小説の技巧に関する記事
文字数節約術『行間を読ませる書き方』
「尺」を考えると、アクションなどを主体に寄せていった作品では、たかが知れた内容しか書けないと言いましたよね。アクションシーンなどに比重を取られるので、ストーリーを複雑にすると文字数が足りなくなるからです。
そうなると、取れる道は二つです。
■アクションシーンを少し削って、ストーリーの方へ回す。
■全体に少しずつ描写を削って、ストーリーの文字数に足す。
ラノベではだいたいが後者を選んでいるので、背景描写だとか、もっと単純に色んな描写が薄くて、読書家の言う「ぺらっぺら」の状態になってたりしますね。
文学などは濃密に描写が為されますが、全体のストーリーはとてもコンパクトです。デパートへ行ってレモンを置いてきた、というだけのものとか。それをまぁ何千文字も費やして、これでもかと引き伸ばして事細かに描写するのが文学。
片や、ラノベなどは描写を極力排除して、ストーリーにはボリュームを持たせています。文字数的にはデパートレモン程度の容量しかないだろうに、色々を取り払って無理やり詰め込んでいる印象です。
でも、実はもう一つ、文字数を節約してなおかつ濃密に描くための手法というものがあるのです。それが、『行間を読ませる』という書き方です。
名だたる文豪たちは、まぁ一度はコレ使ってますから、本屋や図書館に行けば、わざわざ例題を挙げる必要もないくらいには幾らでも転がってます。
ハードボイルドの名著「マルタの鷹」は、三人称のお手本によく挙がってくる作品ですが、この中でも『行間を読ませる』手法はふんだんに使われています。「老人と海」でお馴染みのヘミングウェイだとかもそうですね。
その方法自体は、実に簡単なことなんです。
書かれてある部分から、書かれていない部分を推察させるように仕向ける書き方をするのです。この手法を使えば、上手にやれば、文字数が二倍は必要なストーリーでもコンパクトにして読者に提供する事が出来るので、習得すればたいそうお得です。
なにせ読者の方で勝手に、人物の背景や事件の隠された部分などを想像してくれるわけですからね、そりゃもう無限に広がってくれます。
ごくごく簡単なところだと、人物の容姿を書かなくても、その内面の描写だけで読者は容姿を勝手に想像してくれたりします。そしたら、作品中の容姿描写の文字数を節約できるわけなので、他へその分を回せます。
目に見えるモノの情報は、見えないモノの描写とセットにすれば割と省略してしまえるので、効果狙いくらいでしか視覚描写はしなくて良かったりします。
かように、『行間読ませ』の手法は文字数節約では威力大ですので、プロの作家さん方も愛用するのですね。覚えて損はありません。
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