第19話 手紙
イマーズ君が、息を切らして執務室に入ってきた。
「どうしたんですか?極北がまた攻めてきたのですか?」
と訪ねた。最近は、まるっきり極北の攻撃が少なくなっていた。最後の攻撃から3ヶ月は経っていただろうか。魔道師の派手な攻撃が相手にそうとう効いているようだ。
「極北に潜入させた諜報員が極北の集団に捕らえられてしまいました。その胸の書状が極北から届きました」と顔を真っ青にして言った。
「そうですか・・・。で、北極は何を要求してきているのですか?」と冷静に尋ねた。
本当は、私もイマーズ君同様に焦っていたのだが、ここで私も冷静さを欠いてしまっては・・・、なにも進まない。というより単なるパニック状態である。
「連邦長との直接会談です!!」と答えた。イマーズ君の額からは冷や汗が流れ、持っているメモは震えている。
「そうですか」
「ん〜、これは好機かもしれません」と納得した声で答えた。
「好機?」
「はい。というよりも『好機』にしなくてはなりません」
そうなのだ、「好機にしなくてはならない」のだ。もしも、不調に終われば、北国と極北との本格的な武力闘争(戦争)に情勢が移ることとなる。ましさく、帝国は「平時」から「戦時」の体制となる。そうなれば、帝国全体の経済は停止し損失が大きくなる。その一方で、今回の問題の首謀者であるナーシ率いる東国は軍事需要から好景気・・・とますます問題だ。そしてなによりも、人的被害が出てしまう。これは断じて許すわけにはいかない。
「見つかっていない、極北調査員は何人いますか?」
「2人です」と答えた。
「そうですか、そうしましたらその2人は北国に戻ってきてもらいましょう。この後の極北とのやり取りは全て外交の公式なルールに則って実施します」
「了解致しました」
「これから忙しくなりますね」と答えた。
「極北では、諜報員が捕まり、東国では不穏な動き、それに対する武力行使の準備・・・」とイマーズ君は独り言のよう話した。
翌日3通の手紙を出した。一つは西国、南国の連邦長への今回の事件についての報告と今後の方針(外交のみでいくこと)、そしてもう一つは極北の元首への手紙である。
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