週末最高!?

ファーファルでの実習授業は何事もなく……いやめちゃくちゃ面倒な事に巻き込まれつつ終わり、今はオレの大好きな大好きな週末。まあ実際は実習授業でズレた分土日ではないんだけど。それでも構わない!


起床時間は昼過ぎ!そこからお菓子を食べながらゴロゴロ!夕方は夕日を浴びながらゴロゴロ!夜はお菓子を食べながらゴロゴロ!夜中もお菓子を食べながらゴロゴロ!


なんて生活がオレに許されるわけもなくただいまギルドに来ております。


「ハァ……」


しかも朝の7時。授業ある時でもこんな早起きしねぇっての!


「ハァ……」


しかも呼び出したババアはまだ来ないし。


「ハァ……」


しかも再来週には早速学園ではテストがあるし。


「あああああああ!!いつ来るんだよあの鬼ババア!!男との約束に遅刻するなんて、だから彼氏いない歴イコール年齢なんだよなあ」


「あんたは彼女いない歴イコール年齢よね?いつも遅刻するのはあんたよね?あと私はまだ21歳よクソガキ」


唐突に背後に現れたセシアからの殺気をしっかりと受け止めつつ、オレはゆっくりと振り向く。


振り向いたら拳が飛んでくるとかはないよな?


「え、えーとおはようございます」


セーフ、拳は流石にこなかった。代わりと言っちゃなんだけど、氷の剣がオレの喉元に突きつけられてる。


「ええおはよう。でももうすぐ永眠させてあげるわ」


「またまたぁ、冗談キツいんだからセシアおば……セシアさんは」


「あんたわざと?」


「違います!」


わざとそんな事してたら身が持たないって。本当に素でセシアおばさんとか言っちゃうだけだから。


「そろそろ剣消してくれませんかね」


いつまで経っても消す気配が無いぞこの人。そういうプレイなのかもしれないが生憎オレは興味ない。


セシアがもし望むなら他の男と勝手にやってくれって感じ。


「あんたかこの剣、消えるのはどっちかしらね?」


「えぇ……」


流石に剣でしょ。


「答えはあんたよ」


「いやいやいや!美人で強くて優しいセシアさんがそれはマズいって!ね?」


なんか毎回の様にババアって言って窮地に立たされてる気がするからこれからはマジで気を付けないと。


「本当あんたは仕方ないわね」


チョロいチョロい。


なんとか剣を収めてくれたセシアはいつもの仕事机の席に座ると毎度お馴染みの紙を渡してきた。


「また任務かよ」


「今回は大事な任務よ」


今回はって事はいつものは大事じゃないみたいな言い方だな。まあ別にいいけど。


「どれどれ」


まず最初に目に止まったのは紙の右下に押してある赤い剣の印。これが示すのはギルド本部からの許可及び、本部からの直接的な任務。


内容はドルビア帝国にて開催される舞踏会での護衛とだけ書いてある。


「何これ」


流石に曖昧過ぎだし意味が分からない。そもそもなんでオレが舞踏会の護衛なんてやるんだよ。


ドルビア帝国ほどの大国なら実力者は沢山いるだろうし、手を出す命知らずのバカはそうはいないと思うけど。


「実はこの前ローティアス家の屋敷が襲撃されたのよ」


ローティアス家襲撃。その言葉に聞いて自然と聞く姿勢に入ったオレを見て不思議そうな目でセシアがこちらを見てくる。


「あんた何か知ってるの?」


「クラスメイトにローティアス家の娘がいるんだよ。ただそれだけだ」


「そういえばローティアス家の娘さんは今年で15歳だったわね、まあいいわ。

それであの事件以降も名門貴族の襲撃が続いてるせいでお偉いさんは怯えてるのよ」


なるほど、次は自分かもしれないから安心出来る実力を兼ね備えた護衛が欲しいわけだ。


帝国の舞踏会なんてレベルなら大勢の貴族が来るだろうし貴族を殺す事が目的なら絶好の機会。


「面倒くせぇな。他の奴でもいいだろ」


「他のXランカーも当然何人も来るわよ、私も含めてね」


「セシアが行くなんて珍しいな。そんなに大事な行事なのかよ」


セシアと言うよりもギルドマスターが直々に他国まで行って任務に就くなんてそうそう無い。


ギルドマスターって立場上ギルド内で何か問題が起きたら対応しなくちゃならないから仕方ない事。書かなきゃいけない書類も山ほどあるみたいだし。


「らしいわよ。私は興味無いけど毎年開かれてる恒例行事って事だけは知ってるわ。という事だからしばらくは学園も休んで帝国に行くからそのつもりで」


まあ学園を休めるに越した事はないが任務が任務だからやる気が起きないのも事実。


「んじゃ今度学園行った時伝えとく」


「何言ってんのよ。任務の為に今日出発するわよ」


「はぁ!?何にも用意してねぇよ!」


「用意する物なんてどうせ無いでしょ?服はいつものギルドの制服だし」


全くもってその通りだから何にも言えない。もし足りない物があれば現地で調達すればいいか。


「はいはい分かりましたよ。でも学園側には何にも言ってないから無断欠席になるぜ?」


今更無断欠席がなんだって話でもあるんだが……。


「それなら大丈夫よ。もうすぐ来るから」


「おい、それってまさかーー」


その瞬間、言葉を遮る様に後ろのドアの向こう側から地響きに近い誰かが走る音が聞こえてくる。


こんなバカみたいな騒音を出しながら走る奴をオレは1人しか知らない。


「ハロー!ひっさしぶりー!元気してた?」


ドアを蹴り飛ばして現れたこの女。暑苦しそうな黒いドレスに長い黒髪、顔立ちはかなり幼く14歳くらいに見えるが実は21歳でセシアと同級生。身長も幼い顔立ちに似合う低さで精々150くらい。


「久しぶりねルリ」


ルリ・ホーク。セシアの昔からの知り合いでオレの通うトレイシス学園の副学園長を務める幼女だ。


幼女オブ幼女な副学園長が来たって事はしばらく学園を休む事は今伝えろって事なのか。


だが生憎オレはこの人が大の苦手で正直あんまり喋りたくない。


だって意味分かんないくらいハイテンションだしゴスロリだし。


「セッシーは相変わらずだねー。ルナちゃんもおひさー!」


身長差のせいでオレを見上げる形になっているこの幼女をもしかしたら可愛いと思う奴もいるかもしれない。


まあオレは思わないけどね!


「はい」


オレをちゃん付けで呼ぶなんて本当いい度胸してやがるぜ。今すぐ風穴開けてやらんでもない。


「相変わらず冷たいねールナちゃん。ルリ悲しいー!」


うぜぇ……。


「セシア、オレはしばらく部屋の外に居るからゆっくり話ててくれ」


「あんたの学園生活についても話すからここに居なさい」


セシアはそう言い、幼女は部屋のドアの前に立ち行く手を阻む。


なるほど、2人してオレを逃す気は無いと……。


「んじゃさっさと話進めようぜ」


「それでそれでー?帝国に遊びに行くらしいじゃん?」


誰が遊びに行くなんて言ったんだ。この幼女の耳は腐ってやがるな。


「遊びじゃないわよ。きちんとした任務があるんだから」


「相変わらずお堅いねーセッシーは。それでその任務にルナちゃんを連れて行くからその間学園は休むって事かな?おっけー!」


…………なんだこの幼女。まだそこまで言ってないのに何で把握してんだよ。


「は、話が早いな」


珍しくセシアもたじろいでるぞ。相変わらずめちゃくちゃなロリだな。


「そういう事なら欠席時数とかもなんとかしとくから頑張りたまえ!」


「助かるわ。ほらあんたもお礼くらい言いなさい」


「ありがとうございます」


特に嫌味も込める事なくそう言ったのは面倒な事を増やさない為だ。決して押し負けた訳じゃない!


「うんうん。お礼が言えるようになったのはいい事なのだ!」


ウザい。ただただウザい。こんな立場じゃなかったら風魔法で場外に吹き飛ばしてやるところだ。


こんなチビなら遥か彼方まで飛んでいくだろうに。


「それじゃあ頼むわねルリ」


「任されよ!」


小さな胸を精一杯張るが無い物は無い。


という事でムカつく幼女に留守中の事は任せて、帝国に行く事になったオレとセシア。


帝国、久しぶりだな。

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オレの最強への道が険しすぎる ポジポジマン @tenyuu

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