読者が○○を邪魔に感じるとき

 ○○には色んなケースで色んなモノが入ります。先におさらいをしたのは、これに言及するためでした。


 テンプレラノベとかネットのツイッタ記事だとかに慣れている読者は、丁寧な描写を邪魔に感じやすいのではないかと思います。元から掻い摘んだ情報の処理には慣れているので、特殊でないなら詳細は別にいいやという事ではないかと。

 アレです、伝わった事柄については追加情報などウザいだけだ、という事。話がくどい人の会話では、もう伝わっているキーワードをしつこいくらいに言葉を変えて説明を続けようとしますけど、それを聞いているのと似たような心境ではないかなと。


「今日はいい天気」と書けば、詳細に「雲ひとつなく中天には太陽が小さくぽつんと云々かんぬん……」なんてのは別に要らないと判断するわけです。詳細なくても晴れたお空なんて誰でも想像できますもん。


 美少女と書かれていたら勝手に好みの美少女を思い描くので、追加の指定文書はなくてもいい、むしろ邪魔、という気持ちになるものです。その文章がまたクソ面白くもないものであればなおさら。

 女の子が登場したら、誰でもまずは美少女を頭に置いときます、とりあえずの処置で。それから詳細に合わせて整形していくわけで、これが取り立てて特徴的でもなければ整形もされないわけで、じゃあその文章は何の為にあるのかとなる。無駄じゃね?と。


 アーモンド形の大きな目に、長い睫毛がばっさばっさ……とかの、よく見るテンプレートみたいな美少女描写とかですけどもね。あれなら無いほうがマシだというのは、そういう理由なわけで、ようは読者にしたら蛇足としか思えない。


 必要な情報は、せいぜい髪の色、長さ、美少女とあれば輪郭や目の大きさなんてのもある程度範囲が決まってるんで、あとは服装くらいでしょう。

 言及しておかねばならない部分だけ書いてあれば良いわけで、それで言えば「美少女」の単語一つで事足ります。美少女の単語に、中肉中背・たまご型の輪郭・ぱっちり大きな目・ばさばさ睫毛・あれこれ、が入ってますから。読者それぞれのステレオタイプ美少女がカチッとはまります。


 もし、一重まぶただけど美少女だとか、ちょいぽっちゃり体型だけど美少女だ、とかの時だけ、特異点に言及すればいいとなるわけです。


 そうは言っても、市販の、特に一般文学文芸作品だとフツーに容姿とかは描写されていたりします、フツーにね。これは、読者が物語の内容以前に「文章そのもの」を楽しみに読んでいるからで、先に挙げた事とは根本的に理屈が違いますので悪しからず。


 文章そのものが楽しめるように、テンプレートにならないように書くのが一般的な小説なわけです。ダイジェストで掻い摘んでみたら同じような物語だった、てな小説は多いもんですが、それが冒頭開始から同じとなったら読者は読まないですよ。作家ごとの個性というか、文章が違うから作家買いなんて現象があるわけでして。


 だからトゥゲッターなんかの記事で、「もし村上春樹がヤキソバのトリセツを書いたら」なんてお題で大勢の作家を出してきて盛り上がれるわけです。

 その作家の書く文章そのものを愉しんでいるのだから、無駄な描写なんてものは無いわけですよ、ファンにとっては。悪文と呼ばれていようが何だろうが、そのリズムや言い回しが気に入ったとなれば関係はない。ラノベファンがよく反論で噛み付いてくる理屈の、逆バージョンですね。


 つまり、テンプレ系の作品とは、そういうわけで読者の読み方が違っているんです。だからアーモンド形の潤んだおめめだろうが、陽は中天に高くたかぁくだろうが、作家の個性が発揮された文章ならばその情報自体がどうであろうが、書いてオッケーとなるのです。


 文章そのものに価値を見出されていないなら、描写をしたら怒られる、ということ。その作者さんは物語のみを求められているのであり、作者さんの(芸術における)表現は求められていないということでもあります。



 で、前のページの「青年の主張」がなぜダメなのかについて、ザクッと切り裂きますね。


 ずばり。


「そんなん、お前に今さら言われんでも知っとるわ!」


 な事を偉そうにぬかしているからです。

(ハッとさせられた、とかだと言われないのよ~ぉ)



 エッセイなどは、正直、「青年の主張」だらけなわけですが、「そんなんお前に以下略」な記事を書いたって、あんまり読んでもらえないでしょ。

 その主張そのものが面白かったり、斬新だったり、ハッとさせられたりしないなら、やっぱり誰も相手にしてくれないわけです、小説以上にね。


 これも「文章」そのものに魅力があるなら、内容問わずで読んでくれたりもしますんで、やっぱ文章力はパウワァなんですよ。

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