独笑

「お、またやってもうたか アホなことしたなあ」

突然脳に直接メッセージがとどき、錯田はあわてる。


”天狗” 偶然錯田はある雑誌の小さな記事でこれを

知り、本をもとにこの幻惑剤の調合を辿り調べていく。

調合はウソのように簡単であった。錯田は天狗が

もたらす多幸感にどっぷり浸かる。ひどい味がする

金属的なえぐみがある。じきにそんなことは気にも

ならなくなる。彼は悪魔と対峙する 彼にはみえている

アニメのような悪魔が。そこで彼は問う

「この世に携帯電話など必要か」

悪魔は答える

「いやぁ・・・要らんだろ」

「だよなあ!」

幻覚症状がもっとも最大限にあらわれている。

雨戸がガタガタ音を立て始める 太陽はスローモーション

で錯田に最接近する。ツバが蛇口をひねったように

止まらない すべてを理解できたような気になって、

反転、恐怖に支配された錯田は刃物を手にとってしまう。

力が、限界を超えて発揮される。硬い分厚いフローリング

の床を包丁は貫通している。


警察車両に乗せられたまま、錯田は気さくに両隣の

警察官に話しかける

「オニック・スターて知ってますか?あれすごいですよねえ」


くくりつけられたベッドに横たわる錯田の視界には天井

が見えている。かれにいま時間の感覚もくるいが生じているが

5日後 拘束は解かれる。


「矢村か?」

耳たぶに埋め込まれたメッセンジャーまで 除去すること

には問題があるということだろう。かれは下着だけの姿で

ほっと友人からのことばに胸をなでおろしながらあたまのなかで

やや強くメッセージを念じ、返信した。

やっちまったぁ そうメッセージを送り しばらくやりとりしたあと

矢村はまぁまぁとほんのり励ましてくれた。

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妄想の渦 貝でできた指輪 @ishiatamarki

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