潜水艦

1

 渋谷区新町警察署の一室に去年から新しく出来た部署、それが零式対策課だ。

 新しく配属された新平を祝う為、きらびやかな飾り付けがなされていたが、当の本人達は意気消沈の面持ちだった。

 「な、何かごめんね、辛気くさくなってしまって」

 空気に耐えられなかったのか、藤堂が話し出した。

 「あれは一体なんなんです?」

 「デコイですよ」

 机にあるフライドチキンを怒りに任せ頬張りながら奏が話し出した。

 「デコイ?」

 「ええ、今日を含めて三件、万引きや強盗をした犯人が捕まった後、爆殺する事件が去年から起こっているんですよ」

 「口封じってことか」

 「そゆこと、胸くそ悪いっすよ」

 「爆殺って事は犯人は爆弾を使ったって事だろ?何か爆弾の破片物から手がかりがあるんじゃないのか?」

 新平の質問にまた沈黙が起こった。

 「無いから困っているんですよ」 

 「三件の事件、全て爆殺された犯人からは爆弾を取り付けられた形跡はなかったんだよ」

 「その潜水艦サブマリンと言う奴は能力者・・・」

 自身は姿を現さず、囮を出して標的を狙う。まさに潜水艦サブマリン

 「それはそうとお前・・・」

 新平は奏の方をみる。

 「へぇ、なんすか?」

 急に話しを降ってきた奏はきょとんとしている。

 「うまそうにフライドチキンを頬張っているが俺と課長の分は残っているんだろうな?」

 「あっ・・・」

 パクっと最後の一口を食べた瞬間、フライドチキンが乗っていたお皿を見るが、綺麗になっていた。

 「あ、あのよろしくかったら食べます。私の唾液つきフライドチキン?」

 「殺すぞ」 

 「まあまあ武藤君」

 怒りを出している新平に藤堂は落ち着かそうとしていた。

 「それに今日はもう夜の10時、この辺で帰ろうじゃないか」

 その言葉に各々は部屋を後にした。



 東京の某公園。

 時計の針は一時まで五分を切っていた。

 男は公園の遊具一つに手のひらを合わせるとニヤリと笑みを浮かべた。

 これから自身が起こす事件に絶対なる自信からなる行動だった。

 この日の為に練り上げてきた事件、そんなものは些細な事に過ぎない。

 無能な警察、金に目の事で一杯の軍隊など赤子を捻る様なもの。

 時計の針は一時になる。


 それでは始めようか。完璧なる犯罪を。

 

 男は右手を空にかがげ、握りしめた。


 

 

 


 

 

 

 

 

 

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零式 春日野 晴 @sinnzakizinsei

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