第2話
「"恋"を…知ること。」
「…はぁ?」
思わず素で返してしまった。
しかしすぐに、聞いといてこの反応はあんまりだろうと自身で反省する。
それにしても、恋を知らない女の子って今時珍しいのにもほどがあるんじゃないか…?というか何歳で死んだのかもよく分からないし…
『ニュースをお伝えします。』
ふと点けていたテレビ番組の合間のニュースに目が留まった。
『昨夜、車と衝突した高校二年生の松代千里さんの安否が確認されましたが、意識不明の重体、意識が戻るのか分からないそうです。』
「あ、これ私…」
「同い年…てか昨日かよ…」
車で轢かれた云々の話はショックなものがあるのだが…同い年と分かって少しホッとした。
「千里ってさ、まだ死んでないってことだよね?」
さっきこいつは死んじゃったって言ってたけど、意識不明の重体ならまだ死んではいないはずだ。
幽霊かと思ったけどそんなこともなくて、魂が美凪と入れ替わったってことか?
…何か頭痛くなってきたわ。
「…神様が、時間をくれたのかな?」
「…神様に会ったのかよ」
「…さあ?最後に願っただけよ。"恋"を教えてって。私の…一方的なお願い。」
口調は冷静を装いたいようだが、言ってる顔は真っ赤だ。
ふと、告白をした時の美凪の顔が浮かんでくる。あの時の彼女の顔もこんな風に真っ赤で…
本当に、中身以外は全て美凪のままだ。
「恥ずかしいよね…高校生になって一年経ってるのに…恋も、人を好きになることも分んないなんて…」
何と返事をすれば良いのだろうかと深く考え込むと、彼女が取り繕うようにわたわたと話出した。
「ま、まぁ…別に恋を知らないからと言って君の事を好きになるわけじゃないんだけど」
「何か美凪に言われてるようでショックなんですけど…実際返事貰えてないし」
「さっき彼氏だ〜とか言ってなかった?」
しまった…墓穴を掘ってしまった。
うーん…この際事情を話すかな…長い付き合いになりそうな気もするし。
「あのさ、ちょっと俺の話をするけどさ…。」
俺は千里に今の状況を伝えた。
美凪のことが好きで告白したこと。
返事を貰う前に美凪が倒れてしまったこと。
美凪が目を覚まさなかったこと。
そしていきなり目を覚ましたと思ったら中身は千里だったこと。
それを勝手に記憶が混乱していると思って彼氏を名乗り、少しでも深く接したかったから…と。
「ん〜…つまり記憶喪失っぽいこの子に、彼氏だ〜って言ってイロイロ教えこもうとしたのね。」
「待て!その言い方は語弊がある!」
別にやましい気持ちがあって彼氏を名乗った訳では断じてない!
……断じてない!(大切なことなので二度言いました)
「…好きなのね。」
「す、好きだよ…」
「そんなに顔赤くしなくても良いのに。」
「お前の顔が美凪だからずるいんだよ!」
何だか美凪に告白してるような気分になり、真っ赤になっていたらしい。
しかし中身が違うせいかシリアスな雰囲気にさえならなければドキドキはしない。
「お前…恋を知らないくせに人が恋してるの見ると笑うんだな」
むっとなって少し強い口調になってしまったが、彼女は気にしない様子で返事をした。
「ん〜…それはね、たぶん羨ましいのかもしれない。」
「恋をしてるから?」
「…うん。私ね、こう見えて好奇心旺盛なの。」
…こう見えても何も見た目は美凪だし、中身については知り合って15分ほどであるということは黙っておくべきだろうか。
ツッコミを我慢し、彼女の話に再び耳を傾けることにした。
「本が好きで、知らないことはすぐに調べたりする。それでも分からないことがあった。…それが"恋"なの。」
「友達とかに聞けば良いじゃないのか?」
「…本を読んでたら話しかけられなくなったわ。」
「あ〜…クラスに一人はいる他を寄せ付けぬオーラを出す人なのね…そしてコミュ障になると。」
「だから恋って何だろ〜って考えてた矢先に…」
「轢かれたのな」
こくりと彼女は頷き、そのまま話を続ける。
「…恋は論理的には知ってるのよ。ただ理解が出来ないの。好きってどういう気持ちなのかな〜って。」
これは想像以上にやばい。
本当に人を好きになったことないみたいだ。
論理的な恋とかいう言葉初めて聞いたぞ俺…逆に恋してても論理的には知らねぇよ!
「だからさ、この子を好きなあなたに聞く。好きって…"恋"って何なの?」
ずいっと顔を寄せて、キラキラした瞳で俺を見つめる美凪…の身体を借りてる千里。
「ち、近っ…い…!」
「教えて…?」
ちょちょちょ……!
と、吐息が!…こ、これは…もう…!
胸のドキドキが最高値に達したその時…
「とりあえずお医者さん呼んでくる!!」
__善久は逃げ出した。
2話end.
人類皆恋愛脳なようで 優@メープル @yu04maple
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