平凡な俺が、神の生まれ変わりで、同級生は全て嫁候補って無理ですよ?

@ss-morning

俺が神?!

 子どもの頃から、変な夢ばかりみていた。

 毎回同じ場所で、毎回同じ食べ物を食べて、毎回同じ人と話をするんだ。

 もう気持ち悪くて、夢が始まると「またこれかよ」って夢の中で呟くくらい。

 でもその夢の再生は止まらない。

 俺は結局最後までその夢を見る。


「……また見たよ」

 俺、高佐優汰はベッドから体も起こさずにため息をついた。

 夢診断なんて何度もしたし、割と真面目に病気を疑ってコッソリ先生に聞いたこともある。

 まあ答えは「よくある話です」で何の解決にもならなかったけど。

 スマホを見ると、決まってアラームがなる三分前。

 これも毎回同じなんだ。

 この夢を見るときだけ、毎回この時間6時57分にスマホを見る。

 本当に気持ち悪い。

 俺はスマホのロックを解除してアラームを止めた。


 一階に下りていくと、下から人の話し声が聞こえてくる。

 この時間はお母さんがひとりで朝ごはんを作ってるはずだけど……?

 俺はリビングの扉を開いた。


「おはようございます」


 リビングには男が一人座っていた。

 俺はその男を見て固まった。


「アンタ……」


 その男は、さっき俺がみた夢にいつも出てくる人なのだ。

 子どもの頃から何百回も見ている顔だ。

 正直親と同じくらい【断言できる】。

 大きな目、細くて綺麗なアゴ、綺麗な黒い髪の毛に長い首……間違いなく、夢の中の男だ。

 とにかくモデルみたいにイケメンで、間違いない。

 身動きが取れない俺に、男が笑いかけた。


「ほう。やはり私が分かりますか」

「やっぱりそうだ、声も同じだ」

 

 俺は言った。

 そう、この超重低音。

 この声なんだよ!

 超イケメンなのに、声だけ低くて、怖いんだよ。


「では、これをどうぞ」

 男は鞄からふたつの物を出した。

「絶対ふたつとも要らない。それ持った途端に死ぬんだぞ」


 俺はおっさんが手に持ったふたつの数珠を見て言った。

 これも夢の中の流れだ。

 あのふたつの数珠は、どっちも持っても死ぬ。

 俺はこのルートを何度も夢の中で通ってる。

 右の赤い数珠を持つと、体が裂ける。

 左の黒い数珠を持つと、体が粉にように消える。

 どっちに触れてもアウトなんだ。

 俺は口を開く。


「出せよ、あれ」

「わかりました」


 男は鞄から、真っ白な数珠を出す。

 俺はそれを掴んだ。


「これが正解だろ」


 男は、俺に数珠を持たせると、そのまま台所に跪いた。


「は?」


 俺は数珠を持ったまま呆気にとられた。

 いつもの夢だと、白い数珠を持つと、場面転換するんだけど……まあ、確かに今は無理かって…なんで跪くの?


「なあ、なんだよ」

 俺は男の前に正座した。

 男は顔を上げた。

 その目には涙が浮かんでいた。

 そして口を開いた。


「あなたは神の生まれ変わりです。ああ、あなたは神なのです」


 そういって大粒の涙を流した。

 俺は全く意味が分からないので、とりあえずお母さんに向かって

「ねえ、朝ご飯は?」

 と聞いたら、お母さんも両目から滝のような涙を流していた。

「えーーーーーー?」

 俺は叫んだ。

 なんなのこれ?!

 そしてお母さんも、男の横に跪いた。

「ちょっと、お母さん、何なの?!」

「……神の母になれて。光栄です」

「意味が分からないな」

 俺はその場に正座して言った。

 とにかく朝ご飯はまだなの?

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