概要
――その夏は、蝉が鳴かなかった。
外界との交流を限りなく避けていた俺に、
大学の病院から一本の電話が入る。
資料の作成ができたので取りに来てほしいとのことだった。
身に覚えがなく、だが殆ど家に家族は居らず、仕方なく取りに行くことに。
夏の猛暑、焦げるアスファルト、煩い蝉の合唱。初めてのバス、初めての病院、初めての人との交流――。
緊張と苛立ちはピークに達し、帰りのバスに乗る頃には、疲れがどっと出て睡魔が押し寄せていた。
人に隙を見せてはならない、寝てはいけない。
そう抗い、咄嗟に降りたバス停。
そこはどうも、数時間前に使ったバス停とは打って変わって静まり返っていて――。
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