「死神」とあだ名される黒髪の美少女、変人の風見夜子。
夜子の青い目には、数日中に現れる「未来の死体」が見える。
厄介事には我関せずを決め込む「俺」は、幼なじみの夜子と、
「ある出来事」以来、一切の交流を絶っていたのだが。
「あなた、死ぬわよ」
未来の死体が見えることに苦悩し、無力感に苛まれていた夜子。
しかし、「俺」の死体の一件をきっかけに希望が生まれる。
その人物が死体となる未来は、回避することが可能である。
ならば一人でも多くの命を救いたい、きっと今ならできるはず。
カクヨムで読めるのは、ボーイ・ミーツ・ガールの発端と、
「俺」と夜子の前に立ちはだかる2度目の大事件の顛末である。
後日談や外伝といった程度ではなく、ガッツリ本編の続き。
爆弾魔に追い詰められる迫真のストーリーには手に汗を握る。
文庫で発売中の最初の大事件への触れ方がうまい。
ネタバレせずに、続編に必要な情報だけ押さえてある。
1巻未読でも続編を楽しめる上に、1巻が気になる仕様。
こういう「ずるい」公式作品が増えればいいのに。
夜子の暴走をどうにか御したり御しきれなかったり、
気苦労の絶えない「俺」の立ち位置がいい感じだ。
涼宮ハルヒの登場以来、こういう構図は多いとしても、
「俺」の意外な包容力に、やはり読者は惹かれるものだ。
孤独だった夜子が最高のバディを得て仲間を得て、
次第に生き生きとし、かわいくなっていく。
一方、死の商人「死神」との決着はどうなるのか。
1巻も次巻も気になる、良作の学園青春ミステリー。
あれは2016年6月頭のこと。
カクヨムに『夜子』ちゃんのお試し版が掲載され、おおっこれは! と手応えを感じ星投入、当然のごとく1巻を発売日に購読してから早数ヶ月が過ぎました。
カクヨムでの後日談読切にも目を通し、さらに追加された連載編を拝読し、やはりこれは名作だなーと再確認しました。
1巻に引き続き、前半は日常での謎解き。
後半は物語の根幹に関わる宿敵との対決。
という構成の連作短編集ですが、後半の引き込み度、盛り上がり度は圧巻ですね!
今回の敵は、アメリカなどではメジャーな爆弾魔。用意周到にさり気なく張られた犯人の傍証は「なるほど」と頷けるものばかり。
一見無関係な前半パートからも伏線を引っ張っている辺り、さすがの構成力でした。
2巻の発売、楽しみに待っています。
最後になりましたが、個人的に夜子ちゃんの怪しい可愛さがツボで仕方がありません。
「体をまさぐってくれてもいいのよ。どうぞ性欲のはけ口にしてちょうだい」
とか、もう身悶え必須ですよ。
クライマックスで、秘めたる想いを打ち明けるシーンも劇的でした。