第31話 宇宙人 冥王星の裏側から

 冥王星の裏側に位置する巨大宇宙船の艦橋において、地球侵略作戦の責任者は、総督にむかって報告を行っていた。

 求められたからである。

 しばらく、辺境のこの輝く惑星を眺めながらのんびりすると言っていたのだ。

突然思い出したかのように報告を求められ、不愉快になるのに決まっている報告をしなければならなくなった。


「オオカミの化身も、駄目だったということか?」

「はい」

「そろそろ、地球は大混乱に陥っているだろうな。なにしろ、隣人が突然ケモノに変わるのだ」


「いえ、それが……試験的に島国の日本という地域に限定していたのですが、我々の手術を逆手に取られているようでして……」

「どういうことだ?」

「ケモノの遺伝子を取り込んだまま能力だけ覚醒させた連中が、化身たちを次々葬っているようでして……」

「ふむ。それで?」


 総督の声に、怒気が混じった。

 巨大な男である。性別を確認したことはないが、男だろうと想像させた。

 報告していた作戦責任者は、総督と比べれば小柄だ。これ以上の読み上げに耐えられず、畏れ入って報告書を捧げ出した。


「こ、この連中をなんとかしないことには、今後も同じことの繰り返しかと」

「……小娘だな」

「はあ。しかし、5人揃うとなかなか侮れないようでして」

「ふむ。表だって妨害する動きがあるとは予想外だったな。化身たちを強化するか、護衛をつけるか……あるいは、化身してからもこちらの指示を受け付けるように、改造すべきかもしれんな」


「では、そのように取り計らいます」

「うむ。こいつらのことは、何という部隊だ?」

「それが……日本政府では、女子高生戦隊と呼んでいるようでして」

「ふざけた名前だな……どういう意味だ?」


 説明を受ける。さらに激怒した。


「こいつらから潰せ。大銀河の皇帝に逆らうのが、学校に通っている女の子たちだと。このような事実が本国に知れてみろ。我等一同、宇宙の塵とされてしまうぞ」


 恐れながら、責任者は退出した。冥王星の裏側で、妖しげな陰謀が張り巡らされていた。


 イルカの少女・篠原美香

 ゾウの少女・波野潤子

 タコの少女・早房華麗

 ヒョウの少女・飯塚京子

 ゴリラの少女・朔間緑子


 敵の強大さも自分たちが標的とされたことも、少女たちはまだ知らなかった。 

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アニマルゲノム 西玉 @wzdnisi2016

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