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「さあ、追い詰めました。もうこれ以上の悪行は止めてください」
場所は三階建て某ビルの屋上。
犯人と対峙。
と、ここまではいいんですが・・・。
「こいつがどうなってもいいのか?!」
問題は、犯人が小さな女の子を今にも屋上から落としそうな勢いをどう止めるか?
「うわーん、助けて!」
「大丈夫ですよ、もうすぐでおかあさんの所に帰してあげますから。それまで頑張ってください」
そう言って女の子に笑顔を見せてはいますがどうしましょうか?
冷静に、犯人にバレないように『天眼』を発動する。
上半身、下半身の攻撃、女の子を掴んでいる手、首、あらゆるパターンを想定してみても最悪の結果しかでてこない。
少女が屋上から落ちる未来しか視えない。
どうする・・・?
「テメー、ここから速く立ち去れ。そうすればこの子は助けてやる」
考える時間を遮断されるように犯人が大声をあげる。
「お願いします。自首してください。女の子が可哀想です」
どうすることもできない状況に私は頭を下げる。
「そんなこと判ってる。でも俺だって死になくないんだよ」
「死ぬ?何を言っているんですか?あなたのやっていることは懲役は免れないですが、人質を殺さない限り死刑にはならないと思いますが?」
「そんなことをいってるんじゃない!」
犯人とのやり取りの中、スマホから電話が鳴り響いてきた。
藤堂課長だ。
この騒がしい状況だ。すぐ下にいるに違いない。
「上司から電話があったんで出てもいいですか?」
私はスマホを犯人に見せる。
そして同時に『天眼』を発動した。
「そんなのダメに決まって・・・」
刹那、私は犯人との距離を詰めた。
瞬間的な行動に犯人は動きが一瞬遅れた。
「てめえ!!」
そういうと、犯人は女の子を屋上から落とし、両手を使えるようにした。
しかし臨戦態勢に入る前に、私は刀の柄でお腹の急所を突いた。
犯人は言葉にならない声を発しながら崩れ落ちた。
そして女の子は屋上から落ちて死ぬ。
ここまでは『未来』は視えていた。
だが、未来は変えられる。
最後に視た『未来』はそうはならなかった。
私は屋上から下を見下ろす。
私ぐらいの歳の男の子が落ちた女の子を抱き抱えていた。
私は思わず、「ナイスキャッチ」と言って親指を立ててしまう。
その光景を男の子がみるみる怒り狂った顔になっていくのが判った。
うん、最高の未来になったかな?
「テメー、女の子が落ちて危ないと思わなかったのか?あの子、ずっと泣きながら救急車に搬送されていったぞ」
ずっと怒っている新平に奏は笑顔のままだった。
「しょうがないじゃないですか、女の子を助けられるのは、これしかなかったんですよ」
「俺だったから女の子を助けられたんだぞ!」
「だから落としたんですよ、女の子には悪いけど」
「あの子、あれが原因でトラウマになるかも知れないんだぞ!」
奏はその言葉を聞くとハッとした顔になる。
「それは気づきませんでした」
奏は頭をかきながらみるみる落ち込んでいった。
それを見て取れた新平は何だか悪い事を言ったように思えてきた。
「あの子も助けられたからよかったんじゃないか。だから気を落とすなよ、えっと・・・、大杉」
「何で私の名前を?」
「悪い、自己紹介がまだだったな。本日から零課に配属された武藤 新平だ。宜しく」
「あなたが武藤さんでしたか、だからあそこから落下した女の子を受け止められたんですね」
奏は先ほどのビルの屋上を指差しながら話す。
「あそこから落ちたら小さな女の子でも100キロを越す衝撃なのに、それを受け止められたと言うことは武藤さんの『能力』は情報通りの凄さですね」
「おかげで明日は筋肉痛だ」
「名誉の負傷って所って言ったところですか」
新平に向けて奏は笑顔を見せ、奏は敬礼をする。
「自己紹介が遅れました。警視庁零課の大杉 奏です。宜しくお願い致します」
二人の自己紹介の最中、先ほどの犯人が警官に連れられてビルから姿を現した。その光景は捕まった犯人が、駄々をこねるような言葉とは全く違うことを吐いていた。
死にたくない、殺される、助けてくれと言っている。
狂気じみた犯人の表情に二人は何か嫌な予感を感じていた。
「何か様子がおかしいんじゃないか?」
「犯人と話していたときも死にたくないと言っていました」
そんな予感が当たったのか、犯人が突如その場にうずくまり、頭を抱え始めた。
「おい、どうした!」
連行していた警官が尋ねる。
「あ、頭が・・・!!」
辺りの野次馬達もざわざわし始めた。
次の瞬間、悲鳴に変わる。
犯人の頭が無作為に蠢いていた。
「何だ、あれ!」
その異様な光景に直感的に奏は『能力』を発動していた。
その直後、大声で叫ぶ。
「皆さん、犯人から離れて下さい。犯人が
「た、助けて・・・」
それを最後に、犯人の頭が爆音と共に辺り一面に砕け散った。
周囲一面に深紅の雨が降り注ぎ、一瞬の時間が止まった後、絶叫が騒ぎ始めた。
「何だよ、あれ?!」
新平は奏に尋ねる。
奏の表情は怒りを込み上げる顔になっていた。
一言、静かに。
「
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