第20話 紛糾

 「極北の元首への手紙」の作成には紛糾した。というか「紛糾したらしい」。私は、プロト版をイマーズ君と秘書室に頼んだ。

 文書を見ると「途轍もなく官僚的だった」。

 例えば、「我々は侵略をしたという事実はないという事実を肯定しない」とか、「近年の関係を鑑みて友好的な関係の構築を両国の信頼を漸次敵に生成し・・・」などなど。何を言っているのかまったく分からない。

 皇帝連邦長、東国に提出するどうでもいい書類ならこれでいいのだが・・・。帝国の一大事、これでは困る。

 結局、私が書くこととなった。

「前略 極北元首殿

 私は、帝国北国連邦長である。先日、東方の諜報員が貴殿の機関に捕らえられた旨の連絡を受けた。通常の場合であれば、『そのような事実』は否定するのだが、今回は肯定する。まず、諜報員の引き渡しを要求する。もし、これが実現できないのであれば、これまで以上の武力を投入する余地がある。

・・・・」

 つと書いて・・・ふと思った。

「これをもしも、東国に送ったら・・・」

 ナーシは、きっとこう思うだろう。「遂に、極北と武力闘争することになったか、ウッシッシッ。本格的な戦争で、新形戦車の実力を検証できる。これでより一層良い物をつくって輸出すれば・・・ウッシッシッ」と。

 そして何よりも重要なのが、東国への攻撃のための準備を「極北侵攻の準備」ということにすることで、堂々と準備ができる。ついでに、完璧ナーシーにすきを作り、そこにあっさりと攻撃をかけることができるのである。この間に極北の君主と会い話をまとめ、そして東国侵攻の準備を整える。

 イマーズ君をよんだ。

 「手紙はできましたか?」

 「イマーズ君できましたよ。東国へ手紙。」

 「・・・・極北に送るものではなかったのですか?」

 「極北には、階段の日付を丁重な文章にのせて、送付するだけで良いです」

 といって、イマーズ君に北極宛に通知を出すように指示した。

 「はぁ〜」

 とイマーズ君は気の抜けた返事をした。

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北國-全ては組織論のなかに- 78:22 @u0104034

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