7. ある夢のみちびき

 やっぱりというか、夢を見た。昨夜の続きだ。

 予知夢とか言うんだっけか。よく俺の見る夢は、実現することがある。たとえば今の生活もそうだ。宝くじが当選する夢を見て、買ってみたらその夢に出ていた番号で、しかも実際に当選した。

 それからだ。両親が不仲になるのも、離婚するのも、すぐに死んでしまうのも、手元に残ったお金と借金が同じくらいで、家を売ったりしてなんとかするのも、全部夢に見てから現実になった。帰る場所を失った俺に、近所付き合いのあったランの両親が、今のアパートを借りる後見人になってくれて、おかげでホームレスにならずに済んだことは夢にも思わなかったことだったけれど、そのあとなんとか工面したお金で投資を始めて、どんな株や金融商品を買うかとか売るかとかも、ほとんどは夢の通りにしている。それで無事に生活できているくらいには、収入を得られていた。

 それなのに、ずいぶんと非現実的な夢を見た。だからこれこそが本当の夢で、きっと実現したりは絶対にしないと思っていたのに、それも期待はずれになりそうだ。喜ぶべきか、嘆くべきか。

 昨夜からの続きの夢で、俺はハックブラーテンを操って戦っている。昨夜、乗っていると思っていたのは視界がやけに揺れていたからだけれど、今は違う。どうやら俺はハックブラーテンに運ばれていたようだった。目的地に着いて、降ろされてからは、手にしたミニミートローフを通して巨大ミートローフを操っている。バカバカしい、と呆れている夢の視聴者でいる俺と、真剣にハックブラーテンを扱って目的を達しようとする夢の経験者でいる俺がいる。どっちも俺で、自分がふたつに分裂したような感覚だ。予知夢になるときに特有の、独特の感じ。嬉しい現実も悲しい現実も、こうして俺に予告してくる。

 夢の中で夢だと分かっている明晰夢っていうものがあるそうだけれど、それに似ているのかもしれない。俺が見た夢で、そういう感覚になったものは、ほとんどが現実になっているから、俺には明晰夢と予知夢の区別があまり分からないでいる。

 ともあれ今、俺の目的は、それを達する力としてハックブラーテンを活用している。このままいけば、なんとかなりそうだという安堵が、経験者でもあり視聴者でもある俺の心に漂った。

「ちなみにミートローフというのは普通は切り分けて食べるものであって、丸ごとかぶりつくようなものではないのだよ!」

 高らかに笑いながら、口元以外を覆う仮面をつけた、いかにも怪しい格好をした男が現れたところで、唐突に俺の夢は途切れる。

 なにが起きたのか。珍しく突然の来訪者が家の扉を叩く音が、俺を夢から引き戻したわけだが、それは何かが起きたことを意味しているのではないか。

 嫌な予感だけが残ったまま、俺はノックに応えるべく玄関に向かった。

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