数よりも2回り以上大きく、

 そして筋骨隆々とした体格をしている

 その手には巨大な棍棒を持っていることから 恐らくこの集団のリーダーだろう

 20匹のオーガ達が咆哮を上げつつ、一斉に襲い掛かってきた。


 砦化しているゴブリン集落内部の一角で、オーガの群れと死闘が

 繰り広げら れようとしている一方―――

 ゴブリン集落外部でも雄叫びを上げつつ勢いに任せ向かってくる

 ゴブリン群との死闘を冒険者達が繰り広げていた。

 群れの中にはゴブリンが調教した魔獣コカトリスが混ざり、それも

 普通個体種よりも胴体が大きく立派な羽根が生えている

 オーガとの死闘を繰り広げている場所よりかは、冒険者達の数は 多く

 まだ余裕はあるようだ。

 ただ、その戦いは苛烈を極めており、1人の冒険者が複数のゴブリンに

 囲まれる場面も見られ る

 が、そんな状況でも冒険者達は冷静に対処出来ているのは、流石の

 一言に尽きた。

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次の更新予定

2024年12月6日 23:00

奇妙な冒険者 大介丸 @Bernard

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