魔法の指輪

りっく

第1話妄想

僕はいつものようにウェストン先生の授業をぼんやり聞きながら窓の外の景色を眺めていた。

ウェストン先生の声はとても耳に心地のいい声だ。

すごく眠たくなってくる。

小学3年の冬も終わり今年から4年だ。

あっという間に一年が過ぎ楽しいこともあったけど何か物足りない1年

だった。

(はあ……、ハリーポッターのハリーみたいにだれか魔法使いが迎いにこないかなぁ……)

そんなことを考えているとふいに視線を感じ黒板を見た。

「こらっ授業聞いていますか?マシュー」

先生は眉をしかめて注意する。

「えっと……はい、先生。」

マシューはすこし戸惑い小さく答える。

気温も暖かくなって気が緩むのもわかりますが集中をきらさないで。

正直内面からにじみ出る穏やかさのせいで全然怖くない。

ただ周りの生徒を気にして少し恥ずかしかった。

自分に視線を向けている生徒の中に親友のカイルもいた。

カイルはいつも自信いっぱいで勉強も運動もできる奴だ。

自分とは正反対のタイプの人間だった。

マシューはそれをうらやましいと同時に尊敬していた。

ただカイルはカッっとなって怒った時なにをしでかすかわからない怖さも持っていた。

そんなカイルと僕は親友だ。

マシューはそのカイルとそれにもうひとりの友達ピピンの三人でいつもつるんでいる。


授業の終わりを告げるチャイムが鳴り今日の最後の授業が終わった。

放課後カイルが顔に笑顔を張り付けながら歩いてきた。

「相変わらずきょうもぼーっとしてたな。」

「先生の声眠くなるんだもん。」

「まーな。」

カイルは納得したように同意した。

マシューはふと思った事を聞いてみた。

「カイルはさどっかこの世界とは違う世界、そうだな魔法がある世界に行ってみたいとか思ったことない?」

「エルフとかドワーフとかいろんな種族がいてさ歯磨きをするように当たり前に魔法が存在するんだ。」

「なんだそれ?」

不思議そうな顔を向ける。

「ハリーポッターみたいなさそんな世界。」

「うーん思ったことはあるけどそんな世界あるわけないだろ。」

諦めを帯びた言葉で言う

だれもがそうだ母さんだって父さんだって

わかってる僕だって小学校に入って大きくなるにつれてうすうすそんな世界ないって感じてる。

でももしかしたら…

「なに話してるの?」

不意に横からピピンが訊いてきた

「マシューが魔法の世界があるか、だって。」

カイルが赤いくせ毛の髪を遊ばせながら答える。

「魔法の世界?映画とかマンガとかで出てくるあれ?」

「う、うん……」

僕は自信なさげに言う

「あるかもね。」

思いもよらない答えがかえってた。

頭の中のもやもやがぱっと晴れてくる。

「そ、そうだよね!」

「この世界は広いそりゃ地球の中にはないかもしれない

でも宇宙全体でみるとないとは言い切れないんだ。」

理知的な声で話すピピンに僕とカイルは真剣な顔で聞いていた

「でもさそんあの生きているうちには行けないだろ。」

と、カイル

「まあね。」

でも、あるかもしれない。

それだけでも僕は嬉しさをおさえきれなかった。

「そんなことよりも今日の約束憶えてるか。」

「えっと森の中に探検しにいくんだっけ。」

昨日話したことをおもいだしながら答える。

「そうだ、森の中に誰も住んでいない小屋があるらしいそこに俺たちファイアボンバーの秘密基地を作るんだ。」

ファイアボンバーは僕たち三人で作った秘密結社だ。

カイルいわく何事も全力で頑張るという意味を込めてつけたらしい。

でも母さんたちが許してくれるかな?

「ばか、そんなの黙っていくんだよ。」

マシューが不安そうに言うとカイルは怒った声で唸る。

「そうだね、まず間違いなく許してもらえないだろうね。危険だとか言って。」

そのやりとりを聞きながらピピンが言う。

父さんの怒った顔が頭に思い浮かび背筋に寒感が奔った。

「そうだね……」

引きつった顔でぼくは同意した

「じゃあそういうわけでさっそくいくか。」

興奮と期待がこもった声に僕は何とも言えない不安を覚えたのだった。



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魔法の指輪 りっく @rick_25

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