本屋がキンドルに対抗する為に

 キンドル方式はダイレクト販売です。消費流通で言うところの、生産者と消費者が直接でやり取りする方式。キンドルさんが屋根を提供して、個人参加者のレベルを有る程度管理することで質の担保もしています。(リテイクされまくり、最終的にレベルに達しない作品は弾かれる)


 どの程度まで管理しているのか、質の保証の高低など、実際のとこはよく解からないわけですが、少なくとも野放し状態の他投稿サイトよりは高品質だと思います。


 これに従来の出版形式、仲買と小売を介した方式で対抗するなら、彼らが省いた部分に力を入れる以外にないでしょう。


 キンドルが省いたのは、「装丁」「校正」「サービス」「マッチング」の4つだろうかと思いますので、ここを強化する形を考えてみます。


 キンドルは個人出版者を大量に抱える方式ですから、個人の負担が大きいわけです。参加する店子は、装丁から執筆から宣伝まで全部自分でやらねばなりませんから、いきおい小粒になっていかざるを得ません。


 量産と高品質は両立が難しいわけですので。


 なので、キンドルの個人出版者を狙い撃ちにした対抗策を取るなら、それこそ大資本の分業体制が有効なはずです。個人の限界を突けます。

 個人で難しい最たるものは、「同一テーマによるアンソロジー」という形式です。これは、参加者を募っても質が保持できない上に、まとめ役の負担の大きさ、という点がありますから。

 要するに、個人の労働力の限界を突けばよい、に尽きるわけです。


 実力ある作家を多数育て、高いボーダーを設けて質の悪い作品は市場から締め出す、リテイクを繰り返せば質は向上します。(ここで言う質は、基本的に文章力のことを指し、明確に合格ラインを定めるという意味)


 大量に品があってもピンキリであるなら、低品質のレベルがその市場全体の価格平均を決めてしまいますから。


 多少割高でも「ハズレはない」という安心感が、消費者の納得を引き出します。消費者は手間を考慮して、高い市場を選ぶのですから。Web小説やラノベを読まない読者のソレは偏見ではありますが、こういった合理性がある偏見です。手間は省ける。(ランキング作品しか当たってこない読者も該当)


 ちなみ、Webにおける読者ランキングが、と、このタイプの読者も気付き始めていますので、今後はWebランキングの影響力はどんどん下がると予測します。

 先鋭化というか、趣味人の集まり、という様相を示すでしょう。


 Webの読者ランキングでは、ピンキリ含めてになるからで、究極には同じ物語での、文章の良し悪しでのランキングに近付くからです。だから、先鋭化せざるを得ません。


 本屋や出版の選ぶランキングは、多様性は担保されますが、代わりに読者の手間はそれだけ増えてしまうという事なのです。Webでは、物語自体は数えるほどしかないのです、実は。(バージョン違いが多数ある状態)


 一般文芸など本屋に普通に並んでいる小説というのは、出版独自のシステムに則り、ある程度のボーダーラインを決めて出版された作品ばかりですが、このラインが年々下がっているのが問題なわけです。

 これは体感的に下がっている、という意味で実際とは違います。出版ラッシュによって、かつてないほどの出版数となっているので、読者の体感が変わるのです。


 ここの消費層はとにかく手間を惜しみます。この出版ラッシュで山ほど本が出ると、「マッチング」が巧く行かなくなるんですよね。ズラリと並ぶ本棚は高水準で統一されてはいるものの、「均等な質である」ということなので、読者は選ぶ前に嫌になります。数が多すぎるのです。


 ミステリ界隈が巧く回っているのは、分類の成功によるところが大きいかと。そして、時代物は大きく「歴史小説」と「時代劇」に二分されるので、選ぶに解かり易いのが幸いしたものと分析しています。


 今の時代、読者はなんでも読みたいわけではない、これが大事だと思うのです。


 次のキーワードは「生活導線」と「オシャレのマストアイテム」です。

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